基本的にバイクの速度制限はナシ? 「カオス」でも譲り合いの精神を強く感じるインドネシアの交通事情とは

近年、急激な成長を見せているインドネシア、その中でもほぼ中心に位置するジョグジャカルタでは日本では考えられないほどのバイクが市民の足として活躍しています。現地の交通事情について、総合バイクWebサイトの『NaikMotor.com』を運営するArif Syahbani氏に伺ってみました。

急激な成長をみせるインドネシア

 日本国外務省の発表によると2017年の時点で人口2億6399万人を数え、中国、インド、アメリカに次いで世界4位といわれるインドネシア。国ごとの経済指数を表すGDPにおいても世界ランクで16位に位置し、今やオランダやスイス、スウェーデンなどを凌ぐ位置にある赤道直下の同国ですが、スマトラ島やジャワ島など『列島』で構成され、火山や地震が多い部分など、どことなく我が国、日本と重なる一面を持ち合わせています。

インドネシアの古都、ジョグジャカルタの交差点の風景。ご覧のように驚くほどのバイクが停まり、時にはセンターラインからもハミ出す様子は驚きです

 もちろん、今や世界第3位の経済大国となった我が国、日本と東南アジアのインドネシアでは現状、貨幣価値や物価など経済の状況も、交通のインフラも大きく違うのですが、しかし、この国には、筆者が子供の頃、目にした『昭和の風景』にも似た活気を感じます。

 ここでは、そのインドネシアの街中で見た『バイクの交通事情』についてをご紹介させて頂くのですが、おそらく現地に行ったことのない多くの方々が驚くであろう風景が広がっています。

ジョグジャカルタで見られる驚きの光景とは?

 今回は首都のジャカルタではなく、同じジャワ島の中でだいたい中心的な位置にある『ジョグジャカルタ』の様子をお伝えさせて頂くのですが、ここは今も王宮がある場所で世界遺産の『プナンバナン寺院群』や『ボロブドゥール寺院遺跡群』があり、いうなれば日本の『京都』のような街。ここは「ジャワ人のふるさと」と言われているそうです。

インドネシアで驚かされるのが交差点での停車時のクルマとクルマの距離の近さ。日本ならトラブルになるであろうギリギリの距離感での停車が、どうやら当り前のようです

 人口は 約1億2400万人で世界一位の数の人々が暮らす島、ジャワ島の中でジャカルタやスラバヤ、バンドゥンなどの100万人都市ではなく、約60万人規模とのことですが、街中を走るバイクの数やクルマに対する比率、そして、その様子は驚きの一言。まさにカオスと表現しても差し障りがないほどに「グチャグチャな感じ」となっています。

 その交通事情に関して、現地で総合バイクWebサイトの『NaikMotor.com』を運営するArif Syahbani氏に話を伺ったのですが、基本的にバイクの速度制限はナシ。排気量は125ccとのことですが、マニファクチャー(メーカー)が正式に販売するものは、その限りではないとのことです。

 実際、最近のインドネシアではホンダのCBR250RRやカワサキのNinja250が販売されているので、250ccクラスのバイクもチラホラと見かけます。またハーレーをはじめとするビッグバイクを街中で見ることは、ほとんどないのですが、現地生産ではない欧米のバイクは関税率200%とのことで非常に高額です。

 またカスタムバイクも登録の規制はないそうですが、Arif氏曰く「基本的には週末や夜に乗るもの」とのこと。厳密なルールがないからこそ、それぞれの自主性に任せたものとなっているというから驚きです。
 
 とはいえ、インドネシアの交通事情がまったくの『NOルール』かと言われれば、そうではなく、バイクは高速道路を走行することが出来ません。またクルマは高速道路では最低80km/h、最高速は120km/hに規制されているそうです。

「バイク専用」の側道も整備されたジョグジャカルタ

 また道路の一定の区間には各所に側道があるのですが、ここは基本的に『バイク専用』。街中の風景のとおり『バイク』が人々のアシとして優遇されている印象を受けました。

街中でよく目にするのが『謎の交通整理員』。本来は駐車場の案内係らしいのですが、『グイッ』と鼻先を交差点に入れたクルマのドライバーからチップを貰うと、旗を上げて交通整理を行います

 信号のない交差点では要所、要所に交通整理員のような人が立っているのですが、これは本来、駐車場の係員とのことで、交通の流れを寸断することは本来、違法行為。強引に交差点に入ったクルマのドライバーから『チップ』を受け取り、交通整理を行っているそうです。ちなみにバイクやクルマの路上駐車も違法なのですが、街中の至るとことにはパーキングがあり、料金もバイクで2000ルピア、クルマで3000ルピアと激安。1ルピア=0.0077円前後ということを踏まえれば日本円でバイクは15円ほどとなっています。

 ちなみに、街中では三人乗りの家族連れや驚くほどに荷物を積載したバイク、センターラインをハミ出して走行するバイクもあるのですが、基本的には『違法』であるものの、「それがインドネシアのカルチャー」とArif氏は一言で笑い飛ばします。

 125ccクラスのスクーターやカブ系のバイクが『市民のアシ』として活躍し、軍隊アリの大群の如く走り回るインドネシアの光景ですが、現地で感じさせられるのが、走行の中でお互いのライダーが『暗黙のルール』を理解していること。交差点でのクルマ同士の距離感も、日本人の感覚では驚くくらいにギリギリです。

信号のない交差点では、結構、強引にバイクやクルマが鼻先を入れて侵入してきたりもします。慣れない人だと驚くのですが、どうやら自然に譲り合う『暗黙のルール』が存在するようです

 たとえば我が国、日本では「あおり運転」が社会問題化し、それに対する法規制が始まっていますが、インドネシアでは後続のクルマなりバイクなりが、軽くクラクションを鳴らせば、ほぼ素直に道を譲ります。『カオス』のような道路事情だからこそ、求められるのは『自主性』です。
 
 発展途上の国と日本を単純に比較することは出来ませんが、今の我が国から失われつつある『譲り合い』や『察する』というカルチャーが、路上の風景を見る限り、インドネシアという国には、まだまだ強く根付いている気がします。この『おおらかさ』と『熱気』は、何か懐かしい匂いがします。

【了】

ジョグジャカルタの交通事情を画像で見る

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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