これが無ければ勝てない!? ハードエンデューロを支える「ガミータイヤ」とは?
オフロードバイクのレースで世界的なブームとなり人気が高まっている「ハードエンデューロ」というカテゴリを支えるアイテムが「ガミータイヤ」と呼ばれるタイヤです。
「ガミータイヤ」とは、どんなタイヤ?
「ガミータイヤ」とは、粘着性を高めた特殊なコンパウンドを持つタイヤのことです。本来2輪用タイヤは路面からの衝撃吸収性や路面とのグリップを保持すべく設計されていますが、このガミータイヤは、耐久性や高速走行性能を犠牲にしながらも、粘着性の高さ、つまり柔らかいゴムで驚異的なグリップを確保するものです。

一般的にオフロードバイクのタイヤにはブロック(溝)があり、路面に突き刺さったり、泥や砂を掻き出して前進します。しかしガミータイヤは、イメージ的には路面を「掴む」ものです。柔らかいコンパウンドを持つトライアルタイヤが、石などを掴むようにしてグリップする原理と同じです。
そんなガミータイヤで世界に先駆けて登場し、席巻したのがGoldenTyre(ゴールデンタイヤ)の『GT216X』です。
世界の代表的なハードエンデューロレース「エルズベルグロデオ」「ルーマニアックス」「ヘルズゲート」などで圧倒的なシェアを誇ったゴールデンタイヤは、とくに岩盤の難所を走破するエルズベルグで「ゴールデンタイヤがなければ絶対に勝てない」と、2012年に5位入賞となった日本のトライアル元IAスーパーライダーの田中太一選手も語っていたほどでした。

特徴としては、柔らかいコンパウンドを使用しながらもFIM公認タイヤであるということです。FIM(国際モーターサイクリズム連盟)で定められた、路面環境へのダメージを低減する、ブロック高13mm以下というレギュレーションに合致しており、公道走行も可能なのです。
ゴールデンタイヤが席巻するエルズベルグに、2012年に挑戦した日本人ライダーの河津浩二選手は、当時契約を交わしていたiRC TIRE(アイ・アール・シー・タイヤ)にガミータイヤがラインナップされていなかったため、通常のオフロードタイヤ『VE-33』で参戦しましたが、完走できませんでした。
帰国後、iRCにガミータイヤの必要性を訴えたのは言うまでもありません。複数人の日本人トップライダーの開発テストを経て、2013年ついに日本初の難所系タイヤ『ix-09W GEKKOTA』(以下ゲコタ)が、iRCから登場しました。

過去に例がないほどの柔らかいゴムを採用したゲコタは、サイドウォール、ブロック共に極端に柔らかくたわむため、岩盤や木の根、丸太などで驚異的な食いつきを見せて「今まで登れなかった坂が登れた!」という声が続出し、たちまち国内のエンデューロシーンで話題になりました。
iRCには、現在でもラインナップされている『TR-011 ツーリスト』という公道走行可能なトライアルタイヤがあります。ツーリングトライアルやエンデューロなど、国内でも評価の高かった同タイヤの技術を、エンデューロタイヤに置き換えたのがゲコタでした。
時代はオールラウンダー型のガミータイヤへ
国内初のガミータイヤの登場は、他のタイヤメーカーをも動かしました。ダンロップは2013年にクロスカントリー用タイヤ『AT81』を発売し、2016年には難所走破力を高めた『AT81EX』を発売します。

ゲコタはブロック、サイドウォール共に極端に柔らかいコンパウンドを使用しているため、高速コーナーでは剛性が少なく、また極端な泥濘地ではブロックが泥に刺さらずにヨレるため苦手とされています。
一方で『AT81EX』は、サイドウォール部の剛性を確保し、ブロック強度も適正化しており、コーナリング性能を犠牲にしないガミータイヤという位置付けとなります。
この『AT81EX』の登場により、新たな戦いの幕が開いたと言っても過言ではありません。驚異的なグリップ力を保持しながらも、高速走行などを犠牲にしない、オールラウンダーなタイプがこの数年の主流となっています。
iRCも次の手を打ってきました。それが2018年登場の『VE-33s GEKKOTA』です。オールラウンダーとして評価の高い『VE-33』のコンパウンドをさらに柔らかくし、難所走破力と高速走行の安定性など、良いところ取りをした1本です。

このタイヤだけで、国内のほとんどのレースに対応できてしまうほどの優等生ぶりで人気を博しています。ただし『ix-09W GEKKOTA』『VE-33s GEKKOTA』『AT81EX』はそれぞれ公道走行不可です。
そうしてついに、ブリヂストンもガミータイヤ戦線へ乗り出したのです。ブリヂストン初のガミータイヤ『BATTLECROSS E50 EXTREME』は、FIM公認エンデューロタイヤ『E50』のガミータイヤバージョンのため、ブロック高は13mm以下に抑えられています。

しかしブリヂストンとしては、公道走行時の安全性を保証できないという理由から、FIM公認ではなく公道走行不可としています。
主要タイヤメーカーのラインナップが出揃ったガミータイヤ。性能や値段、アフターサービスなど、ライダーは今、どのタイヤが良いのか高い関心を払っている時期に突入したと言えるでしょう。
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