BMWモトラッド新型「F900R」でワインディングを走る スポーティなキャラクターは期待通り

BMW Motorradの新型「F900R」は、並列2気筒エンジンを搭載するミドルクラスのネイキッドモデルです。海外で行なわれたメディア向け試乗会に参加した松井勉氏のインプレッションをお届けします。日本では2020年2月25日発売予定です。

ネイキッドモデルに期待する、思い通りの走りに好印象

 ロードスターを現す「R」は“思い通りの走りが楽しいバイク”、というのがBMWのネイキッドモデルをロードスターと呼ぶ所以ではないでしょうか。

BMW Motorrad新型「F900R」に試乗する筆者(松井勉)

 この新型「F900R」は、跨がると後退したステップ位置、軽く前傾するライディングポジションなど、コンサバなバイクではなく、あくまでもスポーツバイクである、と主張してきます。

 ポケットにキーを忍ばせ、メインスイッチを押すとTFTカラーモニターが起動します。大きな画面を情報で満たすのではなく、必要な項目を見やすく配置する手法はアナログメーターの針同様、一瞥しただけで情報が取れる感覚に似ています。

 多くの機種の中でこれほど速度表示やエンジン回転表示を主体にし、その他表示される文字の太さ、大きさが明快なのもBMWが持つ特徴と言えるでしょう。

 エンジンを始動するとパルス感ある排気音がサイレンサーからあふれ出します。テスト走行には複数台のグループで走りましたが、前走車が放つ加速音、シフトダウン時の音などでF900Rが持つスポーツマインドを感じる場面がありました。いい音なんです。

 走り出して気づいたのは、エンジンに備わった質感です。ベースとなるエンジンを搭載するF850GSでは、ややノイジーに感じる場面があり、改善されないかな、と思うことがありました。それは10年以上にわたり熟成され尽くしたパラレルツインの後継機だけに、余計だったのかもしれません。

排気量が853ccから895ccへ拡大された水冷並列2気筒OHC4バルブエンジンを搭載

 先代がボクサーツインを思わせるようにスムーズだったのと対照的に、鼓動感を奏でるようになった新生「F」エンジン。その違いもあるのですが、少し気になる部分があったのも事実。しかし、新型はまだそれほど距離も重ねていないにも関わらず、こなれたまろやかさを伝えてきます。

 それは走りの質感にも直結します。市街地の50km/hまでの領域で走る時、加減速を続けても、発進時からクラッチのつながり、シフト操作の軽快さ、そして右手の動きに呼応して生まれる加減速を含めとても滑らかです。

 もちろん、エンジンだけの感触ではありません。交差点やカーブで左右に傾ける車体の動き、路面のギャップを捉える足まわり、市街地で求められる弱めの握力、踏力で引き出すブレーキ効果。これらが見事にチューニングされ、乗りやすさでライダーを満たすのです。

 市街地を出て高速道路を走ります。一気に加速する時、想像以上に速度の乗りが早く、この俊足ぶりは見事です。それでいて剛力過ぎて気疲れするような特性ではありません。予測しやすいパワー特性です。

 ネイキッドだけに高速巡航で快適性云々を言うのは酷ですが、それでも、前傾したポジションやステップの位置など全体の乗車姿勢が巡航の苦労を和らげてくれています。スペインでの速度なので、日本の多くがまだ100km/h制限であることを考えると、これは合格と言えるでしょう。

ワインディングで本領を発揮する、ネイキッドスポーツらしい乗り味

 本領はやはりワインディングです。エンジン、そして燃料タンクが1カ所にまとまったことで、バイクとの一体感がすぐに伝わってきます。しかも新型のシャーシが硬すぎないしなやかさでライダーの動きを車体の挙動に繋げてくれるので、タイトターンの多いワインディングが楽しいこと。もちろん、速度の速いカーブでの安定感もネイキッドモデルだからといって妥協はありません。

 テスト車両はリアにダイナミックESAを装備する上級グレードでした。これは走行中、ストロークセンサーや走行状況に合わせて減衰圧を適宜変更、調整されるサスペンションです。そのため、よりスムーズな路面追従性が特徴になっています。日本でも上級グレードにはこのサスペンションが装備されるので、国内の道でもこの特性を味わえるはずです。

 またブレーキまわりは、フロントには直径320mmのディスクプレートとラジアルマウントされる対向4ピストンキャリパー、リアには直径265mmのディスクプレートとシングルピストンキャリパーを組み合わせます。性能は充分です。

 ブリヂストンの「バトラックス・スポーツツーリングT31」を装着したテスト車両は、フロント120、リア180サイズの17インチ。このスペックから想像できた通り、ワインディングではタイトターンからワイドターンまで、路面が多少悪くても、ラインに集中して操作する楽しみを減ずる部分がありません。こんな場面でも、フラットなトルク特性はアクセルを開けるのに躊躇が要らないのは言うまでもありません。

BMW Motorrad「F900R」(2020年型)

 新たに装備されたエンジン・ドラッグ・トルク・コントロール(急激なスロットル操作やシフト・ダウンの際に発生しやすいリア・ホイールのスリップを軽減)の恩恵は、おそらく雨の降り始め、砂の浮いた場所などで威力を発揮するはず。いや、知らぬ間に危険を回避してくれる装置としてライダーは平常心で乗っていられる、という装備だと思います。

 旋回性は素直に引き出せる印象で、傾ける、起こす、切り返すにも無駄な動きと重みがありません。ネイキッドはこうでなきゃ、と思わず鼻歌気分でテストルートを切り取り続けます。

 スペインの山岳路は意外とリズムを取るのが難しい場面もありますが、コツを掴み、ベストラインに前輪をのせれば、出口で気持ち良い立ち上がり加速も堪能できます。

 130kmほど駆け足で様々な場面を試しましたが、F900Rの優れたパッケージは揺るぎないものでした。暗くなってコーナリングランプの恩恵を受けたかったのが唯一の心残り。これは国内に入ってきたタイミングでF900Rを走らせるよい口実になりそうです。

BMW Motorrad「F900R」(2020年型)

 結論として、とても良い印象のままテストを終えられた点で、完成度の高さはさすがBMWという印象でした。

 新型「F900R」の価格(消費税10%込み)は105万7000円から。BMW Motorradのすべてのモデル(新車)にはETC2.0を標準装備しています。

【了】

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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