ビジネスユースなら性能充分、IoT化へ大きな前進! ホンダ「BENLY e:(ベンリィ・イー)」試乗

ホンダは3月13日、ビジネス用電動二輪車「BENLY e:(ベンリィ・イー)」の報道向け試乗会を開催しました。現行スクーターはEV、ガソリンを問わずほぼすべての機種に乗り、試乗記をここに寄稿しているバイクジャーナリスト「青木タカオ」が早速乗り味を確かめます!!

ビジネス用途では充分な航続距離を確保

 ホンダのBENLY e:(ベンリィ・イー)シリーズは原付一種の「BENLY e: Ⅰ(ベンリィ イー ワン)」、原付二種の「BENLY e: Ⅱ(ベンリィ イー ツー)」、そしてそれぞれに大型フロントバスケットや大型リアキャリア、ナックルバイザー、フットブレーキを標準装備した「BENLY e: Ⅰ プロ」と「BENLY e: Ⅱ プロ」があります。

ホンダ「BENLY e: I」プロに乗る筆者(青木タカオ)

 IとIIに価格差はなくBENLY e:は73万7000円、BENLY e:プロは74万8000円。バッテリー2個と専用充電器を付属し、4月24日に発売となります。リチウムイオンバッテリーのリサイクル回収率を100%保証するため、まずは企業・事業者向けの限定的な販売としました。

 すでにBENLY e:をベースにした郵政仕様車が、2020年1月に新宿、日本橋、渋谷、上野の4郵便局で使用開始され、原付一種50台、原付二種150台、合わせて200台を納入。さらに2020年度中、首都圏の近距離配達エリアを中心に2000台の導入が検討されています。

 バイクの電動化を身近に感じるときがいよいよ近づいたのかもしれません。と、言いたいところですが、郵便配達に使用しているバイクは全国に9万台もありますから、2000台でもわずか2.2%に過ぎず、BENLY e:の郵政バイクが走っている姿はまだまだ非常に珍しいというのが実態でしょう。

 とはいえ、大きな一歩を踏み出したことに間違いはありません。EVバイクは当分の間、二極化していくと筆者は考えます。ひとつはホビーユースとした、ハーレーの『LIVEWIRE(ライブワイヤー)』など富裕層向けのプレミアムモデル。そして、もうひとつはBENLY e:のようなビジネスユース向けの小型シティコミューターでしょう。

 後者はほぼ決められたルート内を走行し、バッテリー交換のタイミングも目処がつきます。たとえば、昼休みに拠点へ戻り、必ず満充電したバッテリーと交換するといった具合です。

ホンダ「BENLY e:」開発責任者の武藤裕輔さん

 となれば、必要な航続可能距離は予め把握できます。BENLY e:開発責任者の武藤裕輔さん(本田技研工業ものづくりセンター)によると、ビジネスモデルの半日あたりの走行距離調査結果は平均約20km、最長で30kmほどとのこと。BENLY e:はWMTCモードで50kmを実現し、「充分な航続距離を実現しました」と武藤さんは胸を張ります。

「ホンダモバイルパワーパック」と名付けられたリチウムイオンバッテリーは重量約10kg。シート下に2つ収納され、脱着してAC100Vまたは200Vコンセントに対応する専用充電器で残量ゼロから約4時間でフル充電が完了します。電池残量は、デジタルメーターで常時目視できます。

ストップ&ゴー繰り返す市街地は得意

 BENLY e:Iに乗ってみると、PCXエレクトリックなどがそうだったようにゼロ発進が力強く、シームレスな加速が味わえます。BENLY e:に限ったことではありませんが、街中でストップ&ゴーを繰り返すならEVの短距離加速力は大きな魅力。静粛性にも優れますが、無音なのは他の交通や歩行者に気付かれにくいという問題も抱えています。

 シート下に直流48Vバッテリーパックを2個並びに配置し、走行時は直列接続で96Vのパワフルなシステムとして作動するEVシステムはPCXエレクトリックで採用済みですが、BENLY e:ではより高度なベクトル制御技術によって出力特性がより滑らか。右手のスロットル操作にリニアな反応を示しますが、ギクシャクせずに求めた分だけで進んでくれる感覚です。

更新アシスト機能を備えたホンダ「BENLY e:シリーズ」

 また、後進アシストを追加装備していることも見逃せません。ハンドル右のスタータースイッチと左のリバーススイッチを同時押しするとモーターが逆回転し、車体がバックします。リバースシステム作動時はメーターに「R」が表示され、誤作動を制御。荷物を満載にする配達業務で重宝するでしょう。

 ともに試乗した、筆者より小柄なジャーナリストは「後進の勢いが強すぎる」と感想を話してくれましたが、きっと足着きの違いなどからくる印象の差異かと思われます。両足が地面にベッタリ届き、余裕を持って車体を支えられる筆者はグイッとバックしても平気で、リバース機能を多用したくなります。足がしっかり地面に届かないと、ふらつくなど若干の不安を感じるのかもしれません。ビジネスユースとしたときも、体格差や荷物の増減によって後進機能への印象は変わってきそうです。

プロはフットブレーキ仕様に

 シート高は車体をほぼ共通化するガソリンモデル(ベンリィ110/50)と同じ710mmで、最大積載量も原付一種モデルが30kg、二種モデルが60kgと同一。荷物満載時の登板性能は、BENLY e:シリーズで傾斜12度を実現しています。

 車体重量はI、IIともにBENLY e:が125kg、プロが130kg。ベンリィ110は117kg、ベンリィ110プロが120kgですからそれぞれガソリン車より重量が増しています。装備面は電動化に伴い洗練され、メータ―はデジタルに、ヘッドライトもLED化されました。また、サイドスタンド戻し忘れ防止機能も追加装備されています。

テーターとローターをユニット化することで整備性を高めたホンダ「BENLY e:」シリーズ

 PCXエレクトリックとの相違点はリバース機能だけでなく、モーターの整備性向上も実現しています。PCXエレクトリックのモーターはステーターとローターが分割した構造でしたが、これらをアルミ製ケースとカバーの中に固定しユニット化。モーターの着脱がユニットででき、メンテナンスをしやすくしています。ビジネスユース向けとあって、整備の頻度などを考慮したのでしょう。

 BENLY e:Iプロに乗り換えると、ハンドルまわりはヘビィですが、安定志向で落ち着いた挙動を見せる車体は荷物満載を前提としたプロにこそ好マッチングを見せるのだと感じます。大きな段差を乗り越えてもサスペンションは底付きしませんし、急制動や無理な切り返しをしても安定感を欠きません。普段バイクに乗っていない人でも、業務などで安心して乗れそうです。

 ブレーキはガソリン車でも採用済みの前後連動式。プロにはフットブレーキが採用され、これがまたコントロールしやすい。配達業務を考えると、価格差1万1000円ならプロの注文が多くなるのではないかと筆者は予想します。

テレマティクスによる車両・運転者管理も実現!!

 注目は『Honda FLEETマネージメント』です。車体に積んだSIMカード入りのTCU(テレマティクス・コントロール・ユニット)経由で、車両の稼動データや運転を収集・解析でき、企業に様々な価値提供をもたらします。リアルタイムに車両の位置や電池状況などが把握できるだけでなく、運転者のライディング特性レポート、運転日報の自動作成、接近・通過・到着を知らせるなどが可能となり、走行ルート中の危険なエリアや交差点などを共有することもできます。

 このシステムは既存のガソリン車、ベンリィやスーパーカブ、ジャイロ系にも対応可能で、ビジネスバイクの今後の発展に欠かせない要素のひとつとなってくるのは間違いないでしょう。

 BENLY e:シリーズの企業・事業者向け発売は車両の電動化のみならず、バイクの双方向通信がまた一歩進んだことを意味しています。

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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