the「燃費」ヤマハのスーパースポーツ「YZF-R1M」をツーリングルートに解き放つ 200馬力級1000cc直4エンジンの燃費は!?

ヤマハモーターサイクルの象徴として、その頂点に君臨する「YZF-R1M」は、サーキット最速を追求して開発されたスーパースポーツモデルです。ものは試しにツーリングでの燃費を計測してみました。

サーキット最速狙いの実力、ツーリングでの燃費性能は?(気になる)

 技術の粋を集めた設計、経験豊かなテストライダーやレーシングライダーが育てた走り、まさに“ザ・カッティング・エッジ”なヤマハ「YZF-R1M」(以下、R1M)です。その最新作(2020年型)であり「YZF-R1」の上位機種は、普段使いでの燃費はどうなのでしょうか? the「燃費」班はこのマシンで計測に出ました。

ツーリングでの燃費はどうなのか? サーキット最速を追求して開発されたヤマハ「YZF-R1M」の実力を確かめる筆者(松井勉)が一般道へ乗り出す

 これまでthe「燃費」同様、同じルート、流れに合わせたペース、急加速、急減速、急発進といった3つの“急”を避け、車載のトリップメーター、平均燃費計で計測すします。最大出力を車重で割ると、1馬力あたりの分担荷重が1kg程度という恐るべき高性能マシンでも、このルールは変わりません!

 カタログ記載の燃費データは、国土交通省届出値(定地燃費値)が21.6km/l(60km/h走行、2名乗車時)で、WMTCモード値(クラス3、サブクラス3-2、1名乗車時)で15.2km/lとあります。実際にはどうなのでしょうか。

市街地での走りは信号待ち、低速走行のテクニカルマッチ

 東京都内、神宮外苑周辺を走りだし、青山1丁目交差点から国道246号で赤坂、皇居、銀座、晴海と抜け、首都高湾岸線沿いの国道356号線までをゆくいつものルートは、朝の通勤時間とも重なり通行車両は多め。信号待ちも長く感じます。走行時は回復するものの、距離に対して赤信号での停止時間が長く、途中11km/lを割ることも。

いざ、ツーリングへ。凛としたスタイリングは都内のお洒落なストリートにも映える

 発進後は4000rpmを目処に2速へシフト、その後はポンポンと6速まで上げて流れを掴みます。市街地では3速ないしは4速までのほうがキビキビ感があります。別の機会に実験すると、平均燃費計を見る限り、6速でエンジン回転を抑えても、4速のまま走行しても劇的なデータの差は無いように思いました。高回転型のエンジンながら市街地での乗りやすさを引き出すのに、発進などでは燃調を濃い目としているのでしょうか、トルク感があって走りやすいものの、燃費は伸びませんでした。

空力性能は美しいデザインとして、エンジン回転数のコントロールが要

 燃費計測リスタートとなる木更津エリアに到着。そこからアクア連絡道「袖ケ浦IC」から流入し、館山道「富浦IC」まで南下します。この区間は制限速度が80km/hから100km/hへ、また80km/hとなり70km/hへ変わる、館山道ではアップダウンの多い区間を通過します。

カーボン素材のカウルを纏い、オーリンズ製の電子制御サスペンションなどを標準装備するヤマハのフラッグシップモデル

 R1Mはこの高速道路区間、距離にして53.8kmで21.7km/lをマークします。途中、対向2車線の区間でペースが60km/hほどになり、6速のまま上り区間を走ると、回転数が低くアクセルをやや大きめに開ける場面もあって燃費はさほど伸びない結果に。

 高速道路区間の復路、ツーリングセクションを終え、館山道「富津中央IC」からアクア連絡道「木更津金田IC」までの25.4km区間では22.3km/lでした。この区間もアップダウンはあるものの、制限速度は100km/hから80km/hに変化します。その点で往路よりもペースが速かった印象です。

 参考までに、都心での市街地燃費計測後、首都高湾岸線から京葉道路、館山道、アクア連絡道を経由し、木更津までの83kmを走行した高速道路移動では22.3km/lを記録しました。移動ペースは計測区間の復路に近いもので、R1Mはエンジン回転数を低くするより、トルクバンドになる回転数で走るほうが燃費には優位なようです。

「ツイスティーロード最速」から「サーキット最速」へ、ワインディングは楽しい

 ツーリング計測区間は次の3区間です。最初は館山道「富浦IC」出口先にあるコンビニエンスストアから房総半島南端エリアへ。この区間は館山市内から内陸に入り、安房グリーンラインを経由したルートです。平坦路からアップダウンの続くワインディングへと変わり、南端エリアの海岸線へ。信号、交通量は少なく、ツーリングペースを保ちやすいルートです。この区間の燃費は19.8km/lでした。ワインディングはやはり楽しいR1Mです。

the「燃費」の設定ルート。房総半島最南端エリアにて

 続いて2区間目となる、房総半島南端エリアから国道410号、県道34号を経由して「大山千枚田」までの38.3kmを走ります。この区間の前半は海岸線を眺める平坦路で、途中に道の駅や海鮮レストランが点在するツーリングルートです。中盤から国道が内陸に入ると同時にアップダウンが現れ、場所によってはセンターラインがない狭いワインディングにもなります。流れは良く渋滞はありませんでした。この区間で19km/lを記録。

 これまでの計測経験からいくと、比較的好データを記録する車両が多い中、最初の区間よりも燃費が低下しました。先行車が多い区間だったこと、低い回転を使うことが多かったのもデータの理由のように思えます。

 その仮説を裏付けるように3区間目の25.9kmでは19.7km/lでした。「大山千枚田」から県道34号、184号を経由し「富津中央IC」まで走りますが、先行車がほぼなく、ペースを維持しやすかったことが燃費向上につながった理由かもしれません。

直4スーパースポーツの燃費性能を試してみたら……

 R1Mの燃費結果を分析すると、60km/h定地燃費値を上回るデータを高速道路移動でさらりと出したこと、ツーリング燃費計測時の速度域や市街地移動の平均速度を考えても、このルートでは、移動速度がある程度速いほうが燃費は良い、と言えそうです。ただし、the「燃費」ルートでの今回の走り方の場合に限り、です。

いつものツーリング想定の計測ルートを走り終え、ゴール地点の千葉県木更津エリアに到着

■ヤマハ「YZF-R1M」燃費結果
総合評価:☆☆☆☆★(ホシ4つ)
総走行距離:178km
市街地:12.6km/l
高速道路:22km/l
快走路:19.5km/l

 カタログデータと実測燃費の関係からいくと、R1Mのスコアはホシ4つとなります。

【了】

【画像】ヤマハ「YZF-R1M」の燃費はどれくらい? 実際に走って調査!(10枚)

画像ギャラリー

Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

最新記事