個性的な見た目に贅沢装備 ハスクバーナ「スヴァルトピレン125」はクラスレスな質感を放つ爽快なスクランブラーだった
個性的なスタイリングが特徴のひとつとして人気のハスクバーナ・モーターサイクルズには、125ccクラスのスクランブラーモデル「SVARTPILEN 125(スヴァルトピレン125)」があります。どのようなバイクなのでしょうか? 試乗しました。
125ccクラスとしてはグレードの高い装備、走りがいっそう楽しいものに
1689年にスウェーデンで誕生し、1903年から2輪の生産を手掛けている超老舗ブランドがハスクバーナ・モーターサイクルズ(以下、ハスクバーナ)です。幾度かの経営危機を乗り越え、2013年からKTM(オーストリア)の傘下に入っているわけですが、そこから右肩上がりの絶好調。スタイリッシュなニューモデルを続々と発表し、日本でも急激にシェアを伸ばしています。

そんなハスクバーナから登場した125ccモデルが「SVARTPILEN 125(スヴァルトピレン125)」です。この名を持つシリーズには、250(248cc)、401(373cc)、701(692cc/現在はカタログ落ち)があったわけですが、その末弟として日本へは2021年2月から導入を開始。クラスを感じさせない質感と個性的なデザインによって、他メーカーの125ccモデルとは一線を画す存在感を放っています。
アップハンドルとブロックタイヤを組み合わせたスヴァルトピレンは、いわゆるスクランブラーと呼ばれるカテゴリーに属します。オンロードもオフロードもこなせる万能モデルのことをいい、見た目はご覧の通り、アクティブそのもの。クルマで言えばスズキ「ジムニー」、時計ならカシオ「Gショック」にも通じる、なりは小さくともタフなたたずまいが持ち味です。

実際車体は軽量コンパクトで、またがってもプレッシャーはありません。830mmのシート高は特別低くはないものの、なにせ車重が146kg(燃料なし状態)と軽いため、股下でヒラヒラと自由自在に動かせます。ステップはやや後方にセットされ、上体はハンドルに覆いかぶさるような姿勢になりますが、小柄なライダーでも容易に扱えるでしょう。
エンジンは、15ps/9500rpmの最高出力を発揮する水冷4ストローク単気筒です。これがじつに爽快で、レブリミッターが作動する11000rpmまで一気に上昇。シフトチェンジを駆使し、6000rpm以上をキープした時に一段とレスポンスがよくなる生粋のスポーツユニットに仕立てられています。
言い換えると、トルクフルなタイプではありません。小気味よくスタートダッシュするなら4000rpm以上回すことになりますが、そのぶん自分自身の手でパワーを引き出している感覚が強く、いつでもどこでもスロットルを開ける楽しさを堪能できます。
右手と左足をフル稼働させて走る場面など、ビッグバイクだとそうそうなく、「スヴァルトピレン125」なら街中を行き来するだけで刺激的な時間を過ごせるでしょう。

また、このクラスのモデルの場合、ブレーキやサスペンションの性能はそこそこといったところ。コストの影響を受けやすい部分ながら、WP製の前後サスペンションはブロックタイヤをしっかり押さえつけ、十分な路面追従性を披露。BYBRE(バイブレ)製のブレーキもコントロール性に優れ、リアのABSにはキャンセル機能も備えられています。オフロードではリアタイヤを意図的にロックさせてコンパクトにターンすることがありますが、そうした高いスキルにも対応してくれるというわけです。
もちろん、ゆったりとしたツーリングも許容してくれます。たとえば、燃料タンクの上に備えられたラゲッジキャリアがそのひとつです。これを活用すれば純正のタンクバッグを容易に固定することができ、積載力がアップ。スウェーデン由来の製品には、機能性とデザイン性を兼ね備えたアイテムが多いものですが、こうした装備からもハスクバーナの出自を感じることができます。

他にも、ハンドルには剛性を引き上げるためのブレースが追加されていたり、ブレーキとクラッチレバーの両方にアジャスターが備わっていたりと手抜きなし。塗装の上質さなども含め、クラスレスな質感が光ります。
純正アクセサリーも豊富に揃っていますから、個性的なスタイルをさらにドレスアップするなど、楽しみ方は工夫次第。ディーラーもどんどん拡大しているため、ぜひ一度実車に触れてみてください。
ハスクバーナ「スヴァルトピレン125」の価格(消費税10%込み)は53万9000円です。
【了】
Writer: 伊丹孝裕
二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。マン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなど、世界各国のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。