一般的にヘルメットと言えば? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.87~
レーシングドライバーの木下隆之さんは、一般誌のインタビュー取材の際に用意したヘルメットが企画のイメージを崩してしまったと言います。どういうことなのでしょうか?
ヘルメットと言えば……?
僕(筆者:木下隆之)もある時はライダーであり、日頃はレーシングドライバーを生業としている。という個人的な事情により、ヘルメットをかぶると言えば、それは4輪レース用を思い浮かべる。たがそれは、一般常識的な連想ではなく、きわめて特殊なことなのだと気づかされた。

とある一般誌の「レーシングドライバーのオフ」的な企画で、どういう風の吹き回しか僕に取材対象としての依頼が届いた。取材は湘南の海岸線にあるカフェだと指定され、できればヘルメットを持参して欲しいとのこと。インタビュー撮影の雰囲気づくりのために、お借りしたいのだという。ハイハイとばかりに、無線システムやエアコンダクトが突き刺さった物々しい4輪レース用ヘルメットを持参したのだが、これが勘違いであった。
雑誌の編集者が描いていたのは、バイクにまたがる木下隆之のイメージだったのである。そこで、はたと気がついた。そう言えば、インタビュー依頼がやってきた時に、僕は「オフはバイクでテケテケしています」と答えていたのだ。編集者の頭には「のんびりとバイクで海岸線をツーリングするレーシングドライバーの休日」が描かれており、カメラマンの頭には「海岸線の小洒落たカフェでバイクにまたがるレーシングドライバー」が浮かんでいたのである。
となれば、僕が持ち込んだ物騒な4輪レース用ヘルメットはイメージが違う。「休日にのんびり」ではなく「休日なのにピリピリ」になってしまうし「小洒落たカフェに乱入したレーサー気取り」になってしまうのである。

振り返ってみれば、専門的ではない一般誌なわけで、つまり一般常識で“ヘルメット”と言えば2輪用ヘルメットであろう。それが証拠に、4輪用ヘルメットを売っている店を街中で見掛けたことがない。
いや、ヘルメットと言えば工事現場用の安全ヘルメットなのか……? 意外にヘルメットって、様々だとあらためて気づかされました。
【了】
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。


