MotoEライダー 大久保 光のレースレポート「MotoEマシンって、どんなバイク? 初乗りで感じた特徴とは」

日本人初のMotoE(FIM Enel MotoE World Cup)ライダーとして、2021年シーズンを戦うことになった大久保 光 選手のレースレポート第2弾! 今回は、MotoEマシンや2回の公式テストについて話してくれました。

限りなくイコールコンディションに近い電動バイクの世界選手権「MotoE」

 皆様こんにちは。レーシングライダーの大久保光です。

 2回目のMotoE公式テストも終わり、現在はスペインとフランスの国境沿いに聳える山々の一角にある、アンドラという国に滞在中です。

日本人初のMotoE(FIM Enel MotoE World Cup)ライダー、大久保 光 選手

 実はこの国、標高1000m以上のところにあり、東京都八王子市にある高尾山より400mほど高いところで生活しています。

 ここは山々の風景がとても美しく、トレーニングをしながらも、開幕戦までの束の間の休息です。

大久保 光 選手が滞在するアンドラ。スペインとフランスの国境沿いに聳える山々の一角にある国で標高1000m以上のところに存在しています

 さて、私は今季、MotoGP MotoEクラスに参戦します。
 
 MotoEといわれても、イマイチイメージが湧かない人が多いと思うので、まずは簡単にMotoEについて説明したいと思います。
 
 MotoEは、2019年からMotoGPの併催レースとして開催されている、電動バイクの世界選手権で、全6戦7レースで争われます。
 
 マシンは「エネルジカ」というイタリアの電気バイクメーカーのワンメイクとなっており、サスペンションはオーリンズ、ブレーキはブレンボ、そしてタイヤはミシュランと、それぞれのパーツもひとつのメーカーで決められているため、限りなくイコールコンディションに近いカテゴリとなっています。
 
 世界選手権として開催されるレースで、ここまでイコールコンディションとなるレギュレーションはとても珍しいのですが、その分ライダーの技量やセットアップ能力が、かなり重要となるクラスです。
 
 また、電動バイクは一般的なバイクとエンジン特性が大きく異なるので、その辺りをしっかりと理解し、乗りこなさなければなりません。

MotoEマシンはアクセルを開けた瞬間からフルパワー

 第1回目のレポートでは、3月におこなわれた初めてのMotoEテストに参加するためにスペインへ向かったところまでお話しましたが、今回はいよいよMotoEについて、私自身の感じたことを、この場を借りてお話したいと思います。

日本人初のMotoE(FIM Enel MotoE World Cup)ライダー、大久保 光 選手が使用するレース用バイク。電動のため排気音やエンジン音がありません

 まずは電動バイクであるMotoEと普通のバイクとでは、なにが1番違うのかという点についてですが、ずばり排気音やエンジン音が無いところが大きな違いです。

 普通のバイクはガソリンで走るため、勿論エンジン音が発生しますが、MotoEマシンの原動力は電気モーターなので、音が非常に静か。聞こえてくるのは独特のモーター音のみ! 例えるなら、ラジコンやミニ四駆のようなイメージです。
 
 そのため走行時の音はとても静かで、それは乗っていても同様です。また、エンジン音がしない分、いままでエンジン音でかき消されていた路面とタイヤが擦れる音や、アスファルトの段差の音、そして風を切る音がよく聞こえ、それはライダーとしても、とても新しい発見でした。
 
 余談ですが、エンジンの音がしないため、ピッロードを走行する際には警告音を出すスイッチを押して走らなければなりません。
 
 これはピットロード上にいる人に、マシンがとおる事を知らせるための安全対策で、これも電動バイクならではのポイントです。
 
 乗り味は、スロットルの開け始めが敏感で、アクセルを開け始めるとすぐにパワーが100%になってしまうため、開け始めの加速コントロールが難しいと感じました。
 
 しかし、慣れてしまえばその加速の良さをうまくラップタイムに繋げていくことができるので、これは電気バイクの強みでもあると思います。
 
 また、ピーク時のパワーもエンジンとは違い、回転数が上がってもパワーの出力はほぼ落ちないため、ピーク時のパワーを維持することができます。

電動モデルだけにギアチェンジ操作は無し

 勿論、ギアチェンジはありません。そのため左脚側にはステップしかなく、また、左手側レバーの、本来クラッチがあるところには、リアブレーキが付いている点も特徴です。
 
 また、一般的なガソリン車などと同じく右脚側にもリアブレーキペダルがついていて、ライダーは自分が好きな操作方法を使い、リアブレーキのコントロールをすることができます。
 
 そしてエンジンブレーキの代わりに回生ブレーキがきくため、これがエンジンブレーキのような役割を果たしてくれるので、コーナーの進入時にも大いに役立ちます。

日本人初のMotoE(FIM Enel MotoE World Cup)ライダー、大久保 光 選手が使用するレース用バイク。左手側についているボタンで操作することで回生ブレーキの強さを調節することが可能です

 また、回生ブレーキの強さの調節も、左手側についているボタンで操作することが可能です。
 
 しかし、車体車重は250kg以上あるため非常に重く、止まり辛い印象でした。
 
 普通に走っている分には問題はないのですが、レース中に相手をオーバーテイクする際は、いつものより少し奥でブレーキをかけ始めると、思った以上にバイクが止まらないので、しっかりと相手の前に出られるタイミングを見計らうことが、重要となります。

 ちなみに、車重が重い原因としては、やはりモーターを動かすバッテリーにあると思います。
 
 バッテリーだけで約130kg以上あり、その重さがバイクの中央部分に乗っていることが、車体が重い一番の要因。一方で、ハンドリングも重いのかと思えば、実はそこまで重くはありません。

日本人初のMotoE(FIM Enel MotoE World Cup)ライダー、大久保 光 選手が使用するレース用バイク。バッテリーだけで約130kg以上ありますが、バランスが良いため重さを感じさせません

 勿論、一般的なエンジン仕様のレーサーバイクに比べれば、車重はかなり重いのですが、乗っていて、250kg以上あるバイクをコントロールしているという感覚を感じることは一切ありませんでした。
 
 これはバイク自体の重量バランスが、しっかりと取れているからだと思います。
 
 さらに特徴的なポイントとしては、サスペンションが搭載されているのは右側のみ。これも、できる限りバッテリーを積むスペースを確保するための設計でしょう。
 
 テストでの1回の走行時間は、約15分から20分程度。今回テストがおこなわれたヘレスサーキットでは、約8周の距離となります。
 
 バッテリーの充電方法は、サーキットに特設のバッテリー充電施設があり、決められた時間にその施設へマシンを持っていき、全車一斉に充電を開始します。
 
 これは万が一何かあった際に、素早く対応できるようにするためだそうです。
 
 決められた充電時間に充電施設の近くを通ると、充電の音や熱を感じることができました。

気になるテスト走行の結果は?

 ここまでは、MotoEマシンについて簡単に説明させていただきました。
 
 テスト内容はというと、3月上旬におこなわれた1回目のテストでは、まずは電動バイクに慣れるところから、スタートしました。
 
 やはり、いままでとはまったく乗り味の違うバイクだったので、慎重にテストを進めていくことになります。
 
 そして4月におこなわれた2回目のテストでは、しっかりとマシンを理解した上で、自分の理想に近づけられるようにセットアップを進めていきました。
 
 勿論、1回目のテストを終えた後、2回目までに自分自身の足りないところをトレーニングで補い、自分の体とマシンのセットアップをうまくシンクロさせていく作業もおこない、2回目のテストに備えました。
 
 MotoEでは、他のクラスのように、みんなが一斉に走ってタイムアタックをする掲示予選方式とは違い、Eポールという各ライダーがひとりずつ出走し、1周のタイムアタックで順位を決める予選方式が採用されているため、それを見据えたタイムの上げ方、走り方をテストで試行錯誤します。
 
 とはいっても、十分満足できる結果とはなりませんでしたが、開幕戦に向けて良いテストをすることができたと思います。
 
 5月はいよいよ、ヘレスサーキットでシリーズが開幕します。精一杯、頑張りますので皆様、応援宜しくお願いします。

【了】

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