ホンダの歴史と最新を楽しめる場所 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.99~

レーシングドライバーの木下隆之さんは、ホンダ青山本社には宝の山があると言います。どういうことなのでしょうか?

ホンダの歴史と最新を楽しめる場所

 ホンダの青山本社内に設けられている「プレスルーム」は、なかなか居心地のいい空間である。まず受付嬢が笑顔で出迎えてくれる。室内は赤を基調にした洒落たしつらえであり、ちょっとしたレストランのようなカフェのような、できればゆっくりと寛いでいたい空間だ。

ホンダの歴史的バイクのひとつ「RC181」(1967年)

 何にも増して嬉しいのは、過去にホンダの歴史を飾ったバイクが1台、展示されていることだ。そこは「プレスルーム」と名がついていることからも想像できるように、我々マスコミ業界関係者だけが招かれる部屋なのだが、だからこそと言うべきか、ホンダの歴史を突きつけられる。

 展示されているバイクは様々で、およそ1カ月ごとに入れ替えられる。1967年にマン島を戦った「RC181」であったり、1976年の「CB400FOUR」だったりする。あるいは初代のスーパーカブであったり……。

 新車同様にレストアされていたり、あるいは当時から新車で保管していたと思われる車両もある。ともかく、ビカビカの上物なのである。

「いま売ったらいくらなのだろう……」

 歴史を振り返るよりも、下世話な金勘定をしてしまう自分(筆者:木下隆之)が情けない。プレスルームで担当者を待つ時間を利用して、中古車相場をスマホ検索して「へぇ!?」なんて腰を抜かしかけたりする。

 1976年の発売当時は32万7000円だった個体が、いまでは250万以上する。ヨシムラ手曲げマフラーや、タックロールシートなんかに改造してある物件でも150万円は下らない。極上モノには398万円なんてプライスタグが貼られてある。

ホンダの歴史的バイクのひとつ「DREAM CB400FOUR-I」(1976年)

 いま目の前にあるバイクは、新車なのかレストアものなのか判別不可能だが、とびきり極上だ。ホンダ本社に飾っているということから想像するにワークスの保存である。レストアしているとしても、ホンダコレクションホールの匠の手による逸品。中古車市場価格が398万円ならこいつは……。というより、いくら札束を積んでも売ってはくれまい。

 ちなみに1階のショールーム「Hondaウェルカムプラザ青山」にも、魅惑のバイクや最新のクルマ、F1マシン、パワープロダクツなどが展示され、あの「ASIMO」君のステージショーまで、業界関係者でなくとも誰もが見学できる(2021年6月21日より通常開館時間)。時期によって展示物も変更され、ときにはイベントも開催される。東京・青山に来たら、つい立ち寄ってみたくなる場所だ。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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