電動やアドベンチャーにも手を広げるハーレー・ダビッドソン 王道の空冷45度Vツインを搭載する「Street Bob 114」の魅力とは?

ハーレー・ダビッドソン「Street Bob 114」は、排気量1868ccの空冷V型2気筒「Milwaukee-Eight 114」エンジンを搭載し、大柄な「ツーリング」とコンパクトな「ストリート」シリーズの中間的な特性を備えた「クルーザー」モデルです。どのような魅力があるのでしょうか。

王道は、今も昔も空冷45度Vツイン

 アドベンチャーツアラーの「パンアメリカ」や、電動モーターサイクルの「ライブワイヤー」など、近年は新ジャンルへの挑戦に意欲的ですが、ハーレー・ダビッドソンの王道は今も昔も空冷45度Vツインエンジンです。

ハーレー・ダビッドソン「Street Bob 114(ストリートボブ114)」(2021年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 もっとも最近のビッグツインは、部分的に水冷や油冷と言うべき機構を採用していますが、冷却フィンが刻まれたシリンダーヘッド+シリンダー、エンジン右のプッシュロッド/チューブ、クランクケース左に備わるプラマリーケースは、黎明期から変わらない、ハーレー・ダビッドンの伝統です。

ツーリングとストリートの中間的な特性

 現在のハーレー・ダビッソンの空冷45度Vツインは、「ストリート」、「クルーザー」、「ツーリング」の3種に分類されています。

 まずトップモデルの「ツーリング」は、ロングランでの快適性を重視したキャラクターで、全車がサイドバッグ、一部を除いてフェアリングやウインドシールドを標準装備しています。また「クルーザー」と同系のエンジン「Milwaukee-Eight 107(ミルウォーキーエイト107」(排気量1746cc)や「Milwaukee-Eight 114」(1868cc)を搭載しながら、振動緩和用のバランサーをあえて1本としていること、パワーユニットとフレームの結合部にラバーを使用すること、リアサスペンションがオーソドックスなツインショックであることも、「ツーリング」の特徴と言えるでしょう。

 一昔前はスポーツスターファミリーと呼ばれた「ストリート」は、ハーレー・ダビッドソンのボトムレンジを担う存在で、他のシリーズと比較すると、排気量(883ccと1202cc)、車格、そして価格が親しみやすい設定になっています。ラバーマウント式フレームに搭載されるバランサー無しの空冷45度Vツインは、カムシャフトが4本(現在のビッグツインは1本)、エンジンとミッションが一体式で(ビッグツインは昔から別体式)、元を正せばその構成はスポーツ性を意識しての採用でした。

 さて、ここまでの文章を読んだ方はすでにお気づきのような気がしますが、「クルーザー」は「ツーリング」と「ストリート」の中間的な特性を備えています。リアサスペンションは同社では珍しいモノショックで、運動性やダイレクトなフィーリングを追求した結果、パワーユニットはリジッドマウントされています。もちろん、そのままでは振動が過大になるため、エンジン内には2本のバランサーを装備しています。300kg前後の車重をどう感じるかは人それぞれですが、「ツーリング」系の平均値が300kg台後半という事実を考えれば、軽い部類……と言えなくはありません。

ハーレー・ダビッドソン「Street Bob 114(ストリートボブ114)」(2021年型)

 今回試乗した「Street Bob 114(ストリートボブ114)」は、「クルーザー」のベーシックモデル、ソフテイルスタンダードのカスタム仕様と言うべき車両で、各部のブラックアウトを徹底して行うことで、ベース車とは異なる雰囲気を構築しています。

 エイプハンガータイプのハンドル(ミニエイプバー)、フロント19/リア15インチのワイヤースポークホイール、ショートタイプの前後フェンダーなどを含めて、チョッパーテイストが濃厚な車体構成はソフテイルスタンダードと共通ですが、フロントフォークに備わるラバーブーツや標準装備のタンデムシート、2021年型から導入された「ミルウォーキーエイト114」などは、「ストリートボブ114」ならではの特徴です。

2018年型で劇的な進化を実現

 前述した通り「クルーザー」は「ツーリング」と「ストリート」の中間的な特性で、位置づけは1984年に登場した初代ソフテイルから変わっていません。ただし時代に応じて堅実な進化を遂げて来たこのシリーズは、2018年のフルモデルチェンジで劇的な進化を実現したのです。

シート高683mmの車体に身長182cmの筆者(中村友彦)がまたがった状態。ステップはミッドコントロール、手前上方へ伸びたミニエイプバーはライダーの好みが分かれるところ

 2017年以前と明らかに異なるのは、車体の包容力、運動性と乗り心地の向上でしょう。具体的な話をするなら、峠道ではフロントまわりの剛性感やリアから伝わるトラクション、乗り手の操作に対する忠実な反応を実感しながら、車格からは想像できないスポーツライディングが楽しめますし、悪路では作動性に優れる前後サスペンションが路面の凹凸を軽やかにいなしてくれます。

 もっとも、ソフテイルファミリーと呼ばれていたかつてのクルーザーだって、運動性と乗り心地は決して悪くなかったのですが、今になってみるとその評価の裏には「ハーレー・ダビッドソンの中では」、「先代と比較すれば」……などという注釈があった気がします。逆に言うなら現代の「クルーザー」は、一般的なバイクとして見ても、侮りがたいレベルの運動性と乗り心地を実現しているのです。

 一方のエンジンに関して、一昔前の「ツーリング」や「クルーザー」が搭載していた「ツインカム96」や「ツインカム103」の日本仕様は、吸排気系に手を入れないと本来の資質が味わえない、と言われていました。でもミルウォーキーエイトは出荷状態のままで、大排気量Vツインならではの鼓動感とパワフルさを十分に堪能できるのです。

 もっとも、だからと言っていじる余地が無いわけではありませんが、ツインカム時代のキバが抜かれている? という印象は、ミルウォーキーエイト114からはほとんど感じられません。

 冒頭で述べたように、空冷45度Vツインはハーレー・ダビッドソンの王道モデルで、その中からどの機種を選ぶかは乗り手の好みや体格、予算によって変わってくるでしょう。とはいえ今回の試乗を通して、「ツーリング」と「ストリート」の中間的な特性を備える「クルーザー」なら、誰が乗ってもハーレー・ダビッドソンの世界をきっちり満喫できるに違いない、と私(筆者:中村友彦)は改めて思いました。

排気量1868ccの空冷V型2気筒「Milwaukee-Eight 114(ミルウォーキーエイト114)」エンジンを搭載

 ちなみに「ストリートボブ」のチョッパースタイルが好みではない方には、ハンドルが一般的なアップタイプで前後タイヤがクルーザーの中ではやや細身となる「ソフテイルスリム」や「ローライダーS」などがオススメです。

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 ハーレー・ダビッドソン「Street Bob 114(ストリートボブ114)」のベース価格(消費税10%込み)は199万6500円、取材車両のカラーリング「バハオレンジ」は203万9400円です。

【了】

【画像】ハーレー・ダビッドソン「Street Bob 114」(2021年型)の詳細を見る(13枚)

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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