クルマのハンドル右か左か問題、バイクには当てはまらず ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.112~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、車は国によってハンドルが右か左かの違いはあるが、バイクには関係無いと言います。どういうことなのでしょうか?
コルベットブランド史上初の右ハンドル車に驚く
GMの一員であるシボレーの新型「コルベット」が日本に輸入された。その試乗についてはすでに本コラムで紹介済みだが、そこではあえて伏せていた驚きがある。

「コルベット初のミッドシップ?」「スーパーカーとしては格安の1400万円?」驚きはそれだけじゃない。コルベットは、日本に輸入されるGM車として初の右ハンドル車であることなのだ。
GMはアメリカの自動車メーカーであり、つまり右側通行の国で開発されるから左ハンドルが基本になっている。だからそのまま輸入される。ところが、他の海外メーカーはどうしているかといえば、左側通行の国、つまり日本や英国用に右ハンドル仕様も生産してくれている。
その理由は、もちろん売れるからである。左側通行の国では、右ハンドルは都合が良い。というか、右ハンドル車に合わせて有料道路の料金所や有料駐車場のゲート、ドライブスルーなど、右側の窓を開けて銭のやり取りするようになっている。
それでもGMが日本や英国向けに右ハンドル仕様を生産してこなかったのは、つまり日本や英国のマーケットを重要視していなかったからであろう。
「どうせうちのクルマ買ってくれないんだから、わざわざ右ハンドル車を作る必要はないでしょ」と、デトロイトの会議室で役員がそう言ったかどうかは知らないが……。

それは鶏と卵のようで、作らないから売れない、売れないから作らない。トランプ氏が大統領になったとき「日本人はアメ車を買ってくれないから経済制裁を科す」と息巻いたけれど、当時の僕(筆者:木下隆之)は「そりゃ右ハンドルを輸出しないからだよ」と、反論する気持ちになった。右ハンドル車を揃えているドイツ車はバリバリに受けているではないか(そもそもハンドルの右左の問題ではないが)。
その点バイクは、左右の障害がない。世界のバイクは共通して左から乗り込むようにできている。サイドスタンドは左、左右2本出しではない場合、マフラーもライダーの邪魔にならないよう右側にレイアウトされている。右側通行の国でさえ、車体の左側からまたがるように開発されている。
だからハーレー・ダビッドソンは日本で売れている……とはならないが、あのGMから右ハンドル車が登場したことには、大いに驚いた。
【了】
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。