「バイク界のテスラ」ゼロモーターサイクルズ 最高峰モデル「SR/S」を走らせて感じた「バイクの未来図」とは

日本においては「XEAM」が取り扱う米国の電動バイクブランド「ゼロモーターサイクルズ」は現在、様々なモデルを発売していますが、今回はフラッグシップモデル「SR/F」の兄弟車である「SR/S」の実力を検証していきます。

高出力電動バイクならではの鋭い加速

 2035年までに東京都内で新車販売される2輪車のすべてを「非ガソリン化」にすることが目標に掲げられた「ゼロエメッション東京」や、2050年までに定められた「カーボンニュートラル社会の実現」など、この先の未来は、ますます「クルマ・バイクのEV化、非ガソリンエンジン化の波」が加速していくであろうことが予想されます。

ゼロモーターサイクルズ「SR/S」に乗る筆者(渡辺まこと)

 そうした中、2006年にアメリカ・カリフォルニア州のサンタクルーズで創業されたEVバイクメーカーである『ZERO MOTORCYCLES(ゼロモーターサイクルズ)』は、この先の未来、益々注目を集めそうな存在なのですが、同社の最高峰モデルといえるのが、ここに紹介する『SR/S(エスアールエス)』です。

 ともすれば巷では『EVバイク』や『電気バイク』に対して航続距離も短く、遅い乗物というイメージを抱く方も未だ多いのでしょうが、しかし、スペックを見る限りSR/Sには、そうしたことは該当しません。ちなみに同モデルの最高出力は82kw(110ps)、最大トルクは190Nm(約19.3kgf・m)というものになっており、特にトルクに関して言えばハイ・パフォーマンスで知られるスズキ・ハヤブサの150Nm(約15.3kgf・m)をも大きく凌ぐ驚愕の性能が与えられています。

ゼロモーターサイクルズ「SR/S」

 実際に走らせてみても、パーシャル状態からの追い越し加速はかなりのもので、大げさ抜きに言ってもガソリンの国産リッター・バイクにまったくヒケをとりません。ゼロ発進からの加速も最大パワーとトルクがリアタイヤにいきなりかかるEVならではの特性ゆえ、中々エキサイティングで、アイドリング時(モーターなので実際はアイドリングしないのですが)にはまったくの無音、無振動にも関わらず、アクセルを捻ると2ストにも似た強烈な加速が身体を包み込みます。そのフィーリングは、何とも不思議な感覚です。

 既存のガソリン・エンジンのバイクを楽しむ人の中には“EVバイク”を全否定する向きもありますが、乗ってみるとコレはコレで十分に楽しいと断言出来ます。

これからのブラッシュアップに期待

 ちなみにこのSR/Sは、当サイト(バイクのニュース)で試乗記を書かせて頂いた『SR/F(エスアールエフ)』に高速走行でのウインドプロテクションに優れたフルカウルを追加した上でシート周りのサブフレームを延長し、積載性が向上されているとのことですが、たしかにそう言われてみるとノンカウル・モデルに比べてラグジュアリーな印象を覚えます。

ゼロモーターサイクルズ「SR/F」

 特に直線時のカウルの効果は絶大で、基本的に同じ仕様であるはずのSR/Fと比較しても風圧を感じない分、いつの間にか速度が「出てしまっている」と感じさせるもの。高速道路を使ったツーリングなどでも高い効果を発揮することでしょう。

 しかし、ここで個人的な意見を言わせて貰えればこのカウルがあるがゆえに、どことなくフロントのハンドリングがヘビーに感じてしまったのも正直なところ。ノンカウルのSR/Fの方がバイク全体のパッケージとしてバランスが良いように感じたのも正直なところです。

 これは同じアメリカのビューエル製の車両(ハーレーダビッドソンのスポーツスター用エンジンを搭載したモデル)などにも言えるのですが、少し“トレール量”が少なく感じるハンドリングは、おそらくネック角が立ち気味なことが要因と感じます。それがフェアリングを装備することで顕著に表れているのでしょうが、こうした点はまだ改善の余地がはずです。

ゼロモーターサイクルズ「SR/S」。左グリップにはモード切り替えボタンが装備されており、ストリート/スポーツ/ECO/レインとシチュエーションに合わせ4タイプのライディングモードに切り替え可能です

 また電力消費に関しても、スポーツモードで走らせた場合、カタログ・データより電力消費が早いのではないか、と感じたのも本音です。こうした部分は“ECOモード”や“レインモード”“ストリートモード”などの切り替え可能な走行モードをそれぞれ試し、様々な状況下で走らせない限り、何とも断言出来ないのですが、スポーツモードでアクセルを開け気味に走った場合、走行可能距離の電力残量の減りが想像より早かったのは確かです。

 208~240Vのレベル2で4時間30分、110~120Vのレベル1では8時間30分という充電時間を考えると、こうした点はまだ改善の余地があるような気がします。
 
 ちなみにカタログ上の走行可能距離はバッテリー最大規格容量が14.4kWhのType1・2が259km、18kWhのType3だと306kmとなっており、今回はType1を試乗させて頂いたゆえ、最高峰モデルであるType3の実力がいかなるものか想像の域を出ないのですが、やはり“2030年のゼロエメッション東京”や“2050年のカーボンニュートラル社会”の実現を目指すのであれば社会全体として、充電設備のインフラ整備が必要になるでしょうし、無論、より高い実用性を求めるのであれば車体自体の充電時間の短縮、あるいはカメラのようにバッテリーをカセット化するなどの抜本的な対策も必須項目です。

 とはいえ、こうした部分に関しても、あくまでも重箱の隅を突き、あえて言えばというレベルのものであり、現段階でもゼロモーターサイクルズのSR/Sは“バイクとしての性能”を見る限り、ガソリン車にヒケをとりません。それどころかむしろ、加速の鋭さでは既に現行ガソリン車種の多くを上回っているとさえ感じさせます。

 まだEVバイクの歴史がスタートしたばかりの黎明期ですが、こうしたマシンの存在を知ると、ガソリン車が無くなるであろう未来を悲観するばかりでなく、この先の未来をいかに楽しむべきか、という「バイクの根本」というものを改めて気付かされます。

 地球環境の保全から“脱ガソリン車”という流れはこの先、止めようがないでしょうが、このSR/Sに乗った限り、先の「バイクの未来」は想像よりもきっと明るいのではないでしょうか。
 
 たとえEVの時代になろうとも「趣味性」が問われるバイクという乗り物の楽しさ……それは動力が電気でも変わらないことをゼロモーターサイクルズのSR/Sが既に示している気がします。

【了】

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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