3輪なのに2輪みたい? 1輪増えて面白さも倍増! ヤマハ「トリシティ300」の魅力

ヤマハ「トリシティ300」は、フロントが2輪の3輪スクーターです。2輪バイク同様に車体が傾いて旋回するヤマハ独自のLMWテクノロジーを搭載しています。走りにはどのような特徴があるのでしょうか。

際立つ個性と存在感、走らせてみたら面白さも!

 ヤマハ「TRICITY300 ABS」(トリシティ300)を短時間で説明すれば、それは前2輪、後ろ1輪の3輪スクーター、となります。濡れた路面、マンホール、寒い朝といった「滑りそうで恐い」という場面でライダーに安心感と安定感を与えてくれる3輪モビリティであり、じつはそれだけにとどまらない面白さとプレミアム感も湛えているのです。

雨の中、ヤマハ「トリシティ300」に試乗する筆者(松井勉)

 今回試乗した「トリシティ300」は、新しい環境規制に適合した最新モデル(2020年9月30日発売)であり、ちょうど1年前に試乗したモデルとその辺がどのように変化したのか、ということにも興味がありました。

 答えから先に言ってしまうと、まず環境規制に対するパワー感の減退、これを気にされる方は多いと思いますが、スムーズで上質感が増したようなエンジンにパワーとトルク不足は一切感じませんでした。むしろ上がっている? と思わせるような場面があったほど。

 テスト車両は3色展開のうちブルーイッシュグレーソリッド4という塗色です。艶ありグレーの車体は高級感とスポーツ感がほどよくバランスしています。そしていつ見ても「トリシティ300」はデカイ! スリーサイズと重量だけならかの「TMAX560テックマックス」をも上回り、その存在感はもう大排気量ツアラー並とも言えるでしょう。この存在感こそ「トリシティ300」が持つ大きな特徴です。

 それを決定付けるのが前輪まわりです。前2輪を懸架するのに片側に2本のフロントフォークとそれを支えるパラレログラムリンクと呼ばれるアームがあり、それにより左右の2輪が独立懸架されています。この機構で左右のタイヤが通る路面の状況に違いがあっても、しっかりとサスペンションが吸収し、接地性を高める、というもの。メカメカしさとデザイン、機能がバランスしているところもウリ。

前2輪は「パラレログラムリンク」によって同調され、2輪のバイク同様の自然なコーナリングを実現

 車体を傾けて走る感覚は2輪のバイクと同様です。前2輪は、車体が傾く方向にも上下にも動くので、前輪周りの接地性と乗り心地は格別。ふわっとした乗り味は高級感につながります。逆にエンジン、ミッションとユニットになって動く後輪がギャップ上を通過すると、むしろ後輪からの突き上げ感だけが、「ああ、バイクなのね」と思い出させるのです。

 市街地走行で車重237kgを意識した場面があります。交差点で停止して足を出す瞬間に感じる前周りの重さ。その重さに幅を感じると言えば解ってもらえるでしょうか。なるほど、スタンディングアシストという機能を付けた理由がわかります。スイッチひとつで車体が傾く動きを制限してくれることで、この機能を使えば安心感が全然違います。作動時、解除時の“ピー”音はもう少しボリューム落として欲しいですが……。

 そんなに重いなら、低い速度で交差点を曲がる時に内側へバタンと寝てしまうのでは? その心配は要りません。CVT、クラッチ、エンジンのチューニングが綺麗にまとめられ、アクセル開度に合わせてスムーズに発進するため、むしろ一体感のほうが強いのです。

車両重量237kgながら、旋回時のスムーズさとグリップ感は「トリシティ300」ならでは

 これはツーリングに出ても同様で、低速域や止まる寸前に感じる重量は軽快に進むワインディングでは、あたかもビッグバイクを扱っているような重厚感に変わります。それがタイトターンの続く道に入っても曲がる楽しさとグリップのしっかり感に変わり、充実したライディング時間を過ごせるのです。スクーター的軽快感とは異なりますが、これも「トリシティ300」だけが持つ世界でしょう。

 ブレーキ性能も充分。左右2輪に装備するブレーキによりストッピングパワーは充分な上、4本のサスペンションを使ってタイヤを路面に押しつけるように荷重移動が起こる印象は、信頼感がやはり普通のバイクとは違います。試しに安全な場所で急制動を試みましたが、いわゆる握りゴケのような、フロントタイヤが切れ込むような挙動にならない! 

 要望としては、前後連動ブレーキを採用する「トリシティ300」は、右レバーを強め、左レバーを弱めというような握り方をすると、握りだした途中から左レバーのストロークに無効な遊びのような部分があり、操作の臨場感が減衰します。ここは是非、次回アップデイトで改善をお願いします。

排気量292ccの水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ『BLUE CORE(ブルーコア)』エンジンを搭載するヤマハ「トリシティ300」

 高速道路では俊敏ではないものの、たった300?とは思えない満足感ある走りをしてくれました。力という意味ではなく乗り心地の良さ、快適性、車体がもたらす重厚感が合わさった、個性ある走りです。

 ウインドノイズが少なくエンジン振動も低め。計ってみたら燃費も市街地で29km/l、高速道路で34.5km/l、ツーリング(快走路)で39.4km/lと良好。250ccでオトナ1人分軽い「XMAX」には敵いませんが、ベスパ「GTSスーパーテック300」と比較しても全体的に「トリシティ300」のほうが数値は良好でした。重さ、軽さより駆動系のセッティングが重要なのでしょう。

 存在感がある分、パーキングスペースを広く要するのも事実。また100万円近い車両価格を気にする方もあるでしょう。しかし、人とは違った個性を楽しみたいという人にはうってつけの1台、滑らかな駆動系を活かしてタンデムツーリングで楽しみたいという人にも、余裕ある走りの「トリシティ300」はオススメです。

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 ヤマハ「トリシティ300 ABS」の価格(消費税10%込み)は95万7000円です。

【了】

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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