街乗りも楽しい!! カワサキ「Ninja ZX-25R」の面白さ、そして頼もしさ

2020年9月に国内販売開始されたカワサキ「Ninja ZX-25R」は、各種仕様を見ればその身に秘めたポテンシャルの高さがうかがい知れます。そんなスポーツバイクが、街乗りでは果たしてどんな顔を見せるのか? じつは懐がとても深いバイクだったのです。

高揚感を感じる加速は、乗りやすさを置き去りにしない

 日本では2020年9月に販売開始されたカワサキ「Ninja ZX-25R」(以下、25R)は、ご存知のとおり250ccクラスにおいて久々の並列4気筒エンジンを搭載するバイクとあって、大きな注目を集めました。そして話題を呼んだのは新設計の4気筒エンジンだけではなく、搭載された電子制御システム、上位グレードとなる「SE」モデルには、アップとダウンに対応したクイックシフターを標準装備とするなど、装備面も充実しています。

カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」(2022年型)カラー:ライムグリーン×エボニー
カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」(2022年型)カラー:ライムグリーン×エボニー

 2008年にカワサキが「Ninja 250R」(並列2気筒エンジン搭載モデル)をリリースして以降、人気を博している250ccクラスのスポーツモデルですが、その背景にはスポーツ性と乗りやすさの両立がありました。しかし、この25Rの登場により、スポーツライディングに軸足を置いたバイクという意味で、このカテゴリーに新しい風が吹くのだろうか、とも思えたのです。

 ところが、走らせてみれば良い意味でそんな予測は裏切られました。今回は主に街乗りにおける25Rの印象をお届けしましょう。ちなみに試乗したモデルは「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」です。

 カワサキのスポーツモデルのトップエンドである「Ninja ZX-10R」を彷彿とさせるルックスは、ライダーに“これは純粋なスポーツバイクなのだ”という印象を与えます。ところが、またがってみればライディングポジションはきつい前傾ではありません。足着きも良好。身長153cmの筆者(伊藤英里)でも、両足つま先で踏ん張れる程度には地面に接地します。

シート高785mmの車体に身長153cmの筆者(伊藤英里)がまたがった状態。両足つま先で踏ん張れる程度の接地感
シート高785mmの車体に身長153cmの筆者(伊藤英里)がまたがった状態。両足つま先で踏ん張れる程度の接地感

 イグニッションをオンにすれば、途端にライダーの高揚感をくすぐるエキゾーストノート。4気筒らしい滑らかな振動と、250ccクラスらしからぬ重点音が体に響いてきます。そんな耳からの刺激とは裏腹に、右手のスロットルをひねればスムーズに湧き上がるパワー。発進した直後から「扱いやすい。これなら乗れる!」と、このバイクに惹き込まれていました。

 アクセルを開けたときの加速感、スピードに乗る感覚が素晴らしく楽しいのに、それが怖さを呼ぶことも、筆者のようにライディングスキルが高くないライダーであっても、置いてけぼりにされることもありません。

 そしてハンドリングの素直さ、小回りの良さも、このバイクの特長ではないでしょうか。じつはUターンが大の苦手である筆者。小回りにも未だに苦手意識があります。それが25Rの場合、ライダーが行きたい方向にクイッと自然に曲がってくれるのです。これによって意識せずとも上半身の力が抜け、自分でも驚くほど自然に小回りができます。

 2つのパワーモードと3段階のトラクションコントロール(KTRC:カワサキトラクションコントロール)を備える25Rは、街中ではほぼ、トラクションコントロール「3(最も介入度が高い)」を使用していました。パワーモードは低速から鋭い加速をする「フルパワー」、ゆるやかな加速の「ローパワー」の2つがあり、どちらも試したところ、交通量やストップ&ゴーが多い状況ではローパワーの方が扱いやすいと感じました。

 今回は走る機会はなかったのですが、雨天時にローパワーでトラクションコントロール「3」で走れば、安心感への貢献度は高そうです。交通状況によってパワーモードが選択できることで、街乗りの中でも安心して走る面白さを実感できるメリットもあると感じました。

ライダーの安全性を高める、電子制御システム

 アップ&ダウン対応のクイックシフターはどうでしょう。普段、プライベートでも仕事でも、クイックシフターを装備するバイクに乗ることがない筆者は「コレは街乗りで必要なのだろうか?」と思っていました。ええ、走る前までは……。

パワーモードとトラクションコントロールのモード選択、シフターのオン/オフはハンドル左側のスイッチボックスにある「SEL(セレクト)」ボタンで切り替える
パワーモードとトラクションコントロールのモード選択、シフターのオン/オフはハンドル左側のスイッチボックスにある「SEL(セレクト)」ボタンで切り替える

 しかし、その認識は間違いだったと走っていて気づきます。クイックシフターによってシフト操作が格段に楽になり、そのおかげで周囲の状況に対し、さらに気を配ることができると感じたのです。

 この感覚は標準モデル、SEモデルに共通で搭載されるABSシステムやトラクションコントロールも同様でした。走行中、交通状況により、不本意ながらフルブレーキを強いられたのですが、その瞬間、ABSが働いたことが音でわかりました。そしてリアはまったく振られることなく、ピタリと安定。驚くほどスムーズに停止したのです。そのときはトラクションコントロールの介入度が高い「3」で走行していました。なるほど、こうした電子制御はすべてのライダーがより安心に、より安全に走る支えとなる技術なのだと、あらためて認識した次第です。

ハンドルはライディングポジションが前傾になり過ぎない、ほどよい垂れ角
ハンドルはライディングポジションが前傾になり過ぎない、ほどよい垂れ角

 何度も走らせるうち、「街中では扱いにくいバイクなのかな?」、という先入観はあっという間に消し飛んでいました。25Rはライダーがバイクを操る、スポーツバイクに乗るという楽しさをもたらしながら、同時に日常的にバイクを楽しませてくれる、そんなバイクではないでしょうか。

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 カワサキ「Ninja ZX-25R」の価格(消費税10%込み)は84万7000円、「SE」モデルは93万5000円となっています。

【画像】カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」(2022年型)を見る(8枚)

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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