川崎大師と言えば初詣と久寿餅(くずもち) 老舗2店の味を食べ比べに自転車で行ってみた

川崎大師と言えば初詣と久寿餅(くずもち)ではないでしょうか。人気の老舗『住吉屋総本店』と、暖簾分けした『住吉』の味を食べ比べするために、自転車で訪れました。じつはサイクリストにとってもエネルギーの素なのです。

川崎大師の名物「久寿餅」は、サイクリストにとってもエネルギーの素

 初詣は年の初めに参拝する日本古来の行事ですが、日本のいたるところで八百万の神を祀っている神社や寺院を見つけることができます。なかでも真言宗智山派(しんごんしゅうちさんは)の大本山、川崎大師(平間寺:へいけんじ)は、三が日で参拝者が300万人以上も訪れる神奈川県随一の寺院として知られています。厄除けの参拝ついでに、仲見世で名物「久寿餅(くずもち)」を食べ比べすべく、自転車で訪れました。

自転車で川崎大師の名物「久寿餅(くずもち)」を求めて走った。正月三が日には多くの参拝者で溢れる
自転車で川崎大師の名物「久寿餅(くずもち)」を求めて走った。正月三が日には多くの参拝者で溢れる

 多くの寺院の参道には露店が軒を連ね、とても華やかです。もちろん、ここ川崎大師も例外ではありません。初詣へ自転車で行く場合は駐輪場などの施設・設備を利用しましょう。施錠も忘れずに。

 さて、川崎大師の歴史と共に、古くから人々に親しまれているのが「久寿餅(くずもち)」です。葛粉(くずこ)ではなく発酵させた小麦粉を使っています。発祥は諸説あるようですが、江戸時代(1830年から1844年頃)、納屋に保管していた小麦粉を濡らしてしまい、偶然発酵したデンプンを見つけたことが始まりとのこと。「久寿」という名称は川崎大師山主が命名したとか。発見した久兵衛が試しに作った餅のような食べ物を寄進したところ、淡白で風雅な味わいが賞され、久兵衛の「久」の字と、無病長寿を祈念した「寿」の字を附して「久寿餅」と名付け、川崎大師名物として広めることを薦めたと言われています。

 ちなみに、原材料は小麦なので炭水化物。これはサイクリストにとってもエナジーの素なのです。

多摩川にかかる国道15号の橋を渡り、川崎へ向かう。しばらくすると差し掛かる神奈川6街道のひとつ「大師道(だいしみち)」に沿って進む
多摩川にかかる国道15号の橋を渡り、川崎へ向かう。しばらくすると差し掛かる神奈川6街道のひとつ「大師道(だいしみち)」に沿って進む

 仲見世には久寿餅を販売する店舗がいくつかあります。なにしろ100年以上の歴史があるので、多くの人たちに提供すべく増えていったのでしょう。その中から人気を二分しているという2店舗の久寿餅を食べ比べしてみます。

 まずは最も古い歴史をもつ「住吉屋総本店」です。参道にあり、創業は1887年(明治20年)とのこと。そしてもう一方は、大山門の目の前という好立地にある「山門前 住吉」です。創業は1917年(大正6年)で、「住吉屋総本店」からの暖簾分けのようです。

 当然ながら、いずれも「久寿餅」の原材料は小麦澱粉です。見た目では全く違いがわかりませんが、それぞれを楊枝で触ってみると、弾力感がわずかに異なります。また、味覚を刺激する糖蜜にも質感に違いが見られました。「住吉屋総本店」はサラッとした糖蜜であるのに対し、「山門前 住吉」のそれはやや粘性が高いようです。

最も古い歴史をもつ「住吉屋総本店」は境内から離れた参道にある
最も古い歴史をもつ「住吉屋総本店」は境内から離れた参道にある

 きな粉をまぶします。と、その前に、配膳されたプルップルの「久寿餅」には糖蜜を先にかけるか、あるいはきな粉を先にかけるか? 長年の議論が続いているかどうかは知りませんが、きな粉の上から糖蜜をかけると、きな粉に弾かれて糖蜜がうまく混ざらないという現象が生じ、憤慨をした方も多いと存じます。筆者(山本健一)としては、糖蜜を先にかけて、きな粉をまぶすほうが見た目にも美しく、美味しくいただけると考察します。

 いよいよ試食です。まずは「住吉屋総本店」ですが、楊枝を当てるとスッと餅に入り、とても柔らかい印象です。きな粉を糖蜜を絡めて頬張ると、モチモチとした食感と糖蜜の甘み、香ばしいきな粉の香りが口いっぱいに広がります。三つ巴の調和が生み出した残り香が名残惜しいですが、緑茶をすすると「日本人に生まれてよかったなあ……」と、つくづく感じます。

 続いて「山門前 住吉」の「久寿餅」は、楊枝を通す際の弾力感がかなり強めです。頬張ると前者とは明らかにテクスチャーが異なります。上質な風味は変わりませんが、コシが強めの食感が好みという人はこちらがオススメでしょう。そして糖蜜は甘め、きな粉との馴染みも良く、お互いを引き立て合い、コシのある「久寿餅」によくマッチしています。まさに秘伝の成せる業ではないでしょうか。

「山門前 住吉」は大山門から大本堂が見える正面に位置している。この好立地は久寿餅が名物として認められている証拠
「山門前 住吉」は大山門から大本堂が見える正面に位置している。この好立地は久寿餅が名物として認められている証拠

 総論と言うほどでもありませんが、どっちも美味い。いずれもオススメです。初詣の際に召しあがってみてください。さらにお土産としてもお忘れなく。お店は1年を通して営業とのこと、いつでもこの風雅な味わいを楽しめるのは嬉しいことですね。

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Writer: 山本健一

サイクルジャーナリスト(人力バイクのほう)。ジャーナリスト歴20年、自転車競技歴25年の公私ともに自転車漬け生活を送る。新作バイクレビューアー、国内外レースイベントやショーの取材、イベントディレクターなど、活動は多岐にわたる。

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