球体を綺麗に包むラッピング技術でヘルメットを演出 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.129~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、鋼鉄製のヘルメットを製作したと言います。どういうことなのでしょうか?
クルマだけではなく、ヘルメットもラッピングで楽しむ
「鋼鉄製のヘルメットを製作しちゃいました。大切な頭を守るためにね。硬いほうが当たり負けしないと思ったんだ……」というのはもちろん真っ赤なウソ。いつも被るのはアライヘルメット、安全性に関しては信頼を置いている。そしてもうひとつ、遊び用のヘルメットをラッピングしたのだ。

加工を依頼したのは、東北に拠点を置く“サビの魔術師”の異名を持つ『CARAPP(カラップ)』だ。市販車の化粧直しはもちろん、レーシングカーのラッピングもこなす。僕(筆者:木下隆之)が乗るBMW Team Studieのラッピングを担当しており、それがご縁で弊社がヘルメットラッピングの代理店になった。その皮切りに、何か面白いことやろうと思案していたところ、「鋼鉄製ヘルメット」に見えるラッピングが思いついた。
「あいつの頭、重そう?」と、笑ってくれたら本望である。「硬そう」であり、「錆びてるし……」でもいい。馬鹿にしてくれれば、望外の喜びである。
そもそも鋼鉄製が安全という発想が狂っている。ヘルメットが丈夫でなければならないことは事実だが、丈夫と硬いはちょっと意味合いが異なる。煎餅は硬いけれど脆い。餅は柔らかいけれど粘る。硬いガラス瓶を落とせば割れるけれど、柔らかいゴム毬を落とせば弾む。それがたとえになっているかはわからないけれど、鋼鉄がその中の頭を守ってくれるとは到底思えない。
安全性で定評のあるアライヘルメットの構造を知ればわかる。帽体の表層と内層は強度と粘りに優れた強化ガラス繊維層であり、軽くて粘り強い特殊化学繊維をサンドイッチする。さらに解剖してみれば、帽体に粘り強さを与えるネット材が貼られている。耐衝撃性のポリエチレン系繊維で覆う。頭部を守るのは“粘り”なのだ。

そうでないと、衝撃がすべて脳に伝わってしまう。ヘルメットは無傷でも、中身が粉々になってしまっては意味をなさない。だから鋼鉄製などもってのほかなのだ。
そんな鋼鉄製ヘルメットを見て「あいつバカじゃね?」と、後ろ指を指してくれたら嬉しい。そんなお遊びでした。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。




