バイクで言うところの「シート高」、クルマには関係ない? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.131~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、バイクのスペック表の「シート高」表記は、クルマにも取り入れるべきだと言います。どういうことなのでしょうか?

「シート高」を表記するバイクのスペック表は、とても親切

 トヨタ・アルファードの人気が衰えない。トヨタが誇る最大級ミニバンは、威圧的なルックスと豪華な内装が高く評価されている。もはやこの市場では1人勝ち状態だが、対抗馬と言えるのは三菱・デリカD5と日産・エルグランドだろう。

ヤマハ「TRACER9 GT」のシート高は810mmあり、走行中の見晴らしは良いが、身長170cmの筆者(木下隆之)には乗り降りや停車時の足つき具合が辛いという
ヤマハ「TRACER9 GT」のシート高は810mmあり、走行中の見晴らしは良いが、身長170cmの筆者(木下隆之)には乗り降りや停車時の足つき具合が辛いという

 デリカは三菱が得意とする4輪駆動制御を武器に、オフロード派のハートを掴んで離さない。だが、エルグランド人気はいまひとつ。モデル末期であることから新鮮味がなく、話題に上ることも少ない。じつはとても良いクルマだと僕(筆者:木下隆之)は思っているし、アルファードと比較すれば圧倒的に安価。コスパでは負けていないような気がするのだが……。

 アルファードは、高い車高ゆえに着座位置が高く、混雑した日本の道でも見晴らしがよく、圧迫感がないのが特徴だ。逆にエルグランドは、車高の低さがウリでもある。人気グレードの「オーテック・ハイウェイスター」はシャコタンであり、操縦性が整っている。乗り降りもしやすい。

 さすがにアルファードクラスになると、コクピットにはよじ登るようなアクションが必要なため、頻繁な乗り降りは辛い。だがエルグランドは、シート高が低いことから、ドアを開けてちょっとハイチェアに腰掛けるような、そんな要領で乗り込むことが可能だ。

 ただし、それがアピールされることが少ないのは寂しいところだ。カタログを詳細に読み込むと着座点の低さに関する記述があるものの、そもそもクルマにとってはあまり着座点が議論されることは少なく、ましてスペック表にそのような項目はない。エルグランドがこれほど乗り降りしやすいのに、それが評価されることが少ないのである。

 僕がいま気に入って日頃の足にしているホンダの大型クルーザー「レブル1100 DCT」は、並列2気筒で排気量1100ccものビッグエンジンを搭載しているのに、シート高はわずか700mmだ。クルーザータイプとしては低くもなく高くもない常識的な数値だが、スーパースポーツはもちろんのこと、ましてロングツーリングをこなすアドベンチャー系と比較すれば相当に低い。身長170cmの僕が真っ先に気にするのは、シート高なのだ。

ホンダ「Rebel 1100 DCT」に乗る筆者(木下隆之)。大型バイクながらシート高が低くて乗りやすいという
ホンダ「Rebel 1100 DCT」に乗る筆者(木下隆之)。大型バイクながらシート高が低くて乗りやすいという

 その傾向は僕だけではなく一般的なようで、バイクのモデルカタログでは、スペック表の上段付近に必ずシート高の項目がある。バイクのスペック表はとても親切なのだ。

 クルマでは(立ちゴケしないから……という理由だからか)シート高が語られることは無いのだろう。とはいえ、じつはバイクほどではないかもしれないが、シート高にこだわるユーザーもいる。シート高を武器にするエルグランドがある。

 こういったバイク界の常識を、クルマにも取り入れてもらいたいものである。

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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