これって違反? 電動キックボードの飲酒運転
2022年4月19日の道路交通法改正により、電動キックボードは「特定小型原動機付自転車 (以下、特定小型原付)」に分類されることになりました。そんな電動キックボードは、飲酒運転をしても良いのでしょうか。
電動キックボードの飲酒運転は違反?
2022年4月19日、道路交通法の改正案が衆議院本会議で可決され、電動キックボードをはじめとした電動小型モビリティの新たな車両区分が決定しました。
これまで、電動キックボードは50ccのバイクと同じ「原付一種」に分類されていたため、車道を走行することや制限速度30km/h以下、ヘルメットの着用義務のほか、運転免許証の携帯義務などが定められていました。
しかし、新たな道路交通法では、電動キックボードは新設された「特定小型原付」という車両区分。最高速度は自転車と同等の20km/hに制限され、車道に加え、普通自転車専用通行帯、自転車道の通行が可能です。
また、ヘルメットの着用は任意となり、16歳以上であれば免許は不要。最高速度が6km/h以下に制限された車両であれば、歩道での走行も可能となります。
このように、非常に気軽に乗れる乗り物となった電動キックボードは、飲酒運転をしても良いのでしょうか。

特定小型原付に関する改正法案は、すぐ適用されるわけではなく、2年以内をめどに試行される見込みです。そのため、現状の電動キックボードはしばらくの間、これまでどおり「原付一種」の車両区分として扱われることになります。
そんななか、手軽な移動手段として、都心部を中心に急速に利用者が増えている電動キックボードですが、悪質な違反者も急増しています。
警視庁の発表によると、今年の1月1日から4月27日までの間に、都内で電動キックボードの飲酒運転をした疑いで、8人が検挙されています。
このような事態を重く受け止め、警視庁では取り締まりを強化。電動キックボードの運転者を呼び止めて、アルコールの呼気検査をおこなうなど、悪質な運転者に対しての警告を実施しています。

電動キックボードの利用者のマナーは、まだルールに追いついていないと感じられることが多々ありますが、電動キックボードの車両区分は原付一種となっているため、50ccの原付バイクと同じ扱いです。
当然ながら、お酒を飲んでの運転は違法行為であり、発覚すれば飲酒運転として厳しい罰則が科せられます。
道路交通法第65条第1項では、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定められており、平成19年の法改正によって、さらに飲酒運転への罰則が厳しくなりました。
そして、飲酒運転をさせた人への罰則も新設されています。
知ってる? 飲酒運転の種類
そもそも、飲酒運転には大きく分けて、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があります。

まず酒気帯び運転は、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上検出された場合を指しており、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
そして酒酔い運転は、まっすぐ歩けない、受け答えがおかしいなどアルコールの影響で正常な運転ができないと判断された場合で、5年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
また、道路交通法第65条第2項では「何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない」と定められており、お酒を飲んでいるのを知りながら運転手に車両を提供した人にも、運転者と同じ罰則が科せられます。
さらに、道路交通法第65条第3項では「何人も、第1項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない」とも定められているので要注意。運転者にお酒を提供したり、お酒を飲んでいるのを知りながら、その車両に同乗した場合も罪に問われます。

例えば運転者が酒気帯び運転の場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金、運転者が酒酔い運転の場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
このように、飲酒運転に対する罰則は非常に厳しいものになっており、今後、改正案が試行されて車両区分が「原付一種」から「特定小型原付」に変わっても、お酒を飲んで電動キックボードを運転すれば、飲酒運転の罪に問われることは変わりません。
その理由は、道路交通法第65条第1項に定められているように、酒気を帯びて車両等を運転することは禁じられているから。この「車両等」には、自転車などの軽車両も含まれるため、当然ながら電動キックボードも該当することになります。
法改正によって電動キックボードは免許不要で、ヘルメット着用の義務なく気軽に運転できるようになります。そのため、改正案が試行されるようになれば、公道を走行する電動キックボードは増加するでしょう。
その際は、道路の秩序を守るためにも、飲酒運転をはじめとする利用者のマナーが、益々問われることになりそうです。