いろいろな意味でちょうどいい!? 資質に磨きをかけたクロスオーバーモデル 3気筒エンジン搭載のトアイアンフ「タイガースポーツ660」の魅力とは

トライアンフの「タイガー」シリーズの中から、排気量660ccの水冷並列3気筒エンジンを搭載するクロスオーバーモデル「Tiger Sport 660(タイガースポーツ660)」(2026年型)に試乗しました。いったいどんな乗り味なのでしょうか。

「大」は「小」を兼ねない?

 世間の評価はさておき、自分(筆者:中村友彦)のツーリングにはこのくらいのバイクが合っているのかも……。今から2年ほど前、他のメディアの仕事でホンダ「NX400」を駆って約1500kmを走った私は、しみじみそう感じました。

 もちろん、ホンダには快適性や悪路走破性が味わえるアドベンチャーツアラーとして、「XL750トランザルプ」や「CRF1100Lアフリカツイン」が存在します。

 とはいえ車重や車格、価格、エンジンパワーをきっちり使えている感などを重視する私としては、その2台よりも「NX400」の方が魅力的と思えたのです。

 そんな個人的な視点で見るなら、今回試乗したトライアンフの2026年型「Tiger Sport 660(タイガースポーツ660)」は、「NX400」+αと表現したくなる、絶妙な資質を備えていました。

トライアンフ「Tiger Sport 660」(2026年型)に試乗する筆者(中村友彦)
トライアンフ「Tiger Sport 660」(2026年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 と言っても、2022年のデビュー直後にこのモデルを体験した私は、排気量660ccの並列3気筒シリーズの元祖となった「トライデント」と比較して、エンジンとハンドリングに何となく物足りなさを感じたのですが、2025年型で足まわりの刷新と電子デバイスの充実化を行い、2026年型で最高出力が14ps向上した「タイガースポーツ660」は、当初とは似て非なる特性を獲得していたのです。

 なお、2022~2025年型の「タイガースポーツ660」の価格が112万5000円から113万8000円だったのに対して、2026年型は117万9000円から119万9000円です。

 数万円の上昇をどう感じるかは人それぞれですが、近年の円安事情を考えれば多少の値上げは当然のことですし、今回の試乗で従来型とは異なる乗り味を実感した私は、価格上昇に異論を述べようとは思いませんでした。

シリーズの末弟ならではの魅力

 本題に入る前に大前提の話をしておくと、現在のトライアンフが日本で販売している「660」以外の「タイガー」シリーズは、「1200」が6機種、「900」が4機種、「800」が2機種で、「1200」と「900」は悪路走破性を意識したアドベンチャーツアラー、車名に「スポーツ」が付く「800」と「660」は舗装路重視のクロスオーバーモデルという位置づけです。

 そしてそれらの中で現在の私が最も好感を抱いているのが、兄貴分と比較するなら、車重が軽く、車格が小さく、価格が安く、エンジンパワーをきっちり使えている感が味わいやすい「タイガースポーツ660」なのです。

トライアンフ「Tiger Sport 660」(2026年型)
トライアンフ「Tiger Sport 660」(2026年型)

「タイガー」シリーズの代表的な機種の「最高出力/車重/軸間距離/価格(消費税10%込み)」を見れば、このモデルのフレンドリーさや敷居の低さが理解できるでしょう。

「タイガー1200GTプロ」……150ps/245kg/1560mm/243万5000円
「タイガー900GTプロ」……108ps/222kg/1556mm/193万5000円
「タイガースポーツ800」……115ps/214kg/1422mm/140万5000円
「タイガースポーツ660」……95ps/211kg/1418mm/117万9000円

「初代」とはほとんど別物

 2026年型の「タイガースポーツ660」でさまざまな場面を走って、私が最初に注目したのはパワーユニットです。

 従来型の最高出力・最大トルクが81ps/10250rpm、6.53kg-m/6250rpmだったのに対して、2026年型は95ps/11250rpm、6.93kg-m/8250rpmですから、当初は高回転高出力化による常用域の力不足を心配していたのですが、2026年型にそういった気配はなく、依然として開け始めから従順な特性が実感できて、それでいて高回転域の伸びはきっちり向上していました。

 何だか都合のいい話ですが、低回転域の扱いやすさを犠牲にすることなく、高回転域がパワフルになった理由は、吸排気系やカムシャフト、シリンダーヘッドなどの見直しがあって、そういった改善にはシリーズ第3弾として2024年からラインアップに加わった「デイトナ660」の開発で培った技術が活かされているようです。

排気量660ccの水冷並列3気筒DOHC4バルブエンジンを搭載
排気量660ccの水冷並列3気筒DOHC4バルブエンジンを搭載

 パワーユニットに続いて感心したのは車体、と言うか、車両全体のバランスの良さです。

 もっとも、私は足まわりの刷新と電子デバイスの充実化を行った2025年型を経験していないので、どの変更がどう作用しているかは断言できないのですが、2026年型は初代に感じた「ぶっきらぼうさ」が解消されて、スロットル操作で前後サスペンションが動かせますし、乗り心地が良好なのです。

 また、6軸IMUの導入によってABSとトラクションコントロールの精度が上がったこと、クイックシフターのおかげでギアチェンジがサクサク行えるようになったこと、高速巡航を容易にするクルーズコントロールを装備することなども、初代とは一線を画する魅力でしょう。

 いずれも4年目を迎えた「タイガースポーツ660」の出来栄えに、私は大いに感心することになりました。

近年の400~700ccクラス事情

 ブームと言うほどではないですが、近年の2輪の世界では、100万円前後で購入できる排気量400~700ccクラスのクロスオーバーモデル/アドベンチャーツアラーが徐々に増えています。

 現在の日本市場で「タイガースポーツ660」のライバルとしての資質を感じるモデルは、ホンダ「NX400」、「NC750X」、カワサキ「ヴェルシス650」、KTM「390アドベンチャーR」、ロイヤルエンフィールド「ヒマラヤ450」、ベネリ「TRK502X」などですが、近日中に登場する予定のスズキ「SV7GX」やカワサキ「KLE500」、予約受付中のBMW Motorrad「F 450 GS」なども、有力なライバルになり得るでしょう。

トライアンフ「Tiger Sport 660」(2026年型)に試乗する筆者(中村友彦)
トライアンフ「Tiger Sport 660」(2026年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 そしてそれらと比較した場合、「タイガースポーツ660」の大きなアドバンテージになるのは、クラス唯一の並列3気筒エンジンと、クラストップの最高出力です。

 もっとも、前述したライバル勢と予備軍も各車各様の魅力を備えているのですが、今回の試乗で「タイガースポーツ660」の資質に感心した私としては、例えば400~700ccのクロスオーバーモデル/アドベンチャーツアラーをイッキに体験できる試乗会が存在したら、このモデルが1番人気を獲得する可能性が大いにあると思います。

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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