要害の地に築かれた「四ツ山城跡」もまた、鎌倉殿ゆかりの地だった バイクで往く城跡巡り

2022年3月に埼玉県比企郡小川町の「おいでなせえ小川町駅前店」で御城印が発売された「四ツ山城跡」へ、ホンダ「スーパーカブ」で訪れました。ここは大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも存在感を放つ比企一族ゆかりの地でもあります。

一際そそり立つ山と細い尾根を巧みに利用した戦国時代の山城

 2022年3月、埼玉県比企郡小川町の「おいでなせえ小川町駅前店」で御城印が発売された「四ツ山城跡」へ、ホンダ「スーパーカブ」で訪れました。ここは大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも存在感を放つ比企一族ゆかりの地でもあります。

「四ツ山城跡」の入り口には、訪れたときは大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ゆかりの地を主張するのぼりもあって分かりやすかった。比企一族と武蔵武士の闘いの舞台となった地
「四ツ山城跡」の入り口には、訪れたときは大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ゆかりの地を主張するのぼりもあって分かりやすかった。比企一族と武蔵武士の闘いの舞台となった地

 この一帯は里山ののんびりとした風景に心が癒され、バイクで走るには気持ちが良いエリアです。城跡の麓に辿り着くと、地元の方に「バイクで来たの? 暑いね。気をつけてね」と温かい言葉をいただき、いざ登城です。

「四ツ山城跡」には現在、山頂に「四津山神社」が建立されており、入り口には古い石碑や鳥居、大きな石板の記念碑があります。奥へと歩みを進めると、やがて長い階段が見えてきました。脇には「犬走り跡」というものがあるようですが、これは後ほど歩いてみることにします。

 階段を登り切ると「腰郭(こしぐるわ)」に到着。郭間の高低差が激しい地形では、途中にこのような平場が作られるのだそうです。そこには不動明王が祀られており、周囲を見渡すと……「本郭(ほんくるわ)」へ直登する見上げんばかりの急な階段の「男道」と、各郭などを散策できる「女道」に分かれていました。

階段を登り「腰郭」と呼ばれる平場に出た。不動明王が祀られている。ここから「男道」(階段)か「女道」を経て本郭に到着する
階段を登り「腰郭」と呼ばれる平場に出た。不動明王が祀られている。ここから「男道」(階段)か「女道」を経て本郭に到着する

 まずは男道の階段を上ります。これがなかなかハード! 休憩しつつ振り返ると、眼下には美しい眺望が広がっています。ようやく登り切ると本郭に到着しました。そこには四ツ山城跡の解説板があり、その内容を要約すると次の通りです。

・周囲から一際高くそそり立つ山頂に立地し、北は荒川流域一帯、南は市野川流域を一望できる要害の地に築かれている。

・市野川筋には鎌倉街道上道(かみつみち)が走り、戦国時代は鉢形城(寄居町)と松山城(吉見町)の間にあって、交通路を押さえる重要な役割を果たしていたと考えられる。

・城郭は細長い尾根を巧みに利用し、四津山神社の建つ本郭と、北に連なる三つの主要な郭によって構成され、それぞれ土塁と堀切によって画されている。

・増田四郎重富の居城と伝えられている。

 この増田四郎重富という人物を少し調べると、埼玉県熊谷市にも居館を構えていたようで、そこにある文殊寺もこの人物により建立されたようです。

「四津山神社」が建立された本郭跡は、地面の草が綺麗に刈られ整備されていた
「四津山神社」が建立された本郭跡は、地面の草が綺麗に刈られ整備されていた

 1488年には扇谷上杉と山内上杉という両上杉氏同士の「高見原合戦」という激戦が、城の麓である比企郡小川町や寄居町今市付近で繰り広げられたようです。その発端は、かの太田道灌の暗殺によるものだとか。

 いずれにせよ、上杉氏同士の争いやその後、比企郡の統治と鎌倉街道筋を抑えた北条氏の防衛ネットワークに組み込まれるなど、様々な用途に使われていたのかもしれません。

 解説板によると、1590年の豊臣秀吉による関東平定の際は、鉢形城主北条氏邦の家人が籠ったものの、戦わずして鉢形城へ逃げたと言われているようです。

 最後に「犬走り」を歩いてみました。「武者走り」というのはかつて見たことがありますが、その違いを後日調べたところ、城を取り囲む土塁の内側に整えられた道や、土塁へ上がっていく坂などを「武者走り」と呼び、土塁の外側にある堀の間の道や、土塁から城の外へ下る坂のことを「犬走り」と呼ぶのだとか。

細い移動路の「犬走り」も残されていた。縄張り図を見るとこの先にも「腰郭」があるようだが、薮と化していたので引き返した
細い移動路の「犬走り」も残されていた。縄張り図を見るとこの先にも「腰郭」があるようだが、薮と化していたので引き返した

 道中、目の前をアオダイショウが横切り驚きましたが、それはお互い様というものでしょう。去っていくのを見送り、城を後にしました。

【画像】一際そそり立つ山の地形を利用した「四ツ山城跡」を見る(16枚)

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