EV普及は日常生活のアシから? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.150~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、EV普及に弾みをつけるために、クルマはバイクから学ぶべきだと言います。どういうことなのでしょうか?

EVの普及には、まず日常生活に役立つノリモノから

 日本の電気自動車市場が盛り上がらない……。「ホンダ・ホンダe」「日産アリア」「トヨタbZ4X」といった、主要メーカーが魅力的モデルをリリースしても、肝心のユーザーの心は踊らない。スバルはトヨタと兄弟車の「ソルテラ」を開発した。それでも日本のEVシェアはわずか1%なのである。

日常使いに割り切った軽の電気自動車がEV普及の弾みになるのでは?
日常使いに割り切った軽の電気自動車がEV普及の弾みになるのでは?

 ただし、僕(筆者:木下隆之)には光明が見える(EV普及が光明かどうかは別として……)。リーフで知見を蓄積してきた日産と、世界で初めてEVの量産を開始した三菱が共同で、新型軽自動車を発表したのだ。その名も「eKクロスEV」(三菱)と「サクラ」(日産)である。

 これでEV普及に弾みがつくのでは、と思っている。というのも、この2台は軽自動車としての役割を理解した上で、シティコミューターとして割り切っているからだ。一充電走行距離はWLTCモードで180kmだが、実際にはせいぜい150km前後だろう。

 搭載するバッテリーは20kWhで、急速充電にも対応するが、30kWの速度でしか電力を取り込めない。急速充電を繰り返しながら長旅ができなくはなけれど、自宅の普通充電を繰り返しての短距離移動に徹底しているのだ。

 日産の調べによると、国民の53%が1日の移動距離は30km以下、94%が180km未満で過ごしているという。だから、20kWhのバッテリー容量で十分ということだ。「週末に満充電にするだけで1週間生活できますよ」と推奨している。狭い日本なのにEVでロングドライブを追求することに無理があるのだ。そんな「eKクロスEV」と「サクラ」には期待している。

 という意味で言えば、クルマもバイクから学ぶ必要がある。航続可能距離が長いに越したことはないが、無理矢理足の長さにこだわるから「インフラが整ってない」とか「そもそも脆弱な発電事情なのに」とか突っ込まれるのだ。

 現段階では、電気モノはまず短距離移動に設定すべし……と思う。

【画像】いま注目の軽EVを見る(5枚)

画像ギャラリー

Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

最新記事