のんびり走るだけじゃない! 攻めの走りにも対応するハーレーの新ジャンル「ローライダーS」試乗
ハーレー・ダビッドソン「Low Rider S」は、従来のブランドイメージとは少し異なるキャラクターとなっています。ソロシートが備わり、見るからに強靭な心臓部、武装された足まわり……アグレッシブにワインディングを駆け抜けることができる新ジャンル「パフォーマンスクルーザー」です。
ハーレーの新境地「パフォーマンスクルーザー」!!
ハーレー・ダビッドソンのクルーザーモデルでも、よりアグレッシブに、スポーティに走りたい……そんな声に応えて誕生したのが「Low Rider S(ローライダー・エス)」です。

初代「FXDLS ローライダーS」は2016年に登場しました。ベースとなる「FXDL ローライダー」のエンジンが排気量1584ccであったのに対し、当時最大となる1801ccの「スクリーミンイーグル・ツインカム110」エンジンを搭載。ビキニカウルを備え、シートをソロ化するなどスタイルもまったく新しいものとしていました。
ゆったりノンビリ走るだけでは物足りない、そんな要望に対応した「ローライダーS」は、「パフォーマンスクルーザー」という新カテゴリーを牽引し、いまやラインナップに欠かせない人気モデルとなっています。
2リッターに迫る、超弩級エンジン
最新型となる2022年モデルの「FXLRS ローライダーS」は、モノショック化したダブルクレードルフレームに、ハーレー史上最大となる排気量1923cc「ミルウォーキーエイト117」エンジンを搭載。初代は2バルブ・ツインカムだったOHV空冷Vツインは、2020年式の復活で4バルブ・ワンカムとなり排気量は1868ccでしたが、ついに2000ccに迫る超弩級エンジンにスケールアップ。最大トルクを155Nmから168Nmへと大幅に増強しています。

シート高は710mmと低く、身長175cmの筆者が跨ると両足を下ろしてもカカトまでベッタリ地面に接地します。4インチのライザーで持ち上げられたハンドルバーのグリップ位置は高く、上半身がワイルドに起き上がるライディングポジションになります。ステップもライダー寄りの近い位置にあり、ヒザが余裕で曲がります。
右足のスネの前には、エルボー型に90度折れ曲がって前を向くハイフローエアクリーナーを装備、2リッター近いエンジンに、よりいっそうの存在感を与えています。なお、車体重量は308kgで、排気量アップに伴う増量はありません。
余裕のビッグトルクが味わえる
キーフォブを持っていれば、電源を入れることができるキーレスイグニッションを採用するのは従来どおり。ハンドル右のスイッチをONにすれば、メーターディスプレイが起動し、スターターボタンを押せば、Vツインエンジンが元気良く目覚めます。

発進時の駆動力は相変わらず力強く、走り出してすぐにシフトアップしなければ、ギクシャクするほどに低速トルクが強大で、加速も高いギアのまま。トップギア6速での100km/h巡航は、わずか2200rpmでこなします。
高回転へ引っ張り上げて、怒涛のトルクを堪能するのも良いのですが、高回転と言っても3000から4000rpmで充分。2000rpm前後を使ってゆったり流すのも心地よく、ハーレーらしい大排気量Vツインの持ち味をそのままに、パワフルになっているのも嬉しい限りです。
足まわりも充実!
初代がそうであったように、そのスタイリングは全身をブラックアウトした黒ずくめの車体としています。フロントフォークはインナーチューブ径43mmの倒立式にグレードアップされ、19インチのフロントホイールは軽量・高剛性なアルミ鋳造製。

レイク角28度と、クルーザーにしては立ち気味のキャスターアングルで、手応えを伴いつつもハンドリングは比較的軽快で、ビッグトルクを生かした豪快なコーナリングが味わえます。
フロントフォーク同様、シート下に隠れるリアショックもまた、通常のソフテイルモデルより12.7mm長い56mmのストローク量を確保。初期荷重からしなやかに動き、路面追従性に優れる味付けであるとともに、ストロークの奥では踏ん張りがしっかりと効き、車体を落ち着かせています。
2022年式は2色設定、ますます人気!!
車体色はベーシックなビビッドブラック(288万4200円)に加え、新色のガンシップグレー(292万9300円)も設定されました。
HDJ正規ディーラーでは人気モデルのひとつで問い合わせが多いと聞きますから、気になる人は、迷っている時間はなさそうです。
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。