いまさらマニュアル車が人気だって!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.157~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、いまになってクルマのマニュアル車が人気なのは、バイク同様操る楽しみにあるのでは、と言います。どういうことなのでしょうか?
ATとMT、ホンダはバイクにDCT、はたして……
自動車の世界で最近、マニュアルトランスミッション(MT)車が人気である。現行型のマツダ・ロードスターは2019年デビューであり、すでに7年が経過してモデル末期、一般的には販売は低迷しているはずなのに、デビュー当初は400台前後で推移していた販売台数が、このところ1000台を超えている。その8割がマニュアル車なのだ。

今年多くの話題をさらっている日産フェアレディZにも、6速マニュアルが採用されている。ホンダ・シビックも同様に6速マニュアル仕様がラインナップされており、販売も好調だ。
クルマを操ることの楽しみが色濃く残されている、マニュアルモデル復活の気配だ。もっとも、時代がマニュアルモデルに向かっているわけではない。折りにつけ話題をさらっているEVの台頭により、クルマが白物家電に成り下がるのかもしれない、という寂しさへの反動であろう。
マニュアル車は、エンストの心配もあるし、いちいちクラッチペダルを踏む必要がある。シフトレバーを操作する手も忙しい。右足の操作だけで発進も停止もこなすオートマチック(AT)の方が楽であることに疑いはない。だが、楽なことよりも操ることを楽みたい、というユーザーが増殖しているのは、もうマニュアルには乗れなくなってしまうのではないかという危惧が根底にある。
EVになれば、発進はアクセル操作だけで済むし、シフトチェンジも無い。加速度に抑揚も無ければ、サウンドも、バイブレーションも無い。まさに、クルマの白物家電化なのだ。今になってマニュアル車に人気が集まっているのは、クルマが楽しみの対象であって欲しいという希望である。
一方で、ここ数年のバイクブーム鎮火の気配も無い。バイクの販売は好調だし、二輪免許取得のため教習所も盛況だという。
コロナ禍によって密を嫌う、そんな意識がバイクに向かっている。業務体系のオンライン化によって免許取得の時間が得られる。外食や旅行が激減した分だけ資金的な余裕も増える……。
現在のバイクブームの理由は様々だが、不便よりも楽しさを優先するクルマのマニュアル化の傾向と、操る喜びが色濃いバイク人気は無関係ではないだろう。

ホンダはDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)という機構で「レブル1100」や「NT1100」にクラッチレバーの無いMTを組み込み、イージーなライディングを提案している。果たして……。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。






