気軽に交換できない!? 自転車タイヤの異なるサイズ表記が意外とややこしい
走り心地を変えるために自転車のタイヤを交換しようと思っても、そこには「規格違い」というハードルが待ち構えています。意外とややこしい自転車タイヤのサイズについて紹介します。
開発国の思惑が交錯する、タイヤの規格
自転車は車体構造がシンプルだからこそ、構成パーツがその性能に大きなの影響を与えます。なかでも唯一地面に接することになるタイヤは、走行性能・制動能力に直結する重要なパーツのひとつです。

タイヤは幅が太くなるほど、タイヤ内にキープできる空気の量が多くなり、より衝撃を吸収し、乗り心地が良くなります。ただし、その分地面と接する面積が多くなるので抵抗が増し、スピードや加速性能が低下します。逆に、幅が細くなるほど接地面が少なくなるのでスピードや加速性能は上がりますが、乗り心地は悪くなっていきます。
そう聞いて、「じゃあ日ごろ乗っている愛車の乗り心地を変えてみよう」と、タイヤの交換を考えるかもしれませんが、そう簡単にはいかないのが自転車タイヤの悩ましいところ……。タイヤを装着する車輪(リム)にはいくつかの異なる規格が存在しており、服を着替えるように簡単にタイヤを変えることができないのが実情です。
まず、世界の約80%で使われているタイヤとリムの形状規格が、イギリス発祥となる「WO(ワイヤードオン)」(=Wired On)です。タイヤの横には「26×1-3/8」など、整数と分数でサイズが表示されており、単位はインチになります。「26」が「タイヤの外径(外側の端から端までの直径)」を表し、「1-3/8」が「タイヤ幅」を表します。一般的な自転車や電動アシスト自転車など、多くの自転車で使われています。
そして、同じ「WO」規格でも「700×25C」など、ミリ単位で表記される種類もあります。こちらは自転車競技の世界から誕生した表記形式で、ロードバイクやクロスバイクなど、幅が細い種類のタイヤで使われることが多いです。「700」が「タイヤの外径」で、「25」が「タイヤ幅」、「C」が対応するリムを記号で表しています。
なぜ同じ「WO」で表記が違うかというと、メートル法を使っていたフランス人がイギリス人に反抗して独自に作ったから、と言われています。後世の人間からすると、はた迷惑なプライドのぶつかり合いなのです……。
この時点ですでに分かりにくくなっているのですが、ここにアメリカ発祥の「HE(フックドエッジ)」(=Hooked Edge)規格が登場します。

単位はイギリスと同じインチですが、サイズ表記は「26×1.75」など、整数と少数です。主にマウンテンバイクや、安定感を求める小径の子供乗せ用自転車など、幅が太いタイヤで使われることが多い規格で、「26」が「タイヤの外径」、「1.75」が「タイヤ幅」を表します。
少数を分数に計算するのは面倒だけど何とか同じ太さのタイヤを見つけられるかと思いきや、「WO」と「HE」では、そもそもタイヤとリムの形状が異なるので互換性がありません。アメリカの独立精神が規格にも反映されているようです……。
そんな独自表記を統一するために登場したのが、「ETRTO(エトルト)」(=European Tyre and Rim Technical Organisation)という公的機関が生み出した世界標準規格です。
現在では流通しているタイヤのほとんどにこの形式で表記されています。単位はミリで「28-622」などと表示されます。「28」はタイヤ幅を表していますが、「622」はタイヤの外径ではなく、「タイヤの内径=リムの外径」を表している点です。ここは気をつけなければいけないところです。
「なぜここで測る場所を変える!?」と、思わずツッコみたくなりますが、同じ20インチのタイヤでも太さの違いによりリムのサイズ自体が変わってくることがあるので、互換性がひと目で分かるようにと考案した表記方法だと言えます。
基本的に自転車タイヤの互換性を知るには「ETRTO」表記をチェックすれば間違いありません。ところが、「ETRTO」は登場して日が浅く、タイヤ自体には「ETRTO」のサイズ表記があっても、カタログや通販サイトなどでは旧来の「WO」や「HE」の表示で販売されていることが多く、実際に「ETRTO」サイズでタイヤを探すのは、なかなか困難です。
サイズ表記が統一され、気軽にタイヤを交換できる日が来ることを待ち望みます……。





