【MotoGP第20戦バレンシアGP】Moto2小椋藍選手が可能性に挑んだ最終戦 ランキング2位を獲得して2022年シーズンを締めくくる
2022年11月6日、MotoGP第20戦バレンシアGPの決勝レースが、スペインのサーキット・リカルド・トルモで行なわれ、Moto2クラスに参戦する小椋藍選手(イデミツ・ホンダ・チームアジア)は転倒リタイアとなり、2022年シーズンのチャンピオンシップをランキング2位で終えました。
Moto2クラス参戦2年目、ランキング2位を獲得して来シーズンへ
2022年11月6日に開催されたMotoGP第20戦バレンシアGPは、20戦にわたって争われる2022年シーズンの最終戦です。Moto2クラスにフル参戦する小椋藍選手(イデミツ・ホンダ・チームアジア)は、第19戦マレーシアGPを終えてランキング2番手でこの最終戦を迎えました。ランキングトップはアウグスト・フェルナンデス選手(レッドブルKTMアジョ)で小椋選手との差は9.5ポイント。小椋選手のチャンピオン獲得の可能性は十分にある状況でした。

昨年、Moto2クラスにステップアップした小椋選手は、2021年のバレンシアGPを怪我により欠場しており、今大会がMoto2クラスにおける初のバレンシアGPのレースウイーク。とはいえ、Moto3クラスでの参戦経験もあり、冬の間にMoto2マシンでテストを実施しています。
小椋選手は総合11番手で初日をスタートし、予選では5番手を獲得します。対するフェルナンデス選手は初日総合2番手。予選では1列目となる3番手を獲得しており、ラップタイムとしてもややフェルナンデス選手に分があるかたちで決勝レースを迎えます。
予選後に「全開で行くしかない」と語っていた小椋選手は、その言葉どおり、2列目からスタートして1周目にフェルナンデス選手をかわし、4番手に浮上。翌周には前の2人が交錯した間を縫って2番手にポジションを上げます。フェルナンデス選手は4番手。

トップを目指し、小椋選手は前を走るトニー・アルボリーノ選手(エルフ・マークVDSレーシングチーム)に迫ります。しかし同時に、小椋選手の後ろにはペドロ・アコスタ選手(レッドブルKTMアジョ)が近づいていました。
8周目には小椋選手とアコスタ選手が激しいバトルを展開します。何度か順位を入れ替え、2番手を奪還してゆるやかに左に曲がる7コーナーを抜けて8コーナーに入っていったその時、フロントタイヤが切れ込み、転倒。リタイアとなりました。
「(ブレーキの)握り過ぎですね。あまりにも一瞬の出来事で、何もできずに転んじゃいました」
レース後、小椋選手はそう淡々と転倒の状況を振り返りました。

「もう少し後ろにグループがいてくれたら何かできたかなと思うんですけど、4台しかいなかったので。ポイント数を考えると優勝しかありませんでした。でも、今回はアコスタなどの周りに比べてペースがあまりなかったので、ちょっと頑張り過ぎちゃったのかなと思います。
無理できずに後ろでゴールするくらいなら、無理して転んだ方がと思っていたんです。だから悪いレースだったわけじゃない。ミスが良いというわけでもないですけど。
それだけ余裕がない状態でレースを迎えてしまったのが、最初の問題なんですけどね。もっとスピードに余裕があれば、うまくマネジメントできたかなと思います」
そして、今季を振り返って「シーズンとしては良かったですけどね。マレーシアの転倒はまだいいとして、ここでの転倒はちょっと弱かったかなというのがあります」と言います。
「結局は自分のミスから生まれたものですけど……」と言ってから言葉を切り、「負けたなあ、って感じですね……」と、取材をしていても普段は感情的な小椋選手を見ることはほとんどありませんが、この話を聞いているときに初めて、悔しさをにじませていました。

Moto2クラス参戦2年目の小椋選手は、2022年シーズンで3勝を挙げ、2位と3位をそれぞれ2度獲得。この3勝の中には、ロードレース世界選手権での初優勝、そして日本人ライダーとして16年ぶりに日本GPで飾った優勝も含まれています。
そして最終戦までタイトル争いを展開し、ランキング2位を獲得しました。堂々たる結果です。
小椋選手は2023年もMoto2クラスに継続参戦します。シーズンを重ねるごとに強さを増しています。悔しさを力に、2023年はさらに強くなった小椋選手を見ることができるでしょう。
■Moto2クラスとは……
Moto2クラスはトライアンフ「ストリートトリプルRS」の3気筒765ccエンジンをベースに開発されたオフィシャルエンジンと、シャシーコンストラクターが製作したオリジナルシャシーを組み合わせたマシンによって争われる。2021年8月、トライアンフによるエンジン供給は2024年まで延長された。タイヤはダンロップのワンメイク。クラスとしてはMotoGPクラスとMoto3クラスの中間に位置する。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。