自転車の「すり抜け」要注意!! お互い様の精神で安全第一
自転車が交差点などで停止しているクルマの左側を走り抜ける「すり抜け」は、機動力の高い乗り物ならではの特権と言えるかもしれません。しかし、その便利さと同時に事故のリスクも高まります。
その「すり抜け」に、意味はあるのか?
ここ数年、自転車事故を減らすための取り組みが盛んです。テレビなど各メディアでも頻繁に注意喚起が見られ、自転車が守るべきルールや、自転車を対象とした違反が多くの人に知られるようになってきました。しかし、それでも自転車事故がなかなか減らないのが実情です。自転車が車道を走行する際に事故を起こしやすい、もしくは巻き込まれやすい「すり抜け」について紹介します。

「すり抜け」については様々な捉え方がありますが、ここでは信号や渋滞などで停止している、もしくはそれに近い状態のクルマの左側を通り抜けるシチュエーションを前提とします。
まず、現在の日本において、自転車の「すり抜け」について明確な定義はなく、ただちに違反行為になるわけではありません。ただし、「すり抜け」をする際に関連する行為が法令違反になる可能性があり、その場合は罰せられるという、かなり「グレー」な状況です。
機動力の高さを活かして、クルマの左側を素早く抜けていくことは自転車の特権と言えるかもしれません。しかし、基本的には「すり抜け」には多くの危険がはらんでいることを知っておく必要があります。
ほぼ停まっている車列が長く伸びていて、自転車が通るスペースが十分に確保されていても、よほどの余裕がない限りはやめておいた方が安心です。仮に問題なく通れると思っても、しっかり速度を落として、危険を察知したら回避・停止できる心構えをしておくべきです。
「すり抜け」の際に発生する事故のパターンとして、まず「車の間から現れる歩行者」が考えられます。クルマの流れが完全に止まっていると判断した歩行者は、遠くの横断歩道を利用せず、クルマの間を縫って車道を横断してしまうことがあります。それは「すり抜け」している自転車から見ると死角から急に飛び出してくる状況となり、衝突の危険性が高まります。
また「いきなり開くクルマのドア」にも注意が必要です。「まさかこんな所で降りてこないだろう」と思える状況でも、意外と降りてくる人は多いものです。ハザードを点滅しているクルマには警戒することもできるかもしれませんが、路上で車外に出る際にハザードを出す人も少ないでしょう。
もっとも気をつけたいのが「左折するクルマの巻き込み」です。これは自転車に多く見られるシーンで、交差点で左折するクルマの左側に突っ込んでいくのは自殺行為としか言えません。「クルマが気付いて停まるだろう」という考えはあまりに危険です。

普段クルマの運転をしない人はなかなか意識することが難しいと思いますが、クルマのサイドミラー(ドアミラー)には死角があり、後方から迫って来る自転車やバイクに気づけないこともあります。そもそも、交差点で方向を変えようとしているクルマに対して、自分勝手な思惑で無理を通すのは完全なる「妨害運転」です。複数の法令で違反となり、大怪我だけでは済まない事故を引き起こすので、最低限のルールとして知っておくべきでしょう。
また、交差点の赤信号の先頭で、完全に停止しているクルマが左のウインカーを点滅し、その左側に停止している自分が直進する場合は、クルマの横から少し前に出て、ドライバーの視界に入る位置で停止することで、お互いの存在を認識することができます。
真横もしくは後方の中途半端な位置で停止していると、ミラーの死角もあり、自転車の存在に気が付いてもどう動くかがはっきりわからず、ドライバーは不安になってしまいます。自転車がやや前方に出ることで、信号が青になったらスムーズに動くことができます。
それにしても、自転車やバイクがクルマの横をすり抜ける姿に、不快感や苛立ちを覚えるドライバーも確実に存在するので、通り過ぎる際はマナーとして、軽く会釈すると良いでしょう。
ありがちな「右直事故」、正面もヤバい!!
自分が交差点を直進することに対して「反対車線から右折してくる車」との、いわゆる「右直事故」にも最大限の注意が必要です。交差点ではない場所でも、反対車線を走っていたクルマがこちら側の道を横切って店の駐車場などに入ろうとすることもあり、この手の事故は起こりやすくなっています。
クルマの流れがほぼ止まっている状況で、その横を走る「すり抜け」の際に考えられる事故のパターンをいくつか挙げましたが、事故が起きなければ良いというわけではありません。自転車の「すり抜け」という行為自体が、同じ道路を利用するドライバーや、ときにバイクに乗るライダーにとっても、プレッシャーやストレスになっていることを知っておくべきでしょう。
無理な「すり抜け」で移動時間を圧縮できるとは限りません。道路を走る際は、お互いが気持ち良く走れる状況作りが大切だと考えましょう。