3時間で1.5周しか周れない!? 過酷すぎるハードエンデューロってどんなレース?レーシングライダー濱原颯道選手のレースレポート

国内外で活躍するレーシングライダーの濱原颯道選手が、全日本ハードエンデューロ選手権(Gnet)の開幕戦に参戦!そのレポートです。

求められるのは精神力とバイクでの走破力

 こんにちは!モータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道(そーどー)です。今回は僕が趣味で乗っているバイクのお話をします!

 先日、2023年3月12日に、全日本ハードエンデューロ選手権(Gnet)というレースに参戦してきました。シリーズの開幕戦にあたります。

全日本ハードエンデューロ選手権の開幕戦に参戦する濱原颯道選手
全日本ハードエンデューロ選手権の開幕戦に参戦する濱原颯道選手

 ちなみに「ハードエンデューロって何?」というところから、ざっくりと説明しますね!

 オフロードの代表的なカテゴリであるモトクロスに比べ、自然に近いコースを走るのがエンデューロという競技です。

 その中でもより難易度が高く、走破力が求められるのがハードエンデューロレース。モトクロスなどに比べて競技の時間が長く、一斉に走る台数も多いのが特徴で、長い坂やロックセクション、まれに人工的に作られたセクションなども走ります。

 今回僕が参戦したGnetは、国内のハードエンデューロレースである「cross mission」という大会とのコラボレースで、砕石場を会場に行われました。

 ちなみに、このcross missionというのは、レッドブルが主催するハードエンデューロ世界選手権の1戦で、「宇宙一過酷なレース」と言われている「エルツェベルグロデオ」というレースがあるのですが、それを日本でもやりたいと、自身もエンデューロライダーとして活躍する石戸谷蓮選手が、全国の砕石場に掛け合って開催できることになったハードエンデューロの大会です。

全日本ハードエンデューロ選手権(Gnet)開幕戦の会場となった採石場
全日本ハードエンデューロ選手権(Gnet)開幕戦の会場となった採石場

 実はシーズンオフの間にちょっと膝を痛めてしまっていて、4週間ぶりにバイクに乗るのと、新車を買ってまだ2回しか乗っていないバイクで出場といった状況だったので、僕自身は良い結果というよりは、「しっかりと走り切ろう」という目的での参戦でした。

 Gnetは全日本格式ではあるものの、ファンライドの人から本気の人まで幅広く参戦可能で、「敵はコース」、「どうにか1周したい」、「ポイントが欲しい」、「年間ランキングでひと桁に入りたい」など、色々な目的を持つ選手がエントリーしています。

 先に結果を報告すると、僕は22位でゴールしました。ちなみに今回の参加台数は206台、レースの時間は3時間で1周出来た選手はなんと28台!というように、凄く過酷なレースです。

 グリッドは、エントリーと料金の振込み順。お金を一刻も早く振り込んだ人が前の方に並べるという、シンプルなグリッドの決め方です(笑)

 ちなみに、いち早く振り込みが反映されるようにと、主催者が使用している銀行と同じ銀行の口座を作る人もいる程、みんな本気です。

全日本ハードエンデューロ選手権(Gnet)開幕戦のスタートの様子
全日本ハードエンデューロ選手権(Gnet)開幕戦のスタートの様子

 レースは10台ずつが一斉にスタートする方式で、僕は25番手だったので3列目からのスタートだったはずが、友達に「一緒に最後尾からスタートしようよ」と誘われて最後列に回ることに。そのため、200番当たりからスタートしました。これも、ハードエンデューロの楽しみ方のひとつです。

 ハードエンデューロのコースはとにかく過酷です。何か所かのセクションをクリアして行き、ゴールを目指すのですが最初のセクションで3時間を過ごす人もなかにはいます。

 あと、後方からスタートすると大渋滞に巻き込まれ、上手い人は誰にも迷惑をかけずにスルスルとクリアする人もいれば、ミスをしてしまう人も。実力がある人は知名度もあるので、渋滞などに遭遇しても「どうぞ先に行ってください!」みたいな感じで、道を譲ってもらえる事もあるような、和気あいあいと楽しめるレースでもあります。

 僕はハードエンデューロの世界では知名度があるわけでもないので、ゆっくりと確実にセクションをクリアしていきます。なぜなら今回のコースは岩や石がゴロゴロしていて、転倒などをするとマシンを壊してしまう可能性があるからです。

 長いヒルクライムセクションなどもありますますが、ミスをすると下まで降りてやり直さないといけないので、やり直したくない僕は、最後はバイクを押したり担いだりしてクリアします。

ハードエンデューロの採点ルールとは?

 順位の付け方は、コース1周の中間ポイントで一旦集計をします。そこで「今35位くらいですよ」と言われたので、「200位くらいからスタートしたのに結構前の方まで来たなー」と思い、そこからは結構集中して走りました。

 セクションで苦戦しているライダーがいると、後続のライダーはクリアするまで待つしかありません。しかし選手同士の助け合いはルール上可能なので、前の選手を救助して先に進んでもらったりすると結果的に自分もより多く周回ができるので、これもハードエンデューロならではの競技性だと思います。

レース中だけど他の選手とピース写真を撮ったりする和気あいあいとした雰囲気が魅力
レース中だけど他の選手とピース写真を撮ったりする和気あいあいとした雰囲気が魅力

 その後も色んなセクションをずんどこ進んで行き、残り時間30分のところで、目標だった1周をする事ができました。ハードエンデューロ用語でこの事を、タマイチ(魂の1周の意)と呼びます。

 無事1周はしましたが、まだ時間は残っているので再び中間チェックポイントを目指します。この時、他にふたりの選手とバトルをしていました。

 そして3時間内に中間ポイントに到着したので、僕は実質1.5周しできた事になります。3時間も走って1.5周って、普通の人からしたら「どんなレースよ」と思われるかもしれませんが、優勝した選手ですら2.5周と、正直とんでもない過酷さです。

 そんな感じで僕の今年の初レースは、無事に終わりました。トップの選手は凄い方ばかりですが、とてもみんなフレンドリーで気さくな方が多いので、僕も本当に優しく接してもらっています。

過酷なセクションのクリアに挑む参加者達
過酷なセクションのクリアに挑む参加者達

 ロードレーサーのトレーニングマシンとしては250ccのロードバイク、モトクロスにモタード、トライアルにダートトラックなど様々な方法がありますが、僕はそれらのバイクはひと通り乗ってきて、今はハードエンデューロという競技にハマっています。

 ちなみに僕は、モトクロスなどを乗りまくっていた時も「ロードレースのために」ではなく、「モトクロスが上手くなりたい」という気持ちで乗っていました。

 スライドコントロールやフィジカルトレーニングと言った目的で色んなバイクに乗るのもいいと思いますが、僕は「何かを上手くなる方法は全てに通じる」と思っているので、またちょっと意味合いが違うかもしれません。

 初めてレースの事を記事にしたので伝えたい事がなんだか自分でもわからなくなってきましたが、こんな感じで今後も書いていこうと思います。

 最後まで読んで頂きありがとうございました!

原 颯道 I AM YOUR RIDER

【画像】全日本ハードエンデューロ選手権(Gnet)の開幕戦を楽しむ濱原颯道選手を画像で見る

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Writer: 濱原颯道(プロライダー)

全日本ロードレースでは国内2位、全日本スーパーモトでは国内3位の経験があり、他にもオフロードやストリートまでバイクならなんでも好きな男。普段は個人レッスンにマシンセットアップ、テストライダーなどと色々な活動をしている。バイクに関することならビギナーから国際ライダーまで、多くの人から相談を受けたりもしている。

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