まるで小さな町!? ヘレス・サーキットのMotoGPパドックをぶら歩き
2023年シーズンのMotoGP第4戦スペインGPで筆者(伊藤英里)が訪れたへレス・サーキットのパドックは、これまでにない経験でした。停まっているトレーラー、立ち並ぶホスピタリティはどれも見たことがあるもの。けれど、レイアウトが変わるだけで、その印象は違ったものでした。
パドックに注目。サーキット同様レイアウトに違いがある
サーキットには様々なレイアウトがあるように、パドックにもいろいろな形がある、ということをヘレスで知りました。「ヘレス(Jerez)」というのは、私(筆者:伊藤英里)がMotoGP取材のために訪れた、スペインGPの開催地であるスペイン南西部のヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトです。

サーキットのパドックのレイアウトは一様ではないけれど、MotoGPレースウイークのパドックを構成するトレーラーやホスピタリティは大きく変わりません。だからパドックに合わせてレイアウトを変えていくのは当然なのですが、初めて訪れた私にとって、ヘレスのMotoGPパドックはこれまでにない風景が広がっていました。
ということで、全貌を暴くべく、端から端まで歩いてみることにしました。
ヘレス・サーキットのパドックは、1コーナー側を底辺としたL字型をしています。つまり、1コーナー側のパドックは広く、最終コーナー側に行くほど狭くなるわけです。この特徴により、1コーナー側から歩き出してすぐに分かれ道になりました。右に進むとホスピタリティがずらりと並び、真っ直ぐに進むと、左手に常設のピットとチームのトレーラーが列をなし、右手はサプライヤーなどのトレーラーが停まっているエリアになります。

さらに直進すると、左手のピットはMotoGPクラスからMoto2、Moto3クラスのものになっていきます。最終コーナー側に行くほどスペースが狭くなるので、だんだん右手のトレーラーは少なくなり、最終コーナー側のいちばん端では、金網ごしに最終コーナー手前のコースを見ることができます。
じつは私にとって、ホスピタリティエリアに進む分かれ道が、ヘレスでのちょっとした鬼門でした。
このエリアがホスピタリティだけが集められているからなのか、方向感覚がどうにもおかしくなってしまい、数日間訪れていたにもかかわらず、何度も「どうやってメディアセンターに行くんだっけ……?」と思ったほどです。
私は方向音痴ではないはずなのですが……(断じて)。

ある日の夜には、駐車場へ向かうのに出入口がわからなくなって右往左往してしまい、それを認めた警備スタッフが「Salida(出口)」と、指差しで教えてくれました。そのくらい、レイアウトが「これまで経験したことがない感じ」だったのです。
ちなみに「ホスピタリティ」というのは、チームスタッフやライダーが食事をしたり、ミーティングやメディア向けの囲み取材を行なったり、ゲストをもてなしたりする場所のことです。移動式の建物で、MotoGPが終われば次のレースへと移動していきます。ただ、一見すると移動するとは思えないほどの大きさです。
ヘレス・サーキットのホスピタリティエリアにはそんな移動式建物がいくつも並んでいて、土曜日の夜には音楽が大音量で流れてにぎやかなところもありました。サーキットによってはホスピタリティエリアが別の場所へ分かれていますが、ヘレスのように集まっていると、まるで小さな町のようでした。

まだまだいろんな形のパドックがあり、そしていろいろなMotoGPのパドックがある……。最後まで不思議な方向感覚のまま終えたヘレス・サーキットに、そう感じたのでした。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。