【MotoE第4戦オランダ大会】優勝争いはランキングトップと2番手が接戦を展開 マッテオ・フェラーリ選手が2勝を飾る

電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』第4戦オランダ大会が2023年6月23日と24日にオランダのTT・サーキット・アッセンで行なわれ、レース1、レース2ともにマッテオ・フェラーリ選手が優勝しました。

短い周回数で後方を引き離し、トップを争う展開に

 電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)は、電動バイクによって争われるチャンピオンシップです。2023年シーズンからはドゥカティがマシンを供給するメーカーとなり、全18人のライダーが専用に開発された「V21L」という電動レーサーを走らせます。2023年シーズンのMotoEはMotoGPのヨーロッパ開催グランプリに併催で1大会2レース開催、全8戦16レースが予定されています。今回のオランダ大会は、早くもシーズン前半戦締めくくりのレースとなりました。

MotoE第4戦オランダ大会で優勝争いを演じたマッテオ・フェラーリ選手(#11)とジョルディ・トーレス選手(#81)
MotoE第4戦オランダ大会で優勝争いを演じたマッテオ・フェラーリ選手(#11)とジョルディ・トーレス選手(#81)

 MotoEのためにドゥカティによって開発された電動レーサー「V21L」となった今季は、毎戦でレコードタイムが更新されています。オランダ大会でも、ジョルディ・トーレス選手が1分40秒281を記録し、オールタイムラップ・レコードを更新しました。

 単気筒250ccエンジンのマシンで争われるMoto3クラスのオールタイムラップ・レコードが1分41秒181。MotoEマシンの車格は1000ccのそれに近いものですが、レコードタイムとしてはMoto3よりも約1秒速くなっています。ちなみに、どのサーキットでもMoto3を上回るレコードタイムが記録されるようになったのは、今季に入ってから。つまり、全体的にラップタイムが上がっているわけです。

オランダ大会、2レースを制したフェラーリ選手
オランダ大会、2レースを制したフェラーリ選手

 オランダ大会は、2レースともにマッテオ・フェラーリ選手とジョルディ・トーレス選手による優勝争いとなりました。

 MotoEのレースは周回数が10周以下と短いのですが、その短い周回数で、トップ数人が後方を引き離し、優勝争い、表彰台争いを展開するのが今季のレースの展開でした。そんな中で、第4戦まで常に優勝争いに絡んでいるのが、フェラーリ選手とトーレス選手なのです。

 フェラーリ選手はMotoE初年度の2019年チャンピオン、トーレス選手は2020年、2021年チャンピオン。MotoEでの豊富な経験を持つライダーです。ポイントランキングとしてもトーレス選手がトップ、フェラーリ選手が2番手につけています。

 オランダ大会の決勝レースは各7周で行なわれ、レース1は1周目にフェラーリ選手がトップに立ち、トーレス選手がそれを追いかける展開となりました。しかしレース中盤のタイヤのたれによりトーレス選手は2位を獲得することに集中し、フェラーリ選手が優勝、トーレス選手が2位でゴールしました。3位は今季からMotoEに参戦しているランディ・クルメナッハ選手が獲得しています。

レース2ではレース中盤にフェラーリ選手(#11)がトーレス選手(#81)をパスしてトップに立つ展開に
レース2ではレース中盤にフェラーリ選手(#11)がトーレス選手(#81)をパスしてトップに立つ展開に

 レース2はトーレス選手がトップに立ち、フェラーリ選手は3番手という1周目で始まりました。4周目にトーレス選手とフェラーリ選手が3番手以下とのギャップを広げ始め、フェラーリ選手がトーレス選手をパス。接戦は続きましたがこれが勝負を決め、フェラーリ選手がオランダ大会で2勝を飾り、トーレス選手が0.078秒差で2位を獲得しました。3位にはマッテア・カサデイ選手が入っています。

 レース2を終えたパルクフェルメで「今日のレースはシーズンの最終戦みたいだったでしょ!」と陽気な笑顔を浮かべたトーレス選手。レース2ではフロントタイヤが振動するという問題を抱えていたということです。

「その問題をマネージメントしようとしたけど、ただ、ここではフェラーリのほうが速いということはわかっていた。接近してバトルしようとしたけど……。もっと攻めていたら、チャンピオンシップにおけるリスクをとることになっただろう。サマーブレイクをランキングトップで迎えられる。いい状態をキープできているよ」と言ったトーレス選手は「笑顔もね!」と笑顔で付け加えていました。

MotoEのピットだけが集まる「Eパドック」。ここで充電も行なわれる
MotoEのピットだけが集まる「Eパドック」。ここで充電も行なわれる

 一方、レース2で225kgの車体を操り高速コーナーで見事にトーレス選手をかわしたフェラーリ選手は、「この冬、かなり準備をしてきたんだ。昨年まで、僕はイタリア以外のサーキットで勝ったことがなかった。今年は良くなっているよ」と語ります。

 イタリア人ライダーのフェラーリ選手にとってイタリアは母国でのレースですが、2023年はフランス大会のレース2、そしてオランダ大会の2レースで優勝しています。

「スタートでミスをしたけど、リカバリーした。(トーレスに)接近して最後は抜かせなかった。嬉しいよ。チャンピオンシップでポイントも詰められたしね」

 MotoE第5戦イギリス大会は、MotoGP第9戦イギリスGPに併催で8月4日と5日にシルバーストン・サーキットで行なわれます。MotoEとしては、初めて海を越えて開催される大会となります。

■FIM Enel MotoE World Championshipとは……
 2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、2023年シーズンは土曜日に各2レース開催で全8戦16レースが予定されている。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。9チーム18名のライダーが参戦し、日本人ライダーとしては大久保光選手がエントリーしている。

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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