MotoE初上陸! 海を越えた電動バイクが並ぶ「シルバーストン・サーキット」 MotoGPイギリスGPパドックぶら歩き
イギリスのシルバーストン・サーキットを初めて訪れて、パドックをぶらりと歩き……そうしてふと、気が付きました。「このトレーラーはどうやって移動してきたんだろう?」と。そこには、スペインやイタリア、ポルトガル、フランス、オランダのMotoGP取材で見たパドックと変わらない光景がありました。
これらすべてが船に乗ってやってきたとは……!?
2023年シーズンのMotoGP第9戦イギリスGPを取材するために訪れたシルバーストン・サーキットは、ロンドンとバーミンガムの間に位置しています。地図アプリで道のりを確認してみるとロンドンから向かえば北西に約116km、バーミンガムからは南東に向かって約105km。ロンドンとバーミンガムの、おおよそ真ん中にあるようです。
ロンドンから安全運転で約1時間半。到着したサーキットの駐車場にレンタカーを停めてパドックに向かうと、大きな建物が目に飛び込んできました。とにかく横に長いその建物は、2011年に完成した「シルバーストン・ウィング」というピットの機能も備える複合施設だそうです。MotoGPイギリスGPは2012年以降、長く旧ピットを使用していたのですが、2023年は11年ぶりにこの「シルバーストン・ウィング」がピットとして使用されました。
といっても、わたし(筆者:伊藤英里)にとっては初めてのシルバーストン・サーキットなので、ただただ「シルバーストン・ウィング」の大きさに圧倒されるばかり……。ちなみに、ピットが変わったことで2023年のイギリスGPはスタート、フィニッシュラインが変わりました。

そんな「シルバーストン・ウィング」がとても印象的な、シルバーストン・サーキットのパドックをぶ~らぶらと歩きます。パドックの風景はいつものヨーロッパで行なわれるグランプリと変わらず、見慣れたもの。
ピットの前にはトレーラーがそれぞれの鼻先をそろえて美しく並び、ライダーやスタッフが食事をしたりチームが打ち合わせをしたり、ゲストをもてなす場所であるホスピタリティは相変わらず巨大で豪華です。

……そう、“いつもと変わらない”のです。シルバーストン・サーキットが「島国」イギリスのサーキットであっても……。
聞いたところによると、2輪ロードレース世界最高峰の戦いを形づくるMotoGPマシンから、パドックを彩る巨大なトレーラーにホスピタリティまで、船で海を越えて来るということでした。
そしてイギリスGPではもうひとつ、海を越えてきたものがあります。電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)です。

2019年から始まった電動バイクで争われるMotoEは、これまでMotoGPに併催の形でヨーロッパ大陸でのみ行なわれてきました。しかし2023年、初めて海を越えたイギリスのシルバーストン・サーキットで開催されたのです。
シルバーストン・サーキットのパドックの一角には、“いつもと変わらず”MotoEのピットボックスだけが集まる「Eパドック」が設置されていました。

以前に一度、ドーバーに行ったことがあります。その日はあいにくの曇天で海の向こうは見えなかったけれど、「晴れていたらフランスが見える」のだそうです。
なるほど、それほど近いならば「世界最高峰のパドック」も、こうして海を越えて来られるのだろうな。「船で来た」大きなトレーラー群に、そう納得したのでした。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。