曲がり切れるか否かは「ステアリングアングル」で決まる!? スペック表から読み解く!
バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。走行中に「ステアリングアングル」はあまり気にならないかもしれないけれど……。
メーカーによるスペック表記の有無
スペック表の項目にある「ステアリングアングル」は、ハンドル(前輪)が左右にどれだけ切れるかを角度で表示したものです。ホンダとヤマハは記載がありませんが、スズキは「舵取り角左右」の項目で「35°」のように片側の切れ角を表記しており、カワサキは「ステアリングアングル(左/右)」で、「35°/35°」のように表記しています。

とは言え、バイクはクルマと違い、走行中に方向を変えるのは重心移動で車体を傾け、ハンドルはほとんど切りません。そのため走行中にハンドルを切るのは狭い路地の左折小回りや、Uターン時に限られます。
ちなみに一般道であれば、かなり狭い路地の鋭角的な曲がり角でも、ステアリングアングルがおおむね30度(片側)あれば、大抵は曲がることができます。スーパースポーツ系でなければ35°以上確保しているバイクが多いので、問題なく曲がり切れるでしょう。本格レースにも使うスーパースポーツ系は25~27°くらいの車両が多く、それらのバイクだと厳しいシーンがあるかもしれません。
むしろステアリングアングル(ハンドル切れ角)は、走行中ではなく押し引きの取り回しの方が影響するシーンが多いかもしれません。狭い駐輪場などの出し入れは、当然ながらステアリングアングルが大きい方がラクに取り回すことができます。
ステアリングアングルの「大きい・小さい」はナニで決まる?
ステアリングアングルの「大きい・小さい」ですが、まず前述のスーパースポーツ系は小さいと言えます。フレームに固定されたカウリングやメーター、ヘッドライト類と、左右に首を振るハンドルやフロントフォークが干渉しないようにスペースを確保するのが難しいからでしょう。フレームの形状やエアダクトも影響するようです。

また、フロントフォークが首を振るステアリングピボット部分で、倒立式フロントフォークはアウターチューブの太さにより、かつては正立式フロントフォークよりもステアリングアングルが小さくなる(ハンドル切れ角が少ない)傾向がありました。しかし近年は車体設計の進化により、倒立式フロントフォークでも十分なステアリングアングルを確保し、正立フォークと差異が少なくなっています。
たとえばカワサキ「Ninja ZX-25R」は倒立式フロントフォークでエンジンも幅の広い並列4気筒ですが、ステアリングアングルは並列2気筒で正立式フロントフォークの「Ninja 250」と同じ「35°/35°」を確保しています。どちらもフルカウルのスポーツモデルですが、街乗りやツーリングなど、普段の使い勝手をしっかり考慮しているからでしょう。
オフロードモデルは総じてステアリングアングルが大きい傾向にあります。これはロードスポーツモデルと異なり、走る場所(林道など)によってはハンドルを大きく切るシーンがあるからでしょう。
たとえばスズキ「Vストローム800DE」は、基本的にエンジンやメインフレームはロードスポーツの「GSX-8S」と共通ですが、「舵取り角左右」は「Vストローム800DE」が40°で、「GSX-8S」の35°よりもかなり大きくハンドルを切ることができます。

ステアリングアングルは、前述したようにホンダ、ヤマハはスペック表に記載がありません。また一般道を走行している際に、ハンドル切れ角の少なさが問題になることも、国産バイクの現行モデルならほとんど無いと言えるでしょう(ドゥカティの旧車などは路地を曲がり切れなくて困ることもありましたが……)。

とは言え、押し引きの取り回しでは意外と影響することもあります。また押し引きの難易度は切れ角の数値以上にハンドルの高さやバイクのジャンルでもかなり異なります。気になる場合は、実際に販売店を訪れ、相談や確認するのが得策でしょう。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。