危なっかしい電動キックボードで夢見る、ホンダ「ZOOK」の復活!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.213~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ホンダ「ZOOK」をEV化で復活させて欲しいと言います。どういうことなのでしょうか?

あるじゃないか、理想的な超近距離モビリティが!!

 道路交通法が改正され、ある一定の条件で電動キックボードが公道を走ることが許されました。東京都内でも、若者が颯爽と電動キックボードを走らせる姿を見かけることが増えたように感じます。クルマや歩行者の隙間を縫って走る様子から、とても便利な乗り物であることが想像できます。

ホンダ「ZOOK(ズーク)」(1990年発売)
ホンダ「ZOOK(ズーク)」(1990年発売)

 ですが、見ていてハラハラしてしまうのは僕(筆者:木下隆之)だけではないように思います。機動性があまりに高いことから、渋滞路で縫って走ったり、横断歩道を駆け抜けるシーンを見ると、いまにも事故を起こしかねないとドキドキしてしまうのです。

 タイヤが小さいことも不安材料のひとつです。側溝の板の隙間や道路の段差にタイヤがはまると、その場で転倒してしまいます。それに対する自覚がない若者も見受けられ、こっちが緊張してしまいます。

 そんな時にフッと思い出したのが、1990年頃に販売されていたホンダ「ZOOK(ズーク)」です。

 原付スクーター「タクト」の空冷2ストローク単気筒エンジンを搭載し、スケートボードのような平たいボディに自転車のサドルのような椅子がポールに括り付けられています。そこにヒョイっと腰掛けてライディングするそれは、いま流行りの電動キックボードに椅子をつけたようなものです。

 そうです、いまでこそ電動キックボードが超近距離シティコミューターのひとつとして脚光を浴びていますが、搭載するパワーユニットを電気モーターに置き換えて「ズーク」のコンセプトをそのまま再現して欲しいと思ったのです。

 電動キックボードに乗るライダー(と言って良いのか?)のに中には、バランスが苦手でフラフラしている姿も見かけます。それが「ズーク」ならばはるかに安定しています。ホイールサイズは前後8インチですから、玩具のような小さな車輪を採用した電動キックボードのように、溝にはまる危険性も低いのです。

 そもそもズークは、スケートボードをイメージして開発され、スニーカーを履くように気軽な乗りものをイメージしたそうです。名前の由来は「~ずく(~の傾向が生じる)」や「ズック(スニーカー)」からヒントを得た造語です。まさに現代の電動キックボードのルーツだと思えるのです。

 あるいは用途を飛躍させて、高齢者用の電動シニアカーの発展形としても重宝されるような気がします。車椅子で移動するほど足腰が弱っているわけでもなく、かと言って電動キックボードで颯爽と街中を駆け抜けるのもはばかれるという年代には、理想のように思えます。

 最近このコラムで、たびたびシニアカーの話題を持ち出すようになったのは、僕も潜在的にそれを意識しているからなのかもしれません。

 ちなみに、「ズーク」のシートにはヘルメットをかぶせてロックし、ヘルメットホルダーとして使用できるようです。「メットイン」ではなく「メットオン」タイプですね。

 電動キックボードは確かにノーヘルで乗ることができますが、やはり危険です。ヘルメットの着用が望ましい。そんな場合でも、メットオンなら嵩張ることもなく、荷物にならなくて済みます。

 Hondaさま、是非「ズーク」をEVとして蘇らせください!!

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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