イタリア生まれのエネルジカ「EGO+」は猛烈に速くて普通にツーリングに使える電動バイクだった

良い意味で、トヨタを思わせる領域

 走り始めて十数分が経過した頃、私が脳内に思い浮かべたのは、1997年にトヨタが発売した初代プリウスでした。いや、超高額なMotoEレーサーの公道仕様のインプレで、200万円台で販売された4輪の大衆車を引き合いに出すのは、我ながらどうかと思いますが、世界初の量産ハイブリッド車でありながら、ごく普通のトヨタ車としてまとまっていた初代プリウスと同様に、「EGO+」も普通のバイクとしてライディングができたのです。

電動バイクらしく加速は強烈。もちろんシフトチェンジ操作も無くシームレスに加速していく
電動バイクらしく加速は強烈。もちろんシフトチェンジ操作も無くシームレスに加速していく

 サクッと書いてしまいましたが、それも驚くべきことでしょう。既存の電動バイクとは一線を画するパワフルにしてトルクフルなモーターを搭載しているのに、「EGO+」は勝手知ったるエンジン車と大差ない感覚で走れるのですから。

 逆に言うなら、エネルジカのモーター制御技術は相当に緻密にしてナチュラルで、良い意味でトヨタを思わせる領域に到達しているのではないか、と思います。

 もっとも、スロットルを大きく開けた際の加速は恐ろしく強烈で、シフトアップの必要がないため、感覚的にはリッタースーパースポーツを凌駕するほどです。とはいえ、4種が存在するモードの中で最もパワフルなSportを選択しても、不意にフロントまわりが浮いたりリアタイヤが空転したりする気配はありません。このあたりも、エネルジカのモーター制御の巧みさを感じる部分です。

 そんな「EGO+」で、少しだけ違和感を覚えたのは峠道でのハンドリングです。市街地や高速道路ではやや重いかな……くらいの印象だったのですが(車重は260kg。ただし電動バイクならではの低速前進/後退モードが存在するので、取り回しは意外にイージー)、いつもの試乗の感覚で大小のカーブが続く道を走り始めると、極端な重心の低さと回生ブレーキの利きが気になって、なかなか気持ちよくコーナーに入って行けなかったのです。

 まあでも、距離が進むにつれて違和感は徐々に小さくなっていったので、この件は慣れで解消できるのだと思います。

 ちなみに、数日後にすでに「EGO+」を体験している同業者と話をしてみたところ、エンジン車で過剰なエンブレを避けるように、あえてシフトダウンを行わない感覚で、スロットルを少しだけ開けて回生ブレーキの利きを抑えれば、コーナー進入は楽になるとのことでした。

日本勢の一歩も二歩も先を行く欧州勢

 またしても、欧州勢に先を越されたのか……。今回の試乗を通して、私はしみじみそう感じました。と言うのも近年の2輪の世界では欧州勢の躍進が目覚ましく、中でも電子制御という分野では、欧州勢は日本勢の一歩も二歩も先を行っているのです。

世界最高峰の電動バイクレースに供給されていただけあって、電子制御の分野ではトップクラスの技術とノウハウを蓄積していることに疑いの余地はない
世界最高峰の電動バイクレースに供給されていただけあって、電子制御の分野ではトップクラスの技術とノウハウを蓄積していることに疑いの余地はない

 ただしエンジンの代わりにモーターを使用する電動バイクに関しては、まだ決定打と言うべきモデルが存在しなかったので、日本車にも可能性があると思っていたのですが、「EGO+」を体験した現在は、そういう楽観的な見方ができなくなりました。

 もっともエネルジカは、既存の欧州勢と同列では語れない新興メーカーです。とはいえ、同社の存在は電子制御に積極的な姿勢を示してきた欧州勢にとって、大きな刺激になっているに違いありません。

 おそらく、2023年からMotoEに車両を供給しているドゥカティや、2017年から「C」や「CE」シリーズを展開してきたBMW Motorradは、そう遠くない将来、エネルジカと同様に速さと実用性を高次元で両立した、電動バイクを発表するのではないでしょうか。

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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