俺のやってきた35年間を返せ!! スポーツ走行派にこそ欲しいホンダEクラッチ
クラッチレバーを握らず1速へ落とす!?
発進時、ライダーはニュートラルから1速に入れる際、クラッチレバーを握ってクラッチを切った状態にしなければならないのは、二輪の免許を持っていればどなたでもご存知でしょう。

これを自動でやってくれるから、ベテランほど慄くかもしれません。レバーを握らずとも、1速に入れることができます。もちろんエンストしません。
そして、発進時には半クラを巧みに使いつつクラッチミートします。Eクラッチではアクセルを開ければ自動的に、そしてなんとも悔しいことに上級者より上手くクラッチをつなぎます。発進のためのトルクを得ながらも、回転が上がり過ぎないところを使って走り出すから舌を巻くばかりです。
まるで半クラ職人! Uターンも違和感なし!!
運転を楽にしてくれるシステムは違和感だったり、もどかしかったりするのが、これまでの経験。しかし、Eクラッチはそうではありません。
多くのライダーが苦手とする半クラがなんせ上手い。半クラを多用するのは狭い場所でのUターンや極低速走行などです。

繊細なスロットルワークとクラッチレバー操作が求められ、ライダーは両手のレバー操作に集中しなければなりませんが、これを右手のグリップ開閉だけに専念できるのです。渋滞では絶大な威力を発揮し、ツーリングでも疲労を大幅に軽減するのは言うまでもないでしょう。
どれほどクラッチミートが巧みなのか。クラッチに負担がかかるので本当はやってはいけませんが、6速で発進してみます。
すると、エンストするわけでもないし、必要以上に回転数を上昇させるわけでもなく、シームレスにクラッチを繋いでみせたから驚きを隠せません。
いつでもマニュアル車に戻れる
クラッチレバーを操作したい時は、好きなタイミングでレバーを握れば、いつでもシステムによるクラッチ制御は終了し、通常のクラッチ操作ができます。そして、クラッチレバー操作を終えれば、すぐにまた自動でEクラッチによる制御が復帰します。

走行時はクイックシフターの機能もあいまって、シフトアップ&ダウンでレバーを握る必要はありません。ただし、このコーナーだけはクラッチレバーを握って自分でシフトダウンし操りたいなんていうときは構わずレバー操作すれば、違和感なくマニュアル操作に切り替わります。
そしてまた、Eクラッチは自動的にアクティブに戻ります。メーターのインジケーターでON/OFFは確認できますが、慣れればそれを見ずとも不安はありません。
スポーツ走行にもっと夢中になれる
従来のスポーツバイクと変わらないダイレクトなシフトフィールで、慣れていくとクラッチ操作という動作をしないかわりに、冒頭で報告した通り、もっとスロットルワークを緻密にコントロールできたり、シフトチェンジのタイミングをいろいろと試せたり、荷重移動を積極的かつ丁寧におこなわえるのです。

自動でスロットルを煽って回転を合わせてくれるオートブリッパーは備わっていないので、シフトダウン時にタイミングを合わせるのも面白味。スポーツライディングがつまらなくなるなんてことはまったくなく、もっと大胆に身体を動かせたり、アクセルを開けることができ、良いこと尽くめなのはちょっとした衝撃ですらありました。
まだまだライディング技術が未熟だからでしょう。逆に考えれば、クラッチ操作にこんなにも自分は神経を費やしてしまっていたのかと、損した気分にもなるのです。

停止時もクラッチレバーを握る必要はなく、そのままストップ。勝手に1速に戻してくれるなんていう機能はなく、たとえば3速のままでも発進できてしまうから、ライダーがローに落とすのをサボってしまうこともありえます。そこはメーターディスプレイのシフトインジケーターが点滅し、ギヤが適切でないことを知らせてくれます。
「自分でレバー操作したほうが上手い」と、ホンダ開発チームに言おうと意気揚々と参加したEクラッチ体験試乗会でしたが、秀逸すぎて文句のつけようがありません。これは胸を張っておすすめできます。

Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。














