【インタビュー】アナ・カラスコ選手「もう一度、チャンピオンに」女性の世界選手権参戦の理由と、その役割
Moto3やWSS300で活躍してきたカラスコ選手が、WCRに参戦を決めた理由
これまでに、Moto3やWSS300など、男性に交じって戦ってきたカラスコ選手です。なぜ、「女性ライダーによる」世界選手権を次の戦いの舞台に決めたのでしょう。

「ドルナとFIMが女性レーシングライダーの成長のためのプラットフォームとしてこのようなチャンピオンシップを行なうのは初めてのこと。最も重要なことは、このチャンピオンシップが成功し、継続し、今後のライダーのプラットフォームになることだと思う。わたしとしては、このチャンピオンシップの1年目に参戦することが重要だった。できるだけいいチャンピオンシップになるようにサポートがしたいと思っているから」
そして、長く世界選手権で走り続けるカラスコ選手に「これまでに女性だからという理由で、難しい状況などはあったのでしょうか」とストレートな質問をぶつけました。カラスコ選手は、きっぱりと「ノー」と答えました。ここは、実力の世界なのだ、と。
「いい仕事をすれば、周りはプロフェッショナルだと見てくれる。速ければ、みんな、リスペクトしてくれる。だから、わたしはいつも、周りの人のたくさんのリスペクトを感じているよ。もちろん、わたしのキャリアにおいて難しい時期というのはあった。でもそれは、“女性だから”というわけではない」
「コース上ではわたしたちは“同じ”だと思うし、争うことができる。わたしは2018年にWSS300でチャンピオン争いをするチャンスがあった。女性ライダーがチャンピオンになれるのだと、人々に示すことができたと思っている」
そう、カラスコ選手はWSS300でチャンピオンを獲得しています。それは、ひとつのアンサーです。ただ、総合的に考えたとき、男性と女性における筋力や体力の違いについては、どうなのでしょう。カラスコ選手の考えは、「もちろん、男女が一緒に戦うことはできる」です。
「わたしは男性ライダーと戦いたい。もちろんいいバイクとチームは必要になるし、クラスにもよる。でも、男女は一緒に戦えるとわたしは思う」
「体格によるけれど、それに性別は関係ない。例えば、ダカール・ラリーに参戦してきたライア・サンツは身長が185cmくらいあって、とても大きい。わたしはいつもダニ・ペドロサと彼女を比べるんだけど、ペドロサはとても小さいよね。つまり、その人の体格次第だと思う」
「わたしの場合はとても小さいから、大きめのバイクに乗るのは難しいかもしれない。でも、体格の大きな女性なら可能だよ。女性かどうかではなく、体格次第だと思う」

また、現在のヨーロッパにおける女性レーシングライダーの状況を聞きました。
「ここ数年で、かなり増えてきたと思う。とくに若い女性ライダーがね。10年前は、ヨーロッパで25名のライダーを集めるのは不可能だったよ。レーシングライダーになるまでは時間がかかる。3、4歳から始めて18歳になるまで待たなくちゃいけない。彼女たちは、あと数年もすれば世界選手権のレースに参戦するかもしれないよ」
そうであれば、このWCRは、ヨーロッパで増えつつあるという女性レーシングライダーの可能性を広げる、チャンスを広げる選手権である、とも考えられるのかもしれません。そして、カラスコ選手はこの選手権に参戦することで、今後の女性レーシングライダーをけん引していこうともしているのでしょう。
同時に、もちろんカラスコ選手の今のターゲットは「再び世界チャンピオン」になることです。これもまた、WCRという選手権の役割のひとつであろうと考えられます。
「また、世界チャンピオンになりたい。最後のレースまで、タイトル争いに全力を尽くそうと思っている」
カラスコ選手は、WCR開幕戦エミリア・ロマーニャのレース1で2位、レース2では3位表彰台を獲得しました。どちらのレースも、最後まで接戦の表彰台争いとなりました。
世界チャンピオンに返り咲くために、カラスコ選手は戦います。同時に、カラスコ選手が進むその道は、今後の女性レーシングライダーが歩む道のひとつにもなるはずです。

■アナ・カラスコ選手(1997年3月10日生まれ)
2013年:
ロードレース世界選手権Moto3クラスに参戦。最終戦バレンシアGPでは8位(8ポイント)を獲得し、女性ライダーとしてMoto3で初めてポイントを獲得したライダーとなった
2017年:
新設のスーパースポーツ300世界選手権(WSS300)に参戦
2018年:
WSS300でチャンピオンを獲得。2輪の世界選手権における、女性初のチャンピオンとなった
2022年:
Moto3参戦
2023年:
Moto3参戦
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。
















