バイクのブレーキシステム 「ラジアルマウントキャリパー」は何が凄い?
ディスクローターをギュッと挟み込む「ブレーキキャリパー」は、油圧式ディスクブレーキを構成する代表的なパーツなだけに様々な進化を遂げてきましたが、近年のスポーツ車では「ラジアルマウントキャリパー」が主流になってきました。
高性能ブレーキキャリパーの定番?
バイクに油圧式ディスクブレーキが装備されたのは、市販車では1969年に発売されたホンダ「ドリームCB750FOUR」が初です。それ以来、より制動力とコントロール性を高めるために様々な進化を重ねてきました。なかでもブレーキキャリパーは、1個のピストンが片側から押す「スライド」タイプからピストンが2個に増えたり、ディスクローターを両側から押して強力に効く「対向ピストン」タイプが登場し(対向2POTキャリパー)、さらにはピストンの数が4個に増え、2000年代初頭には6個のピストンを持つキャリパーまでリリースされました。

近年の高性能スポーツ車は対向4POTキャリパーが主流ですが、フロントフォークにブレーキキャリパーを取り付ける方式(マウント方式)が従来と変わってきました。それが「ラジアルマウントキャリパー」です。
ラジアルマウントキャリパーは、従来の取り付け方式と何が違うのでしょうか? それはフロントフォークにキャリパーを取り付けるボルトの方向です。
従来からのディスクブレーキのキャリパーは、ディスクローターに対して垂直方向にボルト留めしていたのに対し、ラジアルマウントキャリパーの取り付けボルトはディスクローターと並行です。車両を真横から見ると、ボルトが前輪の車軸に対して放射状に配置されるため(厳密には放射状ではないが)、ラジアルマウントの呼び名が付きました。

ちなみに従来のキャリパーは(それまではこの取り付け方式しかなかったため)とくに呼び名は無く、ラジアルマウントと区別するために「アキシャルマウントキャリパー」と呼ぶようになりましたが、あまり一般的ではないようです。
超ハードブレーキの必要性から生まれた
ラジアルマウントキャリパーは2000年頃、当時のロードレースのトップカテゴリーであるGP500クラスで登場した、300km/h近い超高速からのブレーキングに対応する技術です。

超高速からハードブレーキを行なうと、ディスクローターの回転に引っ張られてブレーキキャリパーにねじれる力が生じます。するとブレーキパッドとディスクローターの接触面積が変化したり、キャリパー自体が歪むことでブレーキピストンの動きに影響し、制動力やコントロール性が損なわれます。
しかしラジアルマウント方式にすることで構造的に剛性が高まるため、ねじれやキャリパーの歪みを抑えることができ、これが最大のメリットと言えます。
またトップカテゴリーのレースでは、サーキットやコースの状況(気温や天候など)によって、ディスクローターを交換することもありますが、ラジアルマウント方式だとキャリパーとフロントフォークのマウント部の間にカラーを入れる(カラーの厚みを変える)ことで、直径の異なるディスクローターに簡単に交換することができます。
レースからのフィードバックは魅力的!
それでは、従来からのアキシャルマウント方式のキャリパーが性能的に劣るのかというと、少なくとも絶対的な制動力に関しては、本格レースのかなり極限的な使用状況でなければ差は出ないと思われます。しかしコントロール性などのフィーリングは、細かな進化や各パーツの性能向上の積み重ねで変わるので、その意味ではラジアルマウントの方が有効かもしれません。

とはいえ、スポーツ性を謳うバイクにおいて「レースからのフィードバック」は、ルックスも含めて商品性として大切なので、近年スポーツバイクへの採用が増えたのは当然の成り行きでしょう。
さらに部品の共通化によるコストダウンもあり、大型車ではラジアルマウントキャリパーが普及している感があります。
反対に、軽量な小~中排気量車ではそれほどの制動力や剛性を必要としないため、現時点では従来からのアキシャルマウント&片押し2POTのスライドキャリパーが主流となっています。もちろん、実用上もスポーツライディングでも十分以上の性能とコストのバランスが良い組み合わせと言えるでしょう。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。













