玄人を唸らせる完成度と優れたデザイン性を両立 「KOSLOW」ヘッド搭載の横浜ホットロッドショーチャンピオンマシンを再考

『米国モーターサイクルカンパニー』のビッグスリーの一角、エクセルシャー・ヘンダーソンとは?
ここではまず、その希少な『KOSLOW』ヘッドを解説する前に『エクセルシャー・ヘンダーソン』がどんなメーカーだったのかを簡単に説明させていただきます。
エクセルシャーとは自転車のビーチクルーザーで知られる『シュウィン』社が1907年に米国のシカゴで生産を開始したモーターサイクルメーカーで、1917年には当時「すべてのモーターサイクルの中で最も高度で進歩的なモデル」といわれた縦置き4気筒のインレットオーバーエキゾーストのエンジンを搭載する『ヘンダーソン』を買収。
1925年にはハーレーのレーシングモデルである『WR』やインディアンの『スカウト』に先立ち、737ccモデルの『スーパーX』を発表するものの、世界恐慌の影響で1931年にモーターサイクル部門を閉鎖。このように短命に終わってしまったメーカーなのですが、同社の先進的な技術は先に述べたとおり、ハーレーやインディアンに多大な影響をもたらしています。
エクセルシャー閉鎖後に、OHVコンバージョンヘッドの生産許可を得たAndrew Koslowはハーレー用のシリンダーヘッドをごく少数生産したとのことですが、半球形の燃焼室であるヘミヘッドが採用された同パーツは、一説によるとハーレー初のOHVモデルであるナックルヘッド(1936~1947年に生産されたモデル)にも影響を与えたといわれています。
こうした幻のパーツの存在にアンテナを張り、それを自らのカスタムプロデュースに活かす『NEIGHBORHOOD』の滝沢氏の目利きには唸らされることしきりです。
随所に光る製作者の「技」
その希少なエンジンを搭載する『JURASSIC CUSTOMS』の1台は『CHEETAH CUSTOM CYCLES』の大沢氏によってフレームがフルスクラッチ(まったくのゼロの状態からフレームを製作すること)され、隙のない姿が構築されているのですが、フレームはクロモリ4130材を使用し、各部をブロンズブレイジングの『ロウ付け溶接』で製作。

軽量かつ高い強度を誇る一方で、溶接時などの高熱によって「焼き」が入ってしまうとクラックが起こりやすいクロモリという素材は、扱いがかなり難しいのですが、大沢氏は卓越の技術力で見事にマシンを具現化。
旧き時代の英国製レーシングマシンを彷彿とさせるネックまわりやリアにプランジャーサスを仕込んだフレームの造形はもちろん、タンクやシート、ハーレーのファットボブフェンダーを彷彿とさせるリアまわりも見事なフィニッシュに仕上げられています。

このように美しい品格を持ちながら、各部のデザインやエンジンに込められたヒストリーは、YOKOHAMA HCSのチャンピオンマシンに相応しく、やはり「アメリカの息吹」を、そこかしこから感じさせるものとなっています。
昨年は冒頭で述べたとおり2万5000人もの観客を動員し、モーターサイクル出展も600
台を越えるYOKOHAMA HCSが日本最大のアメリカン・カスタムカルチャーの祭典であることに異論を挟む人も少ないとは思いますが、その中で頂点を掴むのはやはり『アメリカの空気感』を漂わせるマシンであるべきと筆者も個人的に考えます。
たとえば膨大な台数のエントラントの中には、ジャンルに関係なく素晴らしい出来栄えのカスタムマシンも存在するのですが、やはり『HOTROD SHOW』という冠がある限り、最低限のドレスコードは必要です。その為のショー事前審査であり、その厳格化が会場の空気感に繋がるのだとも思います。
今年の12月1日にパシフィコ横浜で開催されるHCSでライドインが予定されている『NEIGHBORHOOD』と『CHEETAH CUSTOM CYCLES』による『JURASSIC CUSTOMS』の1台。その珠玉のマシンが会場の中で時空を超え、いかなるエキゾーストノートを響かせるのか……今から楽しみで仕方ありません。
Writer: 渡辺まこと
ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。








