「ヘルメットを気にしないで走ってくるのが一番」アライヘルメットのMotoGPレーシングサービスに聞く
アライヘルメットが持つ理念「かわす性能」
インタビューは、Moto3クラスのフリープラクティスの時間帯でした。トラックの中のテレビでは、セッションの中継が流れています。そのとき、鈴木竜生選手(当時リキモリ・ハスクバーナ・インタクトGP)のクラッシュを喫します。転倒した鈴木選手が何度かグラベルを転がる様子が、テレビに映っていました。

「頭を打っているね」と、古厩さんは言いました。中継を見て、どんな風に転倒をしたのか、そのときライダーが使用していたヘルメットが、どんな状況でダメージを受けたのかを確認するのも、重要な仕事なのです。
「今回の場合は(ライダーがそのまま)走っているので戻ってきちゃうと思うんですが、もしかしたらIRTA(the International Road-Racing Teams Association)が確認しに行って、“このヘルメットはNG”と判断するかもしれないですね。そうなるとFIMの(認証)ステッカーがはがされて、使えなくなっちゃうんですよ。
大丈夫そうなヘルメットでも、帽体の方がどうなっているのかここで確認して判断することもあります。塗装がはがれてキズがついているようなヘルメットは、うちでは使いません。基本的には目視と触っての確認です。どういう状況で転倒したのか、テレビで確認もします。だいたい経験でわかりますよ」
そんなアライが考える安全性は、「グランシング・オフ(glancing off)」、つまり「かわす性能」です。
「転倒したとき、いかに衝撃を頭に入れないか。(衝撃エネルギーを)頭で吸収しないように“かわす性能を発揮”することが一番大事なんです。それが『グランシング・オフ』です。日本語で言うと、“エネルギーを滑って逃がす”となります。滑らせて、エネルギーをヘルメットの中に入れないよう、分散させるのです。
だから、ヘルメットとしてはクラシカルな丸い形になります。それが一番滑るからです。それを守っているので、形状自体は昔から変わっていないんです。帽体を空力のために長くしたりもしていません。
グランシング・オフのための形状、硬さの帽体、樹脂と繊維を研究しています。内側のスチロールは、衝撃を吸収するために柔らかめになっています。このスチロールも工夫があって、場所によって硬度が違っており、それを一体成型しているんですよ。とにかく、頭にいくエネルギーを内側に入れない、“かわす性能”が重要なんです」
MotoGPライダーの安全を守るアライヘルメットですが、ライダーが使用するのは、基本的に市販品と同じです。アジア人とヨーロッパ人では頭の形状が異なるため、それぞれに合わせたモデル、日本人を含むアジア人ライダーは「RX-7X」、ヨーロッパ人ライダーは「RX-7V」(「RX-7X」のヨーロッパ仕様)を使用しています。
どちらも根本的なコンセプトは変わりません。ペイントかデカールかという違いがあることもありますが、ヘルメットの性能としては、MotoGPライダーが使っているヘルメットと同じ物を、わたしたちも買うことができるということです。
アライは1988年、杉原眞一さん(1977年WGP350ccクラスで日本人初の世界チャンピオンを獲得した、片山敬済さんのメカニックを務めた)によってヘルメットのレーシングサービスを開始しました。WGPのパドックにおけるヘルメットのレーシングサービスは、これが最初でした。
アライがWGPのレーシングサービスを開始したのは、当然ヘルメットの開発に生かす、という目的がひとつにありました。レースの現場で培われた技術は、どのように次の製品に生かされてきたのでしょうか。
「シェルに関してはそれが一番だと言い続けている通り、丸い帽体が基本です。ただ、細かいところは、毎回変わっているんですよ。外からは全く見えないんですけど、RX-7V(RX-7X)のエアの流れは前の型から次の型へ、ちょっとずつ通気方法も変わっているんです。(シールドを上げるための)レバーも変わっていますね。安全性を上げて、転倒しても絶対に開かないように。そういう細かい違いの積み重ねで、今に至っています」








