スーパーカブが速くなる!? “かもめカブ90”に同系列エンジンのCS90系パーツをコンバート!!
決して速くはないけれど、野太いトルクで山道をグイグイ登っていく、初代OHC横型エンジンを搭載したスーパーカブC90かもめ号。ビジネスユースを優先したエンジン特性やミッションギヤの設定にしているのは、十分理解しています。それでも「エンジンいじり好き」にとって、試してみたくなるのがエンジンチューニングや個人的な使い勝手です。ここでは、同系列エンジンを搭載したスポーツモデル、ベンリィCS90用エンジンを分解し、CS専用部品をスーパーカブへ組み込んでみようと考えています。
4速ロータリーチェンジは慣れると面白いけれど………
サラリーマン時代に所有し、通勤バイクにも利用していたベンリィCS90(1964年に発売されたスポーツモデル/以下CS90)の走りは印象的でした。見た目はビジネス車のベンリィCD90(以下CD90)にも似たデザインですが、必要十分な走行性能で、ぼくを楽しませてくれた印象に残る一台でした。
ビッグキャブを取り付け、セッティングしただけで、ひとまわりパワフルな走りを体感できたことも思い出します。クラッチ付きのスポーツ仕様エンジン+ロータリーシフトのミッションが、果たしてどんなものなのか!? 購入当初は、ビビリながらギヤチェンジした思い出もあります。

一番怖いのは、トップで走行中に間違えてニュートラルへシフトし、さらに慌ててローギヤへシフトしてしまった時です。まさに強烈なエンジンブレーキが身体に伝わった瞬間に、無意識にクラッチレバーを握ることができれば、事なきを得ることができるようです(ぼくはそうでした)。
しかし、会社の先輩の中には、同じ状況でもスピードが速かったこともあり、エンジンブローしたそうです。原因は、急激なシフトダウンによって排気バルブがピストンヘッドと当たってしまい、バルブの傘を曲げ「万事休す」状態だったそうです。それでもまだ軽症らしく、バルブを落として燃焼室内はグチャグチャ、なおかつコンロッドを曲げてしまった例もあったそうです。
12ボルト系になってからのスーパーカブには、4速ロータリーミッション仕様があります。言わばこの“対策型4速ロータリーミッション”には、ストッパー機構が組み込まれています。
トップギヤで走行中および、リヤタイヤが回転しているとき(遅くても)には、トップからニュートラルへギヤがシフトできない構造になっていました。具体的には、ミッション軸が回転しているときの遠心力で、ストッパーブレートがシフトドラムのシフトフォーク溝に飛び込み、トップギヤからニュートラルへのシフトを「機械的にできなく」していました。
しばらく後になって、現代的4速ロータリーミッション仕様のエンジンを完全分解したときに、その構造を手に取って理解できました。素晴らしい設計です!!
まずはエンジン部品の取り出しと点検から開始
クラッチ操作付きのCS90系4速ロータリーミッションには、前述したような「ストッパー機能」はありません。したがって、仮に3速リターンミッションから4速ロータリーミッションへと改造できたとしても、トップギヤからニュートラルへシフトできてしまいます。
言わば「フリー4速ロータリー」なので危険です。それでも4速化したいのがスーパーカブ90でした。「シフトミス」しないことを前提に、純正流用チューニング=4速ロータリーミッションを楽しんでみようと思いました。

購入したコンプリートエンジンは、CS90でも後期型に搭載されていたものです。後期型エンジンのパーツリストやサービスマニュアルでエンジン仕様の違いや使っている部品番号の違いを確認してから、エンジン分解しました。
4ストロークエンジンの場合は、圧縮比と点火時期とカムプロフィールでエンジン特性は変わります。特に、エンジン性能に大きな違いをもたらすカムシャフトは、目視比較だけでは、その違いを理解しにくい部品です。しかし、2本のカムシャフトを真横から同時に目視すると、カム山の盛り上がり方に違いがありました。
CS90用は、カムシャフトのベース円から山の頂点へ向かうカーブが僅かながら太って見えるのに対して、スーパーカブ用カムシャフトは、カーブの湾曲がほんの僅かに浅く見えました。2本のカムシャフトのリフト量が同じでも、やや太り気味に湾曲しているカムシャフトの方が、バルブ開放時間が長いことになります。
大切なのはバランスで、長い時間開いていれば良いという単純なものではありませんが、CS90とC90の走りを体感比較すると、明らかに高回転域での伸びはCS90に分がある印象です。その違いを生み出すのがカムシャフト山の形状や点火時期の違いだと考えました。
エンジン部品の組み合わせを変更=比較することで、ぼくの走り方や使い方に一番マッチしたセッティング仕様を見つけることができれば……などと考えています。つまり「いいとこ取り」のオレ仕様エンジンにできれば、嬉しいですね!!
Writer: たぐちかつみ
フリーランスライター。バイクも作る国内自動車メーカーの生産技術開発部門を経てから大人向けのバイク専門誌「クラブマン」誌へ合流。同誌のメンテナンスコーナーが縁で、1995年春には「モト・メンテナンス」誌を創刊し編集長を務めた。同誌休刊後の2019年秋からは、内外出版社にて「モトメカニック」誌を創刊。現在も同誌編集長を務めている。






