史上最強の単気筒ロードスポーツじゃないか!? ドゥカティ「ハイパーモタード698モノ」 ニッチなスタイルで登場した新開発モデルとは

日本では2024年9月に発売されたドゥカティ新型「Hypermotard 698 Mono(ハイパーモタード698モノ)」は、新開発された排気量659ccの超ショートストローク単気筒エンジンを搭載するモタードスタイルが特徴のモデルです。その乗り味はどうなのか、試乗しました。

市場で絶大な支持を集めるのは難しそう?

「もし自分がCEO的なポジションだったら、開発にGOサインは出さないだろうな……」2023年秋に公開され、2024年からドゥカティが発売を開始した「Hypermotard 698 Mono(ハイパーモタード698モノ)」に対して、私(筆者:中村友彦)はそんな印象を抱いていました。

ドゥカティ「Hypermotard 698 Mono」に試乗する筆者(中村友彦)
ドゥカティ「Hypermotard 698 Mono」に試乗する筆者(中村友彦)

 その理由は、排気量500cc以上の単気筒車、そして500cc以上のスーパーモタード(スーパーモト)は、販売台数で大きな期待ができないからです。

 と言っても、Vツインエンジンを搭載するドゥカティの「ハイパーモタード」シリーズは、長きに渡って生産が続くロングセラーモデルですし、KTM/ハスクバーナ/ガスガスは、基本設計を共有する693cc単気筒エンジンのスーパーモタード&エンデューロマシンを販売しているのですが、それらが市場で絶大な支持を集めているかと言うと、必ずしもそんなことはありません。

 しかも「ハイパーモタード698モノ」は、価格(消費税10%込み)がVツインの「モンスター」や「スクランブラー」シリーズより高い177万8000円で、同時期に開発していたモトクロッサーの「デスモ450」とは技術的な関連性が無く、ほとんどの部品が新規設計で、最高出力が35kW(47.6ps)以下という欧州のA2ライセンスの条件に適合していないのです。 ※ヨーロッパでは35kW(43.5ps)バージョンも用意

 逆に言うなら、そういうニッチで趣味性が高いモデルを開発・販売できる現在のドゥカティには、他メーカーとは一線を画する余裕や勢いがあるのでしょう。

メカニズム的には、興味深い要素が満載

 さて、初っ端から後ろ向きな話をしてしまいましたが、メカニズム的な視点で見るなら興味深い要素が満載のバイクです。

 最大の注目要素は、かつての旗艦だった「1299パニガーレ」用のVツインから、フロントバンクを撤去したかのような構成にして、超ショートストローク指向(ボア116mm×ストローク62.4mm)のエンジンですが、現代ならではの多種多様な電子デバイスも、このモデルを語るうえでは欠かせない要素です。

完全新設計の単気筒エンジン「Superquadro Mono(スーパークアドロ・モノ)」は「1299 Panigale(パニガーレ)」の2気筒エンジンがベース。ボア116mm×ストローク62.4mmの超ショートストローク設計で排気量は659cc。バルブ開閉はスプリングではなく機械的に作動する「Desmodromic(デスモドロミック)」によって高回転を実現
完全新設計の単気筒エンジン「Superquadro Mono(スーパークアドロ・モノ)」は「1299 Panigale(パニガーレ)」の2気筒エンジンがベース。ボア116mm×ストローク62.4mmの超ショートストローク設計で排気量は659cc。バルブ開閉はスプリングではなく機械的に作動する「Desmodromic(デスモドロミック)」によって高回転を実現

 一方のシャシーに注目すると、トレリス構造のメインフレームとシートレール(前者は昨今のドゥカティがスポーツ系モデルに採用している、アルミ製フロントフレーム的なデザインと言えなくはない)、両支持式のアルミ鋳造スイングアーム、Y字6本スポークのキャストホイールなど、数多くの部品を新規製作しています。

 もっとも、近年のドゥカティのラインナップに単気筒車は存在しなかったので、それはまあ当然のことでしょう。

 試乗前にそういった事実を把握した私は、ストリート用という注釈付きですが、コレは「史上最強の単気筒車」じゃないか? ……という印象を抱きました。

 などと書くと、KTM/ハスクバーナ/ガスガスの693cc単気筒車オーナーが腕まくりをしているかもしれませんが、基本設計を行った時期に10年以上の差があることを考えると、現時点で史上最強の単気筒車という称号が最もふさわしいのは、「ハイパーモタード698モノ」だと思います。

 なお今回テストした車両はイタリア本国仕様ですが、日本で販売される仕様では、シート高を904mmから864mmに下げたローダウンバージョンです。

 日本人の体格や趣向を考えればその変更は当然なのかもしれないのですが、私自身は、そもそも500cc以上の単気筒エンジンのスーパーモタードに177万8000円を払うライダーの多くは、足つき性よりも運動性能を重視しているのではないか……という気がしています。

「1299パニガーレ」譲りのエンジン

「77.5psって、こんなにパワフルなのか!!」……試乗を開始して十数分後、周囲の状況を確認したうえで全開加速を試みた私はそう感じました。

過去に体験したことがない強烈な加速は、ドゥカティのレーシングDNAを継承していることを思わせる
過去に体験したことがない強烈な加速は、ドゥカティのレーシングDNAを継承していることを思わせる

 もっとも近年の600~800ccクラスの基準では、77.5psは驚くような数字ではないですし、KTM/ハスクバーナ/ガスガスの693cc単気筒車も同様の最高出力(75ps)を発揮するのですが、このバイクは過去に体験したことがない強烈な加速を感じさせてくれたのです。

 ちなみに「ハイパーモタード698モノ」の燃料ナシの車重は151kgで、この数値はKTM/ハスクバーナ/ガスガスの693ccスーパーモタードと大差ありません。ではどうして私が、そんなパワフルさと強烈な加速に感銘を受けたのかと言うと……。

 回転上昇がとてつもなくシャープで、レブリミッターが作動する10250rpmまでイッキに回るからでしょう。その特性を示す数値として最高出力・最大トルクの発生回転数を記すと、KTM/ハスクバーナ/ガスガスの693cc単気筒がそれぞれ8000rpm・6500rpmであるのに対して、「ハイパーモタード698モノ」は9750rpm・8000rpmです。

 もちろん、最高出力・最大トルクの発生回転数は高ければ高いほうがエライというわけではないですし、最大トルクに関してはKTM/ハスクバーナ/ガスガスの693cc単気筒のほうが優位なのですが、「ハイパーモタード689モノ」はかつてのドゥカティの旗艦にしてスーパーバイクレーサーのDNAを継承していて、私はそれこそがこのバイクの価値ではないか……と思いました。

バリエーションモデルへの期待

 そしてそんな気持ちになった瞬間、私はドゥカティの狙いが理解できた気がしたのです。

 と言うのも、近年の同社はスーパーバイクレーサーで培った技術を転用したモデルとして、ネイキッドの「ストリートファイター」やアドベンチャーツアラーの「ムルティストラーダ」、クルーザーの「ディアベル」などを販売しています。気筒数が減っているものの、「ハイパーモタード698モノ」もそういった展開の一貫として生まれたのではないでしょうか。

モトクロッサーやエンデューロマシン由来の前後に長く、細く、フラットなシートは、激しく動くライダーの自由度を高めるもの
モトクロッサーやエンデューロマシン由来の前後に長く、細く、フラットなシートは、激しく動くライダーの自由度を高めるもの

 ただし、前後サスペンションストロークが長く(ホイールトラベルはフロント215mm/リア240mm)、着座位置が高いこの車両のハンドリングは、単気筒スーパーモタードならではの軽快感や旋回性が存分に堪能できる一方で、乗り手の技量を問うところがあります。おそらく、大型2輪免許を取得したばかりのライダーが乗ったら、あまりのパワフルさや姿勢変化の大きさに戸惑うでしょう。

 だから私としては、外装や足まわりを刷新したバリエーションモデル、オーソドックスなネイキッドやフルカウルのスーパースポーツなどの登場を期待しています。

 もちろん価格と気筒数を考えると、販売台数で大きな期待は持ちづらいですが、スーパーモタード以外のスタイルで史上最強の単気筒車の性能を味わってみたいライダーの数は、意外に少なくないような気がします。

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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