多い方がエラかった!? 一体どうやって決まる? カッコ良さだけじゃないマフラーの数とは

いまどきのバイクのマフラーは、大抵が1本が多いようですが、昔は気筒数(シリンダーの数)と同じ本数のマフラーが一般的で、じつはマフラーの数が多いほど「偉かった」時代でもありました。

マフラーの数は、高性能の証!?

 近年のバイクは、エンジンの気筒数や型式に関わらずマフラー(サイレンサー)が1本のモデルが主流です。マフラーの仕事は主に排気音を小さくしたり(消音)、近年は排気ガスの浄化(キャタライザーを内蔵)も行っていますが、1本で役目を果たせるなら何ら問題は無く、そこに疑問は感じないでしょう。

いまどきのバイクのマフラー(サイレンサー)は「1本」が主流。画像はホンダ「CB1000ホーネット」
いまどきのバイクのマフラー(サイレンサー)は「1本」が主流。画像はホンダ「CB1000ホーネット」

 ところがかつては、マフラーの数が多い方が「偉かった」時代がありました。その理由は単純明快で、高性能なレーシングマシンのマフラーの数が多かったからです。

 じつは1960年代頃までのバイクは、エンジンの1気筒に対して1本のマフラーを装備しているのが一般的で、その当時の市販バイクは単気筒か2気筒だったので、マフラーの数は必然的に1本か2本でした。

 そして1959年にマン島TTレースに初参戦し、1961年から世界GPにフル参戦したホンダは、なんと1966年までに全クラス(サイドカー除く)でチャンピオンを獲得しました。その強さの理由のひとつが、高回転まで回る「多気筒エンジン」で、4気筒エンジンならマフラーも4本装備しています。

 要するに、マフラーの数が気筒数を表すため、市販バイクもマフラーの数(=気筒数)が多い方が偉い、となったわけです。その最たるバイクが、ホンダが1969年に発売した「ドリームCB750FOUR」で、市販量産バイク初の4気筒エンジンを誇示する4本マフラーを装備していました。

 そしてホンダは1971年に兄弟車の「ドリームCB500FOUR」、1972年に「ドリームCB350FOUR」を発売して4気筒シリーズが完成。もちろんどのバイクも4本マフラーでした。

 また、「打倒ホンダ」を目指すカワサキは1972年に「Z1」こと「900 Super4」、1973年に国内向けの「Z2」こと「750RS」を発売しますが、こちらもひと目で4気筒とわかる4本マフラーを装備していました。

 ちなみにカワサキは、1969年に2ストローク3気筒の「500SSマッハIII」を国内発売しますが、このバイクのマフラーは右2本/左1本の計3本でした。

 そしてスズキが1971年に発売した2ストローク水冷3気筒の「GT750」は、真ん中の気筒のマフラーを左右に振り分けて4本マフラーにしていました。これはマフラーの数を多くしたいというより、左右対称のデザインにしたかったためだと思われます。

高性能な「集合マフラー」が登場!

 そんな「マフラーが多いほど偉い時代」に終止符を打ったのが、「ヨシムラの集合マフラー」です。

 現在もカスタムパーツやレースで有名なヨシムラは、1971年にエンジンチューニングを施し世界で初めて自社開発した集合マフラーを装着した「CB750FOURレーサー」を「Krause Honda(クラウス・ホンダ)」に供給します。

ヨシムラの「集合マフラー」を装備した「CB750レーサー」(画像は1972年の車両)
ヨシムラの「集合マフラー」を装備した「CB750レーサー」(画像は1972年の車両)

 そしてそれぞれの気筒から排出される排気ガスの干渉作用(脈動効果)を利用して排気効率を高める集合マフラーは高い性能を発揮し、瞬く間に4ストロークの多気筒エンジンのレーシングマシンでは必須の装備になりました。

 こうしてスポーツバイクにおいては「多気筒で集合マフラーが偉い」時代がやってきます。

 そこでホンダが1974年に発売したのが、「CB350FOUR」をベースに排気量を拡大し、カフェレーサースタイルと集合マフラーを装備した「ドリームCB400FOUR」です。

 さらに翌1975年には「CB750FOUR」のバリエーションモデルとして、集合マフラーを装備した「CB750FOUR-II」をラインナップしました。

 とはいえ1970年代の市販バイクで集合マフラーを装備したのはこの2モデルくらいで、他の多気筒モデルのマフラーは左右1本ずつの計2本出しが主流でした。

 しかし1980年代に空前のバイクブームを迎えて各メーカーの競争が激化すると、一気に集合マフラーの波が訪れます。市販バイクにおいても集合マフラーはエンジンの出力アップと車両の軽量化に欠かせないアイテムだからです。

 こうして集合マフラーがメジャー化し、いつしか「マフラーは1本」が普通になっていきました。

「2本出し」も健在!

 じつは1980年代以降のバイクで、マフラーが左右2本出しのモデルも、エンジンの排気口からサイレンサー(消音器)に至るまでの排気管が、集合マフラーと同様の構造を取る車両が少なくありませんでした。

2007年型のスズキ「GSX-R1000」は、レースにも使うスーパースポーツ車だが、敢えて2本出しマフラーを採用
2007年型のスズキ「GSX-R1000」は、レースにも使うスーパースポーツ車だが、敢えて2本出しマフラーを採用

 サイレンサーは文字通り消音性能が求められるため、近年でも排気効率と消音性を両立させるために、排気管(エキゾーストパイプ)がいったん集合してから左右のサイレンサーに振り分ける大排気量車があります。

 また排気量の大きな単気筒モデルは消音性を確保するために、2本出しのサイレンサーで容量を確保している車両もあります。

 というワケで、いまはバイクのマフラーは1本が主流ですが、環境性能も重視される現代においては、マフラーの数や形状はまだまだ変化(進化)していくと思われます。

【画像】増えたり減ったりまとまったり……これまでのバイクのマフラーを見る(16枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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