世界最速への挑戦!! マシンは「スーパーカブ」!? 4人の孫を持つ日本人女性が米国『ボンネビル・ソルトフラッツ』へ!!

映画『世界最速のインディアン』(2005年)の舞台となった、米国ユタ州の塩の平原で繰り広げられるスピードトライアルに、日本人女性がホンダ「スーパーカブC100」(1963年モデル)で挑みます。滑走路を借りてテスト走行を行ないました。

レースデビューが、ボンネビルで世界最速!?

 2025年8月2日から、米国ユタ州ボンネビル・ソルトフラッツで開催される『ボンネビル・スピードウイーク』に、日本人チームである「LSAレーシング」が挑戦します。ライダーは4人のお孫さんを持つ黒木伴井(くろきともえ)さん(53歳)です。昨年、ソルトフラッツで開催されているランドスピードレースを観戦したことをきっかけに、スピードウイークに参戦することを決意しました。

ボンネビルスピードウイークに挑戦するLSAレーシングのランドスピードレーサー。ホンダ「スーパーカブC100」(1963年モデル)をベースに製作
ボンネビルスピードウイークに挑戦するLSAレーシングのランドスピードレーサー。ホンダ「スーパーカブC100」(1963年モデル)をベースに製作

 レースに使用する車両は、OHVエンジンを搭載する1963年モデルのホンダ「スーパーカブC100」です。もちろんレース用にチューニングされており、黒木さんの練習も兼ねて、6月初旬に山梨県の日本航空高等学校の滑走路を借りてランドスピードレーサーとして完成したマシンのテスト走行を行ないました。

 ボンネビル・スピードウイークは、映画『世界最速のインディアン』(2005年)の舞台にもなった伝統あるランドスピードレースです。3~8マイルの直線コースを使って最高速を競うもので、会場となるボンネビル・ソルトフラッツは広大な塩類平原で、名前の通り高低差の無い平坦な塩の地面がどこまでも続いています。その地形を活かして、100年以上前から最高速チャレンジが続けられています。

 LSAがエントリーしたランドスピードレーサー「スーパーカブC100」は、「スーパーカブ」でのロードレースなどで実績のある「アニマルボート」と、ランドスピードレーサー制作の経験を持つ「酒井ボーリング」の手によって完成しました。

 フレームやサスペンションはアニマルボートのロードレース用をもとにチューニングし、エンジンは排気量50ccのままスーパーチャージャーを装備しています。

 最高出力が4.5馬力しかないベース車両にスーパーチャージャーを装着すると、クランクに抵抗が生まれる分パワーが落ちる可能性もありますが、標高が1000mを越えるボンネビルでは、強制的にエンジンに空気を送り込む過給機付きが有利ということもあります。

 試行錯誤を重ねてテストを繰り返し、この日までにほぼ納得のいく状態まで漕ぎ着けることができました。

ロードレース仕様の「スーパーカブC100」で練習走行をする黒木さん。テストコースとして使用したのは日本航空高等学校の滑走路。秋には航空祭も開催される。2日目にはボンネビル仕様でテスト走行
ロードレース仕様の「スーパーカブC100」で練習走行をする黒木さん。テストコースとして使用したのは日本航空高等学校の滑走路。秋には航空祭も開催される。2日目にはボンネビル仕様でテスト走行

 初めてボンネビルレーサーを走らせた黒木さんは「メカニックチームが苦労して時間をかけて完成させた車両でしたので緊張しました。でも、乗り始めた瞬間にC100との相性が良いことが分かりました。ノーマルから分解して磨きも自分が携わったので愛着もあります」とのこと。

 そして2日間のテスト走行によって、エントリーするクラスの記録である時速約75キロを超える結果を出すこともできました。

 しかしスピードウイークは、平坦とは言え自然の塩の路面で舗装路とは条件が違います。さらに風などの気象条件によっても記録は左右される、自然が相手の過酷なレースとも言えます。目標は時速95キロです。

 最初は戸惑う場面もあった黒木さんですが、慣れてくれば躊躇なくフルスロットル、最高速を出すためのライディングポジションなどを模索しながら、2日間でボンネビルを走る自信もついたそうです。

 レースまで1カ月を切り、すでにマシンは船に乗ってアメリカへ向かっています。

「走るその瞬間まで、やれることは全てやり切る。悔いの無い準備を重ねて、万全の状態でボンネビルの大地に挑みます」と黒木さん。

 ボンネビル・スピードウイークに挑む、LSAチームの黒木伴井さんと「スーパーカブC100」の活躍に期待です。

【画像】これが世界最速に挑む「スーパーカブC100」です!! 4人の孫を持つ女性ライダーを見る(25枚)

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Writer: 増井貴光

旅をライフワークにバイク専門誌などで活躍するカメラマンでコラムニスト。国内だけでなく、アメリカでランドスピードレースやドラッグレースの撮影を続けている。著書としてユタ州ボンネビルで最高速に挑戦するライダーを撮影した写真集『bonneville』と、ルート66を実際に走って撮影した『movin’on』がある。また撮影だけでなく、イベント等の企画・運営にも携わるなどその活動は幅広い。愛車はハーレーFLTRXS、ホンダXR250とCT110

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