時速300キロ超えの時代も!? 平成の怪物、スズキ「隼」が令和の今も絶大なる人気を誇るワケ

アルティメットスポーツといわれ、300km/hリミッターが義務付けられるまでにハイスピード化したメガスポーツたち。「GPZ900R」からはじまるカワサキZZR系やホンダ「CBR1100XXスーパーブラックバード」など、各社がしのぎを削ったそのセグメントでは、今やスズキ「ハヤブサ」だけが進化と熟成を繰り返しつつ、唯一無二の存在と価値を見出し生き残っています。絶対的王者に君臨し続けるフラッグシップモデルの魅力とは、一体なんなのか!? バイクジャーナリストの青木タカオさんが迫ります。

巨体を操る充実感に浸る

 その巨体からは想像ができないほど、タイトなコーナーもスムーズに曲がります。太めの前後タイヤが路面にしっかり食いつくような優れた接地性が乗り手に安心感をもたらし、思うがままに操れているという充実感に満たされるではありませんか。

 ピッチングモーションは少なめで、低重心のまま落ち着いています。クイックに切り返しても、瞬間的にふわっと浮き上がってヒヤッとするなんてことはなく、ベターっと張り付くように狙ったラインを外さずトレースしていきます。

スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」に乗る筆者(青木タカオ)
スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」に乗る筆者(青木タカオ)

 なんたって威風堂々とした見た目で、抜群の存在感。オートバイに詳しくない人が見ても、サイドカウルにある『隼』のネームロゴを見れば「これがハヤブサか」と、目を惹き関心を寄せるはずです。

 そんな最高峰モデルを操っているんだという嬉しさが、コーナーを駆け抜けていくたびにこみ上げてきて、悦に浸ることができるのでした。

300km/h超えの実力

 最速最強を競い合った熱きアルティメットスポーツたちの中で、人気を博し続け、今なお生き残っているのがスズキのフラッグシップ『HAYABUSA(ハヤブサ)』です。

スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」
スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」

 かつて、340km/h(目盛りは350km/h)まで刻まれたスピードメーターがあったなんて、令和となった今では信じられないという人もいるかもしれません。

 新世紀へ向け、時代の変わり目だったのでしょう。当時、社会問題化してしまい、300km/hリミッターが義務付けられるまでになっていったのが、各メーカーがしのぎを削ってリリースした究極の最速マシンたち。

 レーサーレプリカブームが終焉を迎えるとともに、逆輸入車の人気が高まり、リッタークラスにおいても高性能・ハイパワー化の波が訪れました。

 1986年の『GPZ900R』から続く、世界最速へ挑む熱き血統を『GPZ1000RX』『ZX-10』に受け継がせてきたカワサキは、1990年に『ZZR1100』を発売し、メガスポーツブームに火をつけます。

 世界最速の座を譲るまいと、93年にはラムエアダクトを2つに増やした『ZZR1100』(D型)に進化。ホンダは1997年に『CBR1100XX スーパーブラックバード』を海外向けにリリースし、競争はより熾烈化していきます。

メーカーの威信をかけて誕生

 1996年9月の免許制度改正で大型二輪免許の取得が認定自動車教習所でできるようになり、翌97年より教習がスタート。この頃からビッグバイクブームとも言われ出します。

スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」。フェアリングには誇らしく配置された「隼」の文字が唯一無二の存在感を引き立てます
スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」。フェアリングには誇らしく配置された「隼」の文字が唯一無二の存在感を引き立てます

『GSX-R1100』で対抗していたスズキが、満を持してメガスポーツ戦線に送り込んだのが『GSX1300R ハヤブサ』。初代デビューは1999年のことでした。国内外で行なわれたクローズドコースでのテストでは、310km/hを超える最高速を記録。驚愕ともいえる実力の持ち主であり、まさに“平成の怪物”です。

 誕生10年目の節目、2008年にスタイリングを刷新するなどビッグチェンジした2代目となり、最高出力197PSへさらなるパワーアップ。 スイッチひとつでA/B/Cの3種類に出力特性を切り替えられるS-DMS(スズキドライブモードセレクター)を搭載しました。

 2014年からは国内ラインナップにも名を連ね、海外仕様そのままのスペックで発売されたのも大きな話題になりました。

 今回乗ったのは第3世代で、2021年にデビュー。6軸IMUを搭載し、電子制御システムのS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)を進化させています。

高速巡航も朝メシ前

 高速クルージングは余裕としか言いようがありません。トップギヤ6速での100km/h巡航はわずか3200rpm、120km/hでも4000rpmほどでこなします。

 公道(高速道路)での制限速度なら、まだまだ“朝メシ前”と言わんばかりの動力性能。それは決して無駄ではなく、余裕につながっています。アクセルを少しでもワイドに開ければ、あっという間に異次元の速度へ導かれてしまいます。

スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」。空力特性に優れたフェアリングを備えています
スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」。空力特性に優れたフェアリングを備えています

 それほどに高性能なら、乗り手が困ることもあるだろうと、アクティブスピードリミッターがスズキの市販二輪車で初採用され、任意の速度でのスピードリミッターを設定することも可能になっています。

 そして、高速道路を流す際、慣れてしまうと欠かせないと感じるほど重宝するのが、およそ30km/hから使うことのできるクルーズコントロールシステムです。

 スロットルグリップを操作することなく設定速度をキープでき、ハンドル左のアップ&ダウンスイッチで速度の調整も可能です。これがライダーの疲労を飛躍的に軽減してくれます。

スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」と身長175cmの筆者(青木タカオ)。シート高は800mmで、2代目より5mm下がっています
スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」と身長175cmの筆者(青木タカオ)。シート高は800mmで、2代目より5mm下がっています

 というのも、ハヤブサのライディングポジションは、300km/hオーバーにも耐えられるように前傾気味なのは、写真の通り。筆者がまだ20代だった初代(1999-2007)の頃には、疲労感は特に感じなかったものの、アラフィフとなった今では長距離を走るとキツくなってしまうのです。

 なので、右手をひねり続けなくても済むクルーズコントロールは、たいへん重宝します。上半身を起こしつつ走っても、120km/h程度であるならエアロダイナミクスを追求したフルカウルに守られた身体への負担はほとんど感じません。

 ハンドル位置は先代よりライダー寄りへ20mm近くなり、コンパクトなライディングポジションを実現。シート高は800mmで、2代目より5mm下がっています。シート形状が絞り込まれて、足つき性を向上しているのも見逃せません。

ハヤブサは全方位に最強!

 ボア・ストローク:81×65mmで、総排気量を1339ccとする水冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンは、トータルバランスを向上させ、扱いやすく高回転の出力を低中回転へ振り分けて実用域の出力を増加させています。

スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」。アナログとデジタルを組み合わせ、視認性に優れたメーター周りを構築しています
スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」。アナログとデジタルを組み合わせ、視認性に優れたメーター周りを構築しています

 最高出力188PS/9700rpm、最大トルク149Nm(15.2kg-m)/7000rpmという超絶スペックの持ち主にとっては、低中回転域こそ一般公道での実用域。いくらハイスペックの持ち主であっても、この領域で扱いにくく乗りづらいのならば、ファンは離れていってしまうでしょう。

 電子制御は「SDMS-α(スズキドライブモードセレクターアルファ)」へ進化し、出力特性だけでなくアンチリフトコントロールや双方向クイックシフト、エンジンブレーキコントロール、モーショントラックトラクションコントロールがモード選択により統合的に切り替わります。

 スロットルレスポンスがもっともマイルドな「3」は加速も穏やかで、ライダーが意識せずともペースを抑えられる利点を持ちます。ただし、もっともシャープな「1」でも唐突にパワーが立ち上がることはなく、スロットルの開けはじめでもギクシャクせず、神経質さはありません。

 駆動輪が路面に食いつくのを感じつつ、ライダーは気持ちよくアクセルを開けられ、猛ダッシュを堪能できるのです。

スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」
スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」

 ハヤブサが絶大なる人気を持ち続けるのは、単なるスペック至上主義ではなく、あらゆる方面において最強であることに尽きます。

 一般道をダラダラ流しても、ワインディングをクルマの流れに合わせてゆったり走っても苦にならず、気持ちよく快走できる。コンフォート性に優れ、ツーリングライダーにも絶大な人気を誇ります。用途を選ばずオールマイティに使え、幅広いライダーから高く評価されているのです。

 2025年式では、マットスティールグリーンメタリック/グラススパークルブラック、グラススパークルブラック/マットチタニウムシルバーメタリック、ミスティックシルバーメタリック/パールビガーブルーの3色のカラーバリエーション。メーカー希望小売価格(消費税10%込み)223万3000円となっています。

 いずれの性能においても、高い完成度を誇るハヤブサ。その実力は圧倒的と言えるもので、このセグメントにおける一強となっていますが、「もしもライバルが再び現れたら」と思うと、ワクワクせずにはいられません。

 いまこうしてハヤブサに乗って、魅力を知るほどに、ニュー・ブラックバードやZX-12Rの後継モデル登場を期待してしまうのは筆者だけでしょうか。

【画像】唯一無二の存在感!! スズキのフラッグシップ「HAYABUSA(ハヤブサ)」を画像で見る(24枚)

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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