「ドキドキのユーザー車検」 6ボルト電装の旧車BMW 現状仕様でパスできるのか!? 鬼門はヘッドライト
1960年代の国産モデルは、12ボルト電装への移行が積極的に進められました。4ストロークエンジンモデルは、軽二輪枠でもセルスターター(セルモーター)を装備するのが当たり前になりつつあった時代でもあります。一歩先を見据えた装備を搭載する国産モデルが増える中で、ヨーロッパ製大型モデルの中には、6ボルト電装を採用し続ける例もありました。ここでは30年以上前に車検切れ、ガレージ保管され続けてきた6ボルト電装モデル、BMW「R 69 S」のユーザー車検取得に同行した様子をリポートします。
1966年生まれのBMW「R 69 S」、ユーザー車検に挑戦!!
バイク仲間のガレージへ、車検取得の依頼で入庫してきたBMW「R 69 S」(水平対向600ccエンジン搭載)は、1960年代に登場したBMWモトラッドのフラッグシップモデルです。BMWのボクサーツインモデルには数多くのファンがいますが、クラシックBMWの中でも高い人気を誇るのがこの「R 69 S」でした。すでに車検切れから30年以上が経過しています(車検証で確認すると平成に入ってから継続検査は受けていない様子でした)。

当時のオーナーから譲り受けたのが現在のオーナーで、その方から車検取得の依頼を受けたのがバイク仲間です。腰を痛めていたバイク仲間から、トランポへのバイクの載せ降ろしが大変だと伺いました。それと同時に、ぼく(筆者:たぐちかつみ)個人的にも「現状仕様で車検取得できるの?」と、興味深かったので、陸事持ち込みのユーザー車検に同行させて頂きました。
検査ラインには1名しか入れないので、検査中にはベンチに座って待機です。トランポへのバイクの載せ降ろしの補助がぼくの仕事でしたが、何かあった時には、お手伝いできるだろうと考えていました。
6ボルト仕様の専用ハロゲン球へ交換しましたが……
ユーザー車検と言えば、その鬼門は「ヘッドライト」にあります。ユーザー車検にチャレンジした経験がある方ならご理解いただけると思いますが、ヘッドライトの「光軸」が正しく、規定以上の「光量」を発揮できるコンディションであれば、何ら問題なくヘッドライト検査はパスできます。特に、今回はノーマル車だから、様々な装備に対する指摘云々を受けることも無いはずです。したがって、尚更、ヘッドライト検査が鬼門になると思いました。

12ボルト電装なら心配ありませんが、「R 69 S」の電装系には「6ボルトバッテリー」が搭載されています。6ボルト45/45ワットのヘッドライトバルブが標準仕様のようです。
しかし、点灯状況を目視確認する限り、決して明るく照らしている感じではありません。そこで、旧車BMWに詳しい別のバイク仲間へ尋ねると「BMW専用で6ボルトのハロゲン球が販売されているから、そのバルブを購入すれば光量は楽々クリアできますよ」と、ありがたい情報をキャッチしました。国内の旧車BMW専門店で6ボルト仕様のハロゲン球を購入して、取り付けました。これで鬼門の光量問題はクリアできるはずです。
燃料コックとキャブレターは、新品ガスケットへ交換してオーバーホール。ポイントとコンデンサは無条件で新品部品に交換しました。この時に驚いたのが、何と点火系はマグネトー仕様でした。キックを踏み込むとマグネットローターが回転し、イグニッションコイルへ電気を送って火花を飛ばす仕様です。OHVエンジンの「スーパーカブC100」の初期モデルに搭載された、通称二つ星エンジンの2気筒版とも呼べる構造でした。
エンジン始動すると、気になるメカノイズはありません。点火時期も刻線に合わせて調整すると、アイドリングは低く安定しています。事前予約していたユーザー車検日に間に合うようにメンテナンスは完了しました。
最終確認で、車検前日の晩に各機能を点検しました。すると、ヘッドライトを点灯したままエンジン回転を上げると、なんとハロゲンバルブが切れてしまったではありませんか……。予備のハロゲンバルブは買ってません。すでに検査前日の晩なので、今からオーダーしても間に合いません。予約をキャンセルして、車検日を改めるか迷いましたが、預かり時に組み込まれていた標準のガラス球に戻して、ユーザー車検へ挑んでみることになりました。

陸事に到着後、書類申請を済ませてから思い切って検査ラインへ入ったバイク仲間。車両装備の確認後、前後ブレーキ検査OK、スピードメーターOK、そして最後のヘッドライト検査で「不合格」のようでした。
検査判定室へ行き、不具合箇所を明記した書類を受け取り、再検査になりました。不合格項目はヘッドライトだけでした。光軸はズレていて、光量も不足していました。検査ラインから出てきたバイク仲間と相談し、陸事近所の予備検査テスター業者へ行き「ヘッドライトを確認してもらおう」となりました。
ハイビームポジションで光軸調整を行うことで、規定の範囲内に光軸は収まりました。しかし、光量がまったく足りていません。検査合格できる灯火の明るさは15,000cd(カンデラ)以上なのに対して、1回目の検査データに記されていたのは、何と8,900cdでした。アイドリング状態だったものの、お話しにならない数値でした。
そこで、エンジン回転を徐々に高めていくと、テスターのカウンター表示数値も徐々に高まります。最終的には、スロットル全開に近い勢いまでエンジン回転を高める(ブン回す)と、15,000cdを超えることがわかりました。これなら何とかなるかも!? と、2回目の検査ラインに並びました。
仮に、検査を諦めると、後日再検査になり、検査費用の収入印紙も買い直しになります。同じ日でも、不合格判定を3回受けると、再整備が必要とみなされ、それ以上検査は受けられなくなります。
いよいよ2回目の検査になります。検査ラインがある建物の外で待っていると、高まるエンジン音が聞こえた数分後に、検査を受けたバイク仲間が検査ラインから出てきました。

駆け寄って訊ねると、ヘッドライトは合格の「〇」表示になったそうです。最初から予備検査のテスター業者で確認してから検査ラインへ行けば、一発合格になったかも知れませんが、1回目に不合格になったことで、新たに知ることができた真実もありました。
帰宅後、旧車BMWに詳しいバイク仲間に連絡して、出来事の一部始終をお話しすると、標準バルブのままだと、エンジンを全開近くまで回転を高めれば、ギリギリ光量をパスできるケースもあるそうです(今回はまさにそれでした)。
ちなみに、専用のハロゲンバルブならエンジン回転を少し高めれば規定光量に十分達し、余裕で「〇」表示されるそうです。
Writer: たぐちかつみ
フリーランスライター。バイクも作る国内自動車メーカーの生産技術開発部門を経てから大人向けのバイク専門誌「クラブマン」誌へ合流。同誌のメンテナンスコーナーが縁で、1995年春には「モト・メンテナンス」誌を創刊し編集長を務めた。同誌休刊後の2019年秋からは、内外出版社にて「モトメカニック」誌を創刊。現在も同誌編集長を務めている。










