源平合戦の舞台を駆け抜ける!? 「倶利伽羅峠」ヒルクライムの魅力とは?
石川県と富山県の境に位置する「倶利伽羅峠」は、古来から北陸道の要衝であり、源平合戦で木曽義仲が勝利を収めた地です。急勾配の登坂の先に鎮座する倶利伽羅不動尊をはじめ、立ち寄りスポットも盛りだくさん。歴史とヒルクライムを満喫できる峠を紹介します。
歴史の要衝「倶利伽羅峠」
石川県と富山県の境に位置する「倶利伽羅峠(くりからとうげ)」は、北陸道の難所にして源平合戦の舞台となった地です。この急勾配を登りきれば、戦乱の記憶を伝える史跡や倶利伽羅不動尊に出会える、歴史とヒルクライムが交差する峠です。

律令制の時代には、京と北陸を結ぶ幹線道路「北陸道」の一部として整備され、数多くの人や物資がこの峠を越えて行き来したと伝えられています。現在は国道8号の倶利伽羅トンネルが峠の下を貫いています。
しかし、この峠の名を不朽のものにしたのは街道としての機能だけでなく、平安時代末期の源平合戦でした。
寿永2年(1183年)、木曽義仲(きそよしなか)率いる源氏軍と、平維盛(たいらのこれもり)を大将とする平家軍が倶利伽羅峠で激突しました。
数万の軍勢が入り乱れる中、義仲が編み出した奇策「火牛の計」が勝敗を分けます(夜の奇襲ではありましたが、「火牛の計」は後に付け加えられた作り話という説が有力です)。
角に松明を括り付けられた牛の群れが闇夜に突進し、混乱に陥った平家軍は壊滅。倶利伽羅峠は「源平合戦の大逆転の舞台」として、日本史にその名を刻みました。
そんな伝説の地を、ロードバイクで登ることができます。歴史の舞台をペダルで辿る。それだけでも胸が高鳴る体験です。
倶利伽羅峠ヒルクライム
倶利伽羅峠へのヒルクライムルートは複数あります。今回、私(筆者:才田直人)が挑戦したのは石川県側の「あいの風とやま鉄道」の「倶利伽羅駅」近くをスタートするコースです。
登坂区間はおよそ3km、平均勾配7.3%、標高差は220mと、数字だけを見ると「短くてちょうどいい坂」かと思うかもしれません。ですが実際に登ってみると、その印象は一変します。

序盤から斜度10%近い急勾配が続き、脚が容赦なく削られます。中間辺りに、下り区間を挟むので、登っている区間は平均勾配を遥かに上回るのです。体感的にはず~っと10%!! という厳しさです。
クルマは基本的にトンネルを通るので、交通量は多くはありません。静かな雰囲気の中でヒルクライムを楽しめます。ただし、前半で体力を使い過ぎると終盤に地獄を見るので、冷静にペースを刻むことが肝心です。
息を切らして峠に辿り着くと、そこにはたくさんの見所が待っています。
倶利伽羅峠のシンボルとも言えるのが「倶利伽羅不動尊」です。神奈川県の大山不動尊、千葉県の成田不動尊と共に、日本三不動のひとつとされ、古来より人々の篤い信仰を集めてきました。
境内には蕎麦屋があり、名物「倶利伽羅そば」をいただけます。この地で育つヤマゴボウを練り込んだ緑色のそばで、柔めの食感に甘めのつゆという、共に優しい味わいが特徴です。激坂を越えた後の身体に染み渡る一杯は、格別のご褒美です。
必ず立ち寄りたいオススメスポット
峠には、展望台や「火牛の計」の解説板もあり、倶利伽羅峠のサイクリングをさらに楽しむなら、周辺の立ち寄りスポットも押さえておきたいところです。

石川県側には道の駅「倶利迦羅源平の郷」があります。資料展示スペースでは、源平合戦の歴史や木曽義仲の活躍を学べるほか、宿泊施設やレストラン、温泉も併設されており、休憩や食事にぴったりです。
富山県側の「倶利伽羅源平の郷 埴生口」でも、木曽義仲をはじめとした源平合戦の展示を見学可能です。合戦の舞台を知ることで、峠を登る体験がさらに立体的に感じられます。
さらに必訪なのが、護国八幡宮(埴生護国八幡宮)です。義仲が必勝祈願をした神社として知られ、境内には堂々たる木曽義仲の像が立っています。その迫力ある姿を目にすれば、合戦の緊張感や歴史の重みをひしひしと感じることができます。
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歴史とヒルクライムが交差する倶利伽羅峠は、律令時代から続く交通の要衝であり、源平合戦の大逆転劇が繰り広げられた歴史の舞台です。そして現在は、サイクリストが脚でその歴史を辿れる場所となっています。
短いながらも濃密なヒルクライム、峠の頂で待つ不動尊と名物そば、そして道の駅や麓の神社に残る源平合戦の記憶など、ここでしか味わえない体験が待っています。
Writer: 才田直人
1985年生まれ。学生時代に通学用に購入したロードバイクをきっかけにトレーニングを開始。サイクルロードレースの全日本選手権参戦やフランスでの選手生活、国内での社会人兼選手生活を経て2023年に引退。日本だけでなく東南アジアなど自転車旅をこよなく愛し、現在はワーケーション自転車旅を続けている。専門的な知識と経験でTV出演やヒルクライムイベントのアテンド、講師なども務める。











