ホンダ新型「CB1000F」にとことん乗った!! 走りに歓びを感じる「キャブ車みたいなザラつき」の正体とはっ!?
ホンダは排気量999ccの直列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載する新型のロードスポーツモデル「CB1000F」を2025年11月14日に発売します。発売に先駆け、報道向け試乗会に2日間参加した青木タカオさんが、スーパースポーツモデル由来のエンジンがベースの車体にとことん乗って、その魅力を伝えてくれました。
日本の峠が気持ちイイ!!
走行シーンの撮影を終えると、バイクジャーナリストの青木タカオさんは「待ってました!」と言わんばかりに、ホンダの新型モデル「CB1000F」とともにあっという間に姿を消しました。試乗会場の発着場所に先回りして待っていると、官能的な直4サウンドを響かせながら勢いよく戻ってきます。ヘルメットを脱ぐと満面の笑みで、開発チームに駆け寄り、あれこれとしつこく聞いて回っていました。

撮影前日、雨の中での走行では扱いやすさを存分に感じましたが、2日目のドライコンディションではスポーティさが際立つではありませんか!
つづら折れの続く峠道では切り返しが軽いし、速度域の上がるコーナーでもタイヤから接地感が伝わって、寝かしたままの車体が落ち着いています。
軽快な車体と素直でクセのないハンドリング、しなやかに動きつつ踏ん張りの効く前後サスペンション。φ310mmフローティングディスクと、NISSIN製対向4ポッドラジアルマウントキャリパーの組み合わせとなったフロントブレーキは、タッチ、コントロール性、制動力に不満はありません。
クイックに動く身のこなしの軽さを持ちつつ、路面が少しくらい荒れていても挙動が乱れない安定感を兼ね備えているから、ワインディングを気持ちよく駆け抜けられます。
ピックアップの鋭いエンジンは直4らしく、中高回転から気持ちよく伸びていきます。胸のすく加速とともに、五感を刺激するサウンドも全身に伝わってくるから、総合力だけでなく、テイスティさもある。もぉ~、たまりません!!
さすがはSS譲りの強靭な心臓部
直列4気筒エンジンは、さすがスーパースポーツ「CBR1000RR」(SC77/2017年式)譲り。200PSにも迫ろうかという最高出力を発揮する獰猛なパワーユニットは、「CB1000F」のベースとなった「CB1000ホーネット」のために、低速でもトルクを発揮するよう出力特性が見直されていますが、「CB1000F」ではさらなるセッティング変更を受けています。

ボア×ストロークが76.0×55.1mmで、総排気量999ccのエンジンは、「CBR1000RR」(192PS)→「CB1000ホーネット」(152PS)→「CB1000F」(124PS)と「味変」されていく過程で、いったい何がおこなわれたのでしょうか?
乗っては聞いて、納得してはまた乗る、を繰り返した今回の試乗。それにとことん付き合ってくださったのが、「CB1000F」開発チームの皆さんです。プロジェクトリーダーの原本貴之さんには、いろいろと教えていただきました。
エンジン特性を決定づけるカムシャフトをそれぞれ専用設計にしているのは、想像に容易いところでしょう。バルブタイミングおよびリフト量が見直され、ダイキャスト製のピストンも「ホーネット」には別モノが用意されました。
それでも「ホーネット」は過激なストリートファイターです。エンジンが元気溌剌としてくるのは6000rpmを超えてからで、日本の一般道ではまだまだ手に余る強靭さがあります。それを乗りこなすのが魅力で、どちらかと言えば上級者向きです。
初代「ベンリイCB92」(1959年)以来、高性能であることを時代ごとに解釈し、具現化してきた歴史がある「CB」シリーズ。
「CB1300」シリーズの生産終了によって、1992年の「プロジェクトBIG-1」から始まる「CB」フラッグシップの系譜が途切れてしまった今、「CB-F」はよみがえりました。
それが意図したものか、もっと言えば「BIG-1」シリーズの後継なのかどうか? ホンダは明言していませんが、ラインナップを見れば新型「CB1000F」は、そのポジションを少なくとも当分の間は担うはずです。
「CB-F」を名乗る以上、幅広いユーザー層をターゲットにしなければなりません。派生機種ではない本流でなければならず、大排気量スポーツとしての堂々たるライドフィールやエモーショナルなサウンドなどを欠くワケにはいきません。
当然「ホーネット」のまま外装だけを丸ごと刷新し、電子制御で穏やかなトルク特性を持たせてしまおうなんて安直なことは、ホンダ開発陣が許すワケがありません。
ファンネル長はホーネットの90mmから140mmに延長。常用域である6000rpm以下でのスロットルレスポンスとトルク感向上のため、φ42mmの最小絞り径をφ36mmに見直しています。
絞り込むほどに流速が速まり、応答性が高まるので、低速でのピックアップの良さを感じたのも頷けます。
「味わい深い」って、その正体は?
走っていて感じるのは、高い運動性の中にも「味わい深さ」があること。言葉にするととても曖昧な表現ですが、その正体はいったいなんのでしょうか……!? PLの原本さんや開発責任者代行の村上弘明さんに疑問を投げかけます。

それは新設計した位相カムシャフトがもたらすところが大きく、左右2気筒ごとにバルブタイミングに変化をつけているからだと説明してくれました。
なんと、空冷4発の「CB1100」(2010年)に初採用された技術が活かされているとは、驚きを隠せません。
不等間隔燃焼にしたバルブタイミングで、キャブレター仕様がそうだったかのように、バラつきやズレがテイスティであると乗り手の感覚を刺激するのです。
バルブタイミングを左右2気筒ごとにズラすことに伴い、ファンネルの入口径もまた左右2気筒ごとにそれぞれφ50mm、φ40mmと個別に設定されています。右手のアクセル開度に呼応した鼓動感のある吸気音をもたらします。
低回転域ではドロドロと粘りのある排気サウンドとなり、引っ張り上げれば直4らしい官能的な響きをマフラーが奏でてくれます。
もちろん、ギアレシオも専用。「ホーネット」に対し、ローから3速までをローレシオ化して駆動力を高めました。
高速巡行時にはエンジン回転数を抑え、穏やかで落ち着いたフィールであることも報告しておきます。気負わず扱いやすいキャラクターがどのようにして生み出されているのか、乗りながら少しずつ確かめていきます。
リア寄りの着座位置が生み出すもの
SHOWA SFF-BP(セパレート・ファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン)と、専用リンクレシオを採用したプロリンク式リアショックの前後サスペンションは、しなやかでストローク感が得やすい、よく動くセッティングがされていることは乗るとすぐにわかります。

素直なハンドリングと軽快性、乗り心地の良さがバランスよく成り立っているのは、フロント荷重が強すぎない穏やかさを持ち合わせているからです。
キャスター角25度、トレール量98mmで、「ホーネット」からディメンションの変更はありませんが、Uターンがしやすく、ハンドル切れ角も余裕があると感じさせます。
アグレシッブに体重移動すれば、車体はとことん応えてくれますし、シートにドカンと座ってそのままリア荷重気味に乗ることも許してくれます。
着座位置は「ホーネット」より38.5mm後方に移し、駆動輪のトラクションを感じながら気持ちよくアクセルが開けられるのも、「CB-F」らしさと言えるのではないでしょうか。
リラックスしたライディングポジションは、大排気量ネイキッドの王道的と言えるもの。シート高は795mmに抑えられています。
かつての「CB-F」がそうだったように、燃料タンクは視覚的に長くデザインされていて、ニーグリップが自然に決まります。
車体重量は214kgに抑えられ、押し引きが軽いのも乗り手の体格を選ばないでしょう。
この価格でこの仕上がり!! 注文殺到も納得
説明を受けなくても、5インチフルカラーTFTメーターを見ながらハンドル左のスイッチで、ラインディングモードは直感的に切り替えできました。
今回、ドライコンディションのワインディングでは「SPORT」モードを積極的に使って、ビッグバイクらしいパワー感と鋭いレスポンスを楽しみました。
「STANDARD」はストップ&ゴーを繰り返す市街地でのトルクフルな特性を得ながら、走行シチュエーションを限定しない扱いやすさがあり、街乗りやツーリングで重宝します。
スマートキーを採用しながら、メーター下にイグニッションスイッチのつまみが設けられているのも、操作性の良さを感じました。
ハンドル右の電源スイッチがエンジンスタートボタンを兼ねている場合、思わず強く押して予期せずところで始動してしまうこともあるので、このレイアウトは秀逸です。
140万円を切る新車価格で、このトータルバランスの高さと誰が見ても惹かれるスタイリング。注文殺到も納得がいきます。気になる人は、待ったなしで販売店へ向かった方が良いでしょう。
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ホンダ新型「CB1000F」の価格(消費税10%込み)は139万7000円です。カラーバリエーションはウルフシルバーメタリック(ブルーストライプ)、ウルフシルバーメタリック(グレーストライプ)、グラファイトブラックの3タイプ設定です。

Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。






















