「新車よりいいかも!?」 1973年型ノートン「コマンド750インターステイツ」 徹底的な整備と改善で旧車ならではの魅力が際立つ
約10年の歳月をかけて徹底的な整備と改善を行った1973年型の英国旧車、ノートン「コマンド750インターステイツ」に試乗しました。新車以上の性能を実感したのです。
エントリーユーザーでも気軽に乗れる?
「旧車って、乗りづらくて難しそう……」世の中には、そんな印象を抱いている人が少なくないと思います。
確かに、旧車は近年のバイクほどイージーではないですし、これまでの自分(筆者:中村友彦)の試乗経験を振り返ると、とりあえず動いていても、本来の資質を維持している旧車の数は決して多くありません。そして世の中には乗りづらさや難しさを、旧車ならではの魅力と感じる人もいるようです。
ただし、古いイギリス車の修理を主業務とする「Flyer Motorcycle Workshop」の柴崎英一さんが、約10年の歳月をかけて徹底的な整備と改善を行った1973年型のノートン「コマンド750インターステイツ」を体験したら、誰もが旧車に対する認識を改めるような気がします。
誤解を恐れずに表現するなら、ロングツーリングでの快適性を前提にして柴崎さんが各部に手を入れた車体は、エントリーユーザーでも気軽に乗れそうな、抜群の扱いやすさを獲得していたのです。
同時代のライバル勢とは異なる資質
イギリスの古豪である「ノートン(Norton)」が、1966~1977年に販売した「コマンド(Commando)」シリーズは、前任に当たる「ドミネーター」シリーズ、そして1940~1960年代に栄華を極めた他のブリティッシュパラレルツイン勢(その先駆車はトライアンフが1937年に発売した「5Tスピードツイン」で、後にノートンに加えてBSAやアリエル、ロイヤルエンフィールドなども、それを多分に意識したモデルを発売)とは、異なる資質を備えています。

具体的な話をするなら、排気量500ccを基盤としながらシリーズ末期に排気量を829ccに拡大したこと(生い立ちが同様のライバル勢は750ccが上限だった)、シリンダーとリアショックが前傾していること、「アイソラスティックシステム」の導入で振動を大幅に抑制したことなどが、「コマンド」シリーズならではの特徴と言えるでしょう。
ちなみに、日本での人気は絶大とは言い難いのですが、欧米には根強い支持層が存在し、現在でもほとんどすべての補修部品を入手することが可能です(チューンアップパーツもなかなか豊富)。
そのあたりを考えると、「コマンド」シリーズは初めての英国旧車に最適の1台……と言っていいのかもしれません。
弱点を解消して、本来の魅力に磨きをかける
前述したように、柴崎さんの「コマンド」はエントリーユーザーでも気軽に乗れそうな扱いやすさを備えていました。
私がそう感じた背景には、各部の整備がきっちり行き届いているという事情もありますが、素晴らしく良好な始動性(温間時はキック1発で、冷間時も3回以内で始動)、ストールの不安が微塵もないアイドリングの安定感、現行車を思わせるスロットルとクラッチの軽さなどは、この車両の特筆するべき要素だと思います。

また、ある程度以上のスピードで走ったときの車体のしっかり感にも私は目を見張りました。
と言うのも、「アイソラスティックシステム」を導入した「コマンド」シリーズは、巨大なラバーを使用する前後エンジンマウントとスイングアームピボットにガタが存在すると、車体に露骨なフレが発生しやすいのですが、柴崎さんの愛車はかなりの負荷をかけても車体がビシッと安定しているので、高速走行やコーナリングが存分に楽しめたのです。
もっともここまでに述べた美点は、近年のネオクラシックモデルではごく普通のことですから、旧車好き以外はあまりピンと来ない話かもしれません。
とはいえ、旧車にありがちなマイナス要素を解消した柴崎さんの「コマンド」は、旧車ならではの魅力が際立っていたのです。

中でも私が嬉しかったのは伝統のパラレルツインの抑揚、低回転域のドコドコ感と中高回転域の伸びの良さが、堪能しやすくなっていることです。
ちょっと妙な表現になりますが、このバイクを試乗中の私は30cm定規をイメージし、近年のネオクラシックモデルのメリハリを10~20cmとするなら、「コマンド」のエンジンの変化には0~30cmの幅がある……という印象を抱きました。
それに加えて、「コマンド」シリーズならではの軽快でスポーティなハンドリングにも私は大いに感心しました。
またまた妙な表現になりますが、操縦性よりも安定性重視の傾向が伺える近年のネオクラシックモデルとは異なり、「コマンド」のコーナリングには「キレ味」が感じられて、峠道でその資質を実感した私は、ハンドリングに対するノートンのこだわりを改めて認識したのです。

現代ならではのパーツと異例の手法
試乗を終えて、どうしてこういう乗り味が実現できたのかを柴崎さんに聞いてみると、「ツーリングでの快適性を追及した結果ではありますけど、ペイゾンのフルトラキットやASウオタニのSP2パワーコイル、内圧コントロールバルブのT-REVなどを導入したことや、コマンドシリーズの世界では珍しい手法、キャブレターをツインからシングルに変更したことが、かなり利いていると思います」という答えが返ってきました。
その言葉を聞いた私は、現代ならではのパーツと異例の手法を取り入れたこのバイクの扱いやすさは、新車以上なのかもしれない? ……という印象を抱きました。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。
















