快適な「旧車ライフ」を実現!? まずは灯火類のLED化と点火系のフルトランジスタ化を
数十年も前に生産が終了したバイクを維持し、旧車ならではの魅力(苦労?)を楽しむ「旧車ライフ」を送るライダーは少なくありません。旧車に最新のパーツを導入し、快適化する方法を古いイギリス車の修理専門店『Flyer Motorcycle Workshop』に聞きました。
電装系パーツの「モダナイズ」
旧車との付き合い方は人それぞれで、現役時代のスタイルや構成にこだわるオリジナル派がいれば、最新のパーツを随所に導入するカスタム派も存在します。
そしてそういう視点で見るなら、当記事の取材に協力してくれた古いイギリス車の修理専門店『Flyer Motorcycle Workshop』のスタンスは、基本的に前者寄りのようですが……。
電装系に限っては、同店は現代ならではのパーツを使用する「モダナイズ(modernize:現代化)」に積極的な姿勢を示しています。その理由を知るべく、主宰の柴崎英一さんにさまざまな話を聞いてみました。

灯火類のLED化で、消費電力を抑制
まずは単刀直入な質問から。旧車に現代の電装系部品を導入する背景には、どんな事情があるのでしょうか。
「旧車特有の煩わしさを解消して、旧車ならではの魅力を日常的に楽しめるようにするためです。そもそも古いイギリス車は、ノーマルの電装系の信頼性がいまひとつな車両が多く、トラブルが起こって当たり前と感じている人が多いようですが、要所に現代のパーツを投入すれば、トラブルの可能性は劇的に減らせるんですよ」

そう語る柴崎さんが、お客さんの多くに推奨している現代ならではの電装系パーツが、LEDの灯火類です。
「旧車の灯火類をLED化する最大の美点は、消費電力が大幅に抑えられることです。昔ながらの白熱球やハロゲンと比較すると、LEDバルブの消費電力は半分前後ですから、もともとの発電量が少ないイギリスの旧車にとって、それは大きなメリットになります。もちろん最近のバイクでも、ノーマルの灯火類が白熱球・ハロゲンの車両で給電・電熱系のデバイスを使用する場合は、消費電力の抑制は歓迎するべき要素でしょう」
もっとも灯火類のLED化には、ヘッドライトの光量不足や照射範囲のズレ、ウインカーの高速点滅やハザード化など、問題が発生するケースもあるようです。
「ヘッドライトに関しては、確かにハズレと言うべき製品も存在しますが、ウチで使っている竹村商会(トラック業界で大人気のブランド)のような、信頼できるメーカー製を選べば、問題ないと思いますよ。ただし、レクチファイアが半波整流の小排気量車では、何らかの対策が必要になることが多いです。ウインカーの高速点滅やハザード化は、白熱球より微弱の電力で作動するLEDならではの問題で、ウインカーリレーをLED対応品に変更するか、ウインカーへの配線に逆流防止用のダイオードを入れるか、いずれかの手法で解決できます」

消費電力を抑制できること以外に、灯火類をLEDに変更するメリットはあるのでしょうか。
「安全性を考えれば、明るさが増すことも大きなメリットです。ちなみに、ウチに入庫する古いイギリス車で車検に臨むときは、ヘッドライト検査での光量不足を補うため、かつてはエンジン回転数をかなり上げるのが通例でしたが、LEDバルブを導入してからは、そんなに無理をぜすとも基準をクリアできるようになりました。なお旧車好きの中には、LEDの光に嫌悪感を示す人がいますが、白熱球・ハロゲン風の光を出すLEDを選択すれば、光源の判別はほとんどつかなくなります」
他国の旧車や現代のイギリス車とは異なり、古いイギリス車はプラスアースを採用しています。灯火類のLED化で、それが問題になることはないのでしょうか。
「ヘッドライトとウインカーは問題ありません。ただしテール/ストップランプは、どちらかが作動しないことが多いので、ウチではイギリスのClassic Car LED’sが販売するプラスアース用の製品を使っています」
フルトランジスタ式のメリット
続いては点火系の話です。イギリス車に限らず、1970年代以前の旧車の多くは、機械的な接点が存在し、点火時期の進角・遅角を回転するシャフトの遠心力とスプリングの張力に依存する、ポイント式(=コンタクトブレーカー式)が定番でした。Flyer Motorcycle Workshopではそのシステムを進化させる形で、機械式な接点が存在せず、点火時期の進角・遅角をイグナイターが行う、フルトランジスタ式への変更を推奨しています。
「昔ながらのポイント式を現代的なフルトラ式に変更する利点は、接点の清掃・研磨、ギャップ調整といった定期的な整備が不要になることと、進角カーブが緻密になることです。もっとも、定期的な整備は旧車の醍醐味という見方をする人もいるので、マストと言うつもりはありません。ただし、当社に入庫する古いイギリス車のポイントを点検すると、万全の状態ではないことが非常に多いです。接点の荒れやギャップの縮小・拡大はジワジワ進むものですから、ずっと乗り続けているオーナーさんは、意外に把握しづらいのかもしれませんね」

「進角カーブに関しては、当店の定番になっているニュージーランドのペイゾン製フルトラキットを導入すると、始動性、アイドリングや低回転域の安定性、高回転域の伸びなど、すべての領域で性能が向上します。逆にその性能を実感すると、遠心力と張力に依存する昔ながらの進角では、理想の点火タイミングを実現して、エンジンの潜在能力を引き出すのは難しいように感じます」
点火系のモダナイズではもうひとつ、同店では性能が劣化したイグニッションコイルを交換する際に、ノーマルのリプロ品ではなく、ASウオタニが販売するSP2パワーコイルを採用することが多いようです。
「SP2パワーコイルの特徴は、目視で確認できるほど、スパークプラグから出る火花が強くなることです。古いイギリス車の場合は、抵抗を調整するパワーアンプの使用が必須ですが、火花の強さは良好な燃焼に確実につながります。いずれにしても、ペイゾンのフルトラキットとASウオタニのSP2パワーコイルを同時に投入すれば、エンジンフィーリングは劇的に変わりますよ」
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。













