快適な「旧車ライフ」を実現!? 現代のパーツを上手に導入すれば充電システムの信頼性が飛躍的に向上!!

数十年も前に生産が終了したバイクを維持し、旧車ならではの魅力(苦労?)を楽しむ「旧車ライフ」を送るライダーは少なくありません。旧車に最新のパーツを導入し、快適化する方法を古いイギリス車の修理専門店『Flyer Motorcycle Workshop』に聞きました。

大昔から変わらない、充電系の基本

 近年の2輪の世界では、電子デバイスが目覚ましい勢いで進化を遂げています。ただし、エンジン内のシャフトが回転することで発電機が電気を生み出し、レギュレターが電圧を制御し、レクチファイアが交流から直流への変換を行い、バッテリーが電力を蓄える、充電系システムの基本は、大昔からほとんど変わっていません。

 逆に言うなら、旧車に現代の充電系部品を転用して基礎体力を高めることは可能で、そういった事実に注目した古いイギリス車の修理専門店『Flyer Motorcycle Workshop』では、さまざまな形で「モダナイズ(modernize:現代化)」を行っています。

 以下では同店の柴崎英一さんに聞いた、充電系に現代のパーツを投入する理由や勘所を紹介します。

トライアンフ「T140」のプラマリーチェーンカバーを外したところ。クランクシャフトの左端に備わるのが、発電を担当するステーターコイルとローター
トライアンフ「T140」のプラマリーチェーンカバーを外したところ。クランクシャフトの左端に備わるのが、発電を担当するステーターコイルとローター

レギュレター/レクチファイアの役割

 そもそも柴崎さんが旧車の充電系をモダナイズしようと思った背景には、どんな理由があったのでしょう。

「古いイギリス車の場合は、ノーマルやノーマルを再現したリプロパーツの信頼性がいまひとつなことが多いので、現代の技術で改善したい……という事情もありますが、直接的なきっかけはバッテリーの価格相場が変わったことかもしれません。ひと昔前は、昔ながらの開放式バッテリーは安く、1990年頃から普及が始まった密閉式のMFバッテリーは高かったのですが、ここ十年くらいですっかり立場が逆転しました。となれば、MF式が使えるシステムを構築するべきだと思ったんです」

「一部に6Vの機種も存在しましたが、1960年代以降のバイクの電圧は12Vが基本で、開放式バッテリーを採用する車両の場合は、充電時の電圧が15V前後に達することがあります。そのシステムのままでMF式を投入すると、過充電によって亀裂や膨張、場合によっては爆発する可能性があるので、バッテリー形式を開放式からMF式に変更する際は、電圧を14.4V前後に抑えるICレギュレターの同時投入が必須になります」

1968~1977年に生産された、ノートンコマンドのレクチファイヤはセレン式(左)。シンプルなレギュレター(右)は、アルミ製ステッププレートを放熱素材として使用するのが前提
1968~1977年に生産された、ノートンコマンドのレクチファイヤはセレン式(左)。シンプルなレギュレター(右)は、アルミ製ステッププレートを放熱素材として使用するのが前提

 ちなみにレギュレターとレクチファイアは、1970年代中盤頃までは別部品だったのですが、以後は2つの機能を一体化したレギュレター/レクチファイアが一般的になりました。

 また、別部品だった時代のレクチファイアはほとんどセレン式がでしたが、一体化が図られてからはサイリスタ式が主流になり、近年は一部の高性能車が効率に優れるモスフェット式を採用しています。

「古いイギリス車のレギュレターとレクチファイヤは別部品で、現代の視点で見ると、電圧の制御も整流も万全とは言えません。だから現代の製品に変更すれば、それだけで電力の安定化が図れます。なおレギュレター/レクチファイアは他機種からの流用が比較的容易な部品で、私は自分のノートンコマンド750に、YZF-R1用のモスフェット式を転用して好感触を得ています。ただし費用対効果を考えると、古いイギリス車の場合はルーカスが販売している汎用品、ICレギュレター/サイリスタ式レクチファイアで十分だと思います」

発電機のモダナイズ

 2輪の発電機の主要構成部品は、磁力を帯びたローターと、銅線を束ねて固めたステーターコイルの2点です。それらのパーツに関して、旧車好きの間でよく話題になるのは新品への交換や銅線の巻き直しなどですが、古いイギリス車の場合は、直流式を交流式に変更したり、発電量を上げたりするケースが珍しくありません。

「LUCAS(ルーカス)」のACジェネレーターは、現代でも新品を入手することが可能。下段のステーターコイルの発電量は、左が単相10A・120Wで、右は3相14.5A・240W
「LUCAS(ルーカス)」のACジェネレーターは、現代でも新品を入手することが可能。下段のステーターコイルの発電量は、左が単相10A・120Wで、右は3相14.5A・240W

「直流式を交流式に変更する利点は、回転抵抗の低減と発電量の増加です。逆に言うなら昔ながらの直流ダイナモは、回転抵抗が大きく、低回転域の発電量が少ないんですよ。また、ノーマルが交流式オルタネーターだった古いイギリス車の場合は、当時も今も電装系を担当していたルーカスがいろいろなモデルに対応するステーターコイルを同じ寸法で作っているので、標準の120Wから最大の240Wまで、さまざまな発電量を選択できます。ただし発電量を上げる場合は、レギュレター/レクチファイアを対応品に変更する必要があるので、どこまでコストをかけるかはオーナーさん次第でしょうね」

内圧コントロールバルブの恩恵

 電装系とは異なる話になりますが、Flyer Motorcycle Workshopではモダナイズの一環として、クランクケースから出ているブリーザーパイプに、現代の内圧コントロールバルブを装着することが少なくないそうです。

「2000年頃からいろいろなメーカーが販売している内圧コントロールバルブは、もともとはエンジンの回転抵抗を低減するパーツです。とはいえ、ミッション室が別体式で、クランクケース内の容積が非常に小さいイギリス車の場合は、オイル滲み・漏れの抑制、ブリーザーから吐き出されるオイル量の減少にも効果を発揮します」

ノートンコマンド850のブリーザーパイプに装着した、内圧コントロールバルブのレデューサー。内部には2枚のリードバルブが備わる
ノートンコマンド850のブリーザーパイプに装着した、内圧コントロールバルブのレデューサー。内部には2枚のリードバルブが備わる

「もちろん、オイル滲み・漏れの根本的な治療には分解整備が必要ですし、ブリーザーからのオイルの排出は取り出し位置やホースの取り回しによって変わってくるのですが、クランクケース内の圧力変動を抑える内圧コントロールバルブは、古いイギリス車にとってはマイナス要素を適度に緩和してくれるパーツでもあるんです」

【画像】電気を元気に!? 旧車を現代版にアップデートするパーツを画像で見る(15枚)

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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