じつは50年のロングセラー!! 唯一無二のエンジンで登場したホンダ「ゴールドウイング」はスポーツモデルだった!? ド迫力の派生モデルも!!
日本を代表する「超」大型ツアラーと言えるホンダ「ゴールドウイング」は、2025年で50周年を迎えたロングセラーモデルです。じつは誕生時はツアラーではなく、個性的な派生モデルも多数存在しました。
日本を代表する大型ツアラー
バイクで大きなフェアリングや大容量のトランクを装備する大型ツーリングモデルと聞くと、米国のハーレーダビッドソンをイメージするかもしれませんが、日本の「ゴールドウイング」も負けてはいません。
量産市販バイクでは唯一無二の水平対向6気筒エンジンや豪華な装備によって、何百キロでも快適に走り続けられるパフォーマンスは、国内外で広く認められています。
1975年に生まれた初代モデルは、じつは豪華な大型ツアラーではなく、大排気量ロードスポーツとして開発されました。その歴史を振り返ってみましょう。

「CBナナハン」を超える存在が快適ツアラーへ
ホンダは1969年に、市販量産バイク初の並列4気筒エンジンを搭載し、最高速度200km/hを発揮する「ドリームCB750FOUR」を発売し、最大のバイク市場であるアメリカを始め全世界で大ヒットします。
しかしライバルメーカーも黙っていません。続々と大排気量ロードスポーツ車が発売され、ホンダは既成概念を超えた新型ロードスポーツの開発に着手します。

エンジンは排気量999ccでバイクでは例を見ない水冷4ストローク水平対向4気筒というレイアウト。重心を下げるために燃料タンクをシートの下に配置し、通常のタンク位置には電装部品などを収納し、初代「GL1000(ゴールドウイング)」が1974年の全米ディーラーミーティングで発表されました。
アップハンドルの威風堂々としたスタイルですが、「GL1000」はアメリカンスタイルでもツアラーでもなく、当時の正統派ロードスポーツであり、いまで言うネイキッドスタイルでした。
しかし北米のライダーたちは、その高速巡行性能や快適性の高さに注目し、独自にフェアリングやケース類を装備して大陸横断やタンデムなどを楽しむ長距離ツーリングバイクとして捉えました。
ホンダはそんな北米での機運やカルチャーを見逃さず、1980年に2代目となる「GL1100」を発売します。排気量を拡大するだけでなく、プルバックハンドルや鞍型の段付きシート(ホイールベースを伸ばすことでタンデムシートを広げてパッセンジャーの快適性を向上)を装備して、スタイル的にもロードスポーツからクルーザーに変わっていました。
そして同年には大型フェアリングやサドルバッグとトップケースを備えた「GL1100インターステート」を追加します。
さらに1982年には液晶メーターやAM/FMステレオラジオなどを装備する「GL1100アスペンケード」もラインナップし、ラグジュアリーツアラーとしての地位を確立しました。
その後も排気量の拡大や、水平対向エンジンを6気筒に変更したり、2輪初のエアバッグやビルトイン式のナビゲーションを装備するなど進化と熟成を重ねます。
ちなみに初代はホンダの狭山工場で生産して輸出していましたが(国内は排気量上限の自主規制により未販売)、2代目からはアメリカのオハイオ州のホンダ・オブ・アメリカ・マニュファクチュアリングへ生産拠点を移します。
そして1988年の4代目「GL1500」からは輸入車として国内販売が始まりました。
その後は2009年にアメリカでの生産を終了し、2011年から日本の熊本工場で生産しています。
2018年には17年ぶりのフルチェンジがあり、画期的なオートマチックの「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」や、ダブルウィッシュボーンフロントサスペンションなどを備えて現在に至ります。
個性派揃いの派生モデル
ロードスポーツとして登場しながら、ラグジュアリーツアラーとして進化・熟成してきた「ゴールドウイング」ですが、長い歴史の中では個性的な派生モデルも登場しています。

1996年発売の「ワルキューレ」では、同時期の「GL1500」の水平対向6気筒エンジンをベースに、フレーム類は新造されました。
プルバックハンドルやティアドロップ型の燃料タンク、段付きシートなど、当時のホンダの「スティード」や「シャドウ」といったアメリカンモデルのフラッグシップたるスタイルが与えられました。
ある意味、2代目「GL1100」(1980年)の正常進化版とも言えるのではないでしょうか。
それからしばらく間をおいて、2013年に「GL1800」ベースでバガースタイルの「F6B」が、翌2014年には“ストリート・マッスル・クルーザー”がコンセプトの「F6C」が発売されます。
従来の「ゴールドウイング」や「ワルキューレ」とも異なるスタイルが特徴的で、全モデルが国内販売されました。
激レア&コンセプトモデル
水平対向6気筒エンジンを搭載する、極めつけのモデルと言えるのが、2004年に登場した「ワルキューレ・ルーン」ではないでしょうか。
アメリカホンダの強い要望によって製作され、1940~50年代のアメリカ車を彷彿させるレトロな形状やクロームメッキを多用し、フロントのメカニカルなボトムリンク式サスペンションが目を惹きます。
米国や欧州など海外販売モデルで国内販売はされませんでしたが、少数輸入されて現在も中古車サイトを見ると掲載されています。
そして2007年の「第40回東京モーターショー」では、コンセプトモデル「EVO6」が出展されました。

“新感覚オートマチック・スポーツ・クルーザー・コンセプト”と銘打ち、排気量1832ccの水平対向6気筒エンジンにオートマチックトランスミッション(当時のリリースには「2タイプのフルオートマチックモードに加え、手元のボタン操作で変速が行える6速のマニュアルシフトモードを採用」の記載アリ)を装備しています。
DCTの表記はありませんでしたが、2018年に17年ぶりにフルチェンジで登場した「Gold Wing Tour」のDCT仕様車を示唆していたのかもしれません。しかし「EVO6」はコンセプトモデルのため、実際にこの形で発売されることはありませんでした。
「ゴールドウイング」は豪華な大型ツアラーとして普遍的な魅力があります。また派生モデルも他に類を見ないモデルばかりで、やはり大きな魅力があります。
とくにコンセプトモデルでは新たな時代の大排気量ロードスポーツを強く感じさせてくれるもので、いまからでも遅くないので、是非発売して欲しいものです。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。



















